片隅の人たち の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
常盤新平については、池波正太郎のファンだということくらいしか知らない。 この本も、翻訳者のエッセイだと思って読んだのだが、小説だったらしい。 都筑道夫、生島治郎、植草甚一など馴染みの名前も出てくるし、ハメット、チャンドラーなどのハードボイルド作家の名前も出て来る。 そして、主人公と劇団女優との恋愛、結婚と、様々な個性の翻訳者達の姿が描かれ、当時の世相も窺えるのだ。 僕よりも一世代前の、青春の小説とも読める。 フィクションのために、登場する翻訳者が仮名であるのだが、実際の翻訳者を想像しながら読むのも一つの楽しみである。 時間があったら、ランダムに読み返したい。
Posted by
「片隅の人々」常盤新平。 ●1950年代、東京。アメリカ語の翻訳家、それもミステリー、ハードボイルドの翻訳家を志す、狭い狭い、出版業界の「片隅の人々」の人間模様。連作短編。 ●貫く主人公は「私」で、高度成長とともに少しづつステップアップ。 ●文章がうまい。すごくうまい。地味...
「片隅の人々」常盤新平。 ●1950年代、東京。アメリカ語の翻訳家、それもミステリー、ハードボイルドの翻訳家を志す、狭い狭い、出版業界の「片隅の人々」の人間模様。連作短編。 ●貫く主人公は「私」で、高度成長とともに少しづつステップアップ。 ●文章がうまい。すごくうまい。地味にうまい。 ●描写の向こうに気負わない自分史。それが小津安二郎風味の青春物語に、昭和30年代〜の戦後史にもなっています。 ●不安、恍惚、コンプレックス、恋人との暮らし、生活と夢。。。 これはある年齢以上の男性読者のためのものなんだろうなあ。その割り切りが素晴らしい。
Posted by
直木賞受賞作『遠いアメリカ』に連なる自伝的連作集。出版界の片隅に生きる翻訳者たちを青年編集者の視点から描く。エッセイ二篇を増補。〈解説〉青山 南
Posted by
アーウィン・ショーを訳していた人といった程度しか知らなかった常盤新平さんであるが、本書に登場してくる翻訳者の面々に関心があったことから手に取ってみた。 本書は小説であるから、実話そのままではないだろうが、登場する翻訳家も実名は出ていないが1960年前後の早川書房周辺の人たち...
アーウィン・ショーを訳していた人といった程度しか知らなかった常盤新平さんであるが、本書に登場してくる翻訳者の面々に関心があったことから手に取ってみた。 本書は小説であるから、実話そのままではないだろうが、登場する翻訳家も実名は出ていないが1960年前後の早川書房周辺の人たちだし、翻訳した作品の大体の記述もあるので、多分あの人がモデルかなあと推測するのは、とても楽しい。 翻訳家を目指してはいるが、まだまだ先の見えない若者だった作者の前に登場する師匠や先輩、同輩の人たちはほぼ変な人たちであるが、ほのぼのするものから不思議なもの、しんみりするものと、様々なエピソードが描かれる。 また、本当に翻訳家として一本立ちして、愛する家族と生活していけるか、揺れ動く真情には共感させられる。 アメリカ文化、文学が眩しかった時代。アメリカの小説に出てくるハンバーガーがいかなるものか話し合うエピソード、著者と恋人との借家に関する記述、翻訳料に関するやり取りなど読むと、当時がまだまだ貧しい時代だったこと、でも何とかなるさという希望が持てた時代でもあったことが伝わってくる。
Posted by
- 1