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100分de名著 資本論 カール・マルクス(2021年1月) の商品レビュー

4.3

59件のお客様レビュー

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2021/07/11

資本論の発刊から150年。ソビエト連邦の解体や中国の市場経済への軌道修正を経て、マルクスの思想は今では風化してしまったのだろうか? 誰もが漫然とそう思っているようなところへ、「いや、マルクスの思想は現代でも生きている。それどころか、資本主義が加速度を増して数々の矛盾を生じさせて...

資本論の発刊から150年。ソビエト連邦の解体や中国の市場経済への軌道修正を経て、マルクスの思想は今では風化してしまったのだろうか? 誰もが漫然とそう思っているようなところへ、「いや、マルクスの思想は現代でも生きている。それどころか、資本主義が加速度を増して数々の矛盾を生じさせている現代だからこそ示唆に富む」と、斎藤さんは力説しているようだ。 つまり、マルクスの思想を教条主義的に狭く考えるのではなく、マルクスの残した断簡零墨を寄せ集めることで実は未解読な“泳ぎしろ”が多くあることを認識して、そして、マルクスを現代社会の諸事象にぐっと引き寄せ、両者のピントが合うタイミングを見つけ出そうというスタンスである。 だが、そもそも私の大学生時代(80年代)ですら「マルクス経済学はもう古い」と揶揄され、多くの学生が近経(近代経済学)の講座申込みに集中する一方で、抽選に漏れた学生が不本意ながら選択するのがマル経だった。 ところが斎藤さんは忌避するどころか、資本論でマルクスが最も力を注いだ「商品」という概念が人間の経済活動へもたらす影響を、私たちが誰でも知る最近の事例で解説している。 -例えば、タピオカ店が街中にあふれたかと思うと急速に消えていった現象。 -例えば、マスクが店頭から消えて買占めが起こったかと思うと供給過剰で投げ売り状態になった現象。 つまり斎藤さんは、なおざりにされていたマルクス思想がちょうど一周して、社会を読み解くテキストとして元の位置に戻っているのを正しく掌握し、それを広くアピールすべく旗を振っているのである。 実は私がマルクスに興味をもった瞬間は過去にもあった。ナニワ金融道を連載していた青木雄二さんが「一生に一度は資本論を読め」と強く勧めていたときである。 青木さんの作品からは、商品の交換価値を表示するために人間が発明した便利なツールであるはずの「カネ」が、現実では人の欲望や思惑によって形質を変化させ、人間を惑わすさまを見せつけられる。青木さんが示す「カネ」の変質は、そのまま人の手の統御を離れ勝手な振る舞いをする「資本主義」と同質だ。その独特のリアリズムがマルクスに立脚していたと知り、私の中で急にマルクスが現代性を帯びてきたのを覚えている。 しかし実際に私が資本論を精読しようとするところまで背中を押してくれる本はなかった。 このたび、満を持して斎藤さんが登場したという感じだ。ちょうど将棋ファンにとって藤井聡太が登場したようなインパクトだろうか。 それにしても、勢いがある人とは、まさに斎藤さんのことを言うのだろうか。 「人新世の資本論」が前段にあるとはいえ、さらにこれだけ濃い内容のテキストをまとめられるのだから。

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2021/07/04

同じ著者による「人新世」と比べるとはるかに読みやすく、少し「資本論」が身近になってきたし、「資本論」にチャレンジしてみようという気を起こさせてくれる。 「資本論」はマルクスの生涯をかけて更新され続けている書物とすると、最終結論(未完部分)には実は既刊の「資本論」を上書きするべき...

同じ著者による「人新世」と比べるとはるかに読みやすく、少し「資本論」が身近になってきたし、「資本論」にチャレンジしてみようという気を起こさせてくれる。 「資本論」はマルクスの生涯をかけて更新され続けている書物とすると、最終結論(未完部分)には実は既刊の「資本論」を上書きするべき内容、つまり、コモンの回復と全面的な発展が求められていると書かれている。 残念なことに、「資本論」からの引用箇所になった途端、文章理解度が大幅に低下してしまう……ドイツ語でも、読みにくい本なのかしら???それとも私の読解力が無いため? 今後「資本論」の新訳って出てくるのでしょうかね〜…

Posted byブクログ

2021/06/03

『人新世の「資本論」』 (集英社新書)を読む前に、こちらを手にとってみた。  今話題の本は慎重に選んできたけれど、斎藤幸平さんの若さで、“マルクス”を語る姿が新鮮だったので読んでみた。    こちらを選んで正解だった。『人新世の「資本論」』 は25万部以上売れているということで...

『人新世の「資本論」』 (集英社新書)を読む前に、こちらを手にとってみた。  今話題の本は慎重に選んできたけれど、斎藤幸平さんの若さで、“マルクス”を語る姿が新鮮だったので読んでみた。    こちらを選んで正解だった。『人新世の「資本論」』 は25万部以上売れているということで、知り合いの中にも釣られて購入したはいいが、難しくて投げ出した人もいる。  マルクスのイメージが変わった。とは言っても、マルクスの本など読んだことがないんだけどね。 それでも、社会主義や共産主義の元になった暗く、小難しいイメージがあったから、近づくのも憚られていた。 ~〜 人間の労働は、構想と実行、精神的労働と肉体的労働が統一されたものでした。 〜 「構想」は特定の資本家や、資本家に雇われた現場監督が独占し、労働者は「実行」のみを担うようになる。 〜〜 これが、“働きがい”など感じることができなくなった原因だったのか。 それにしても、こんなことを確信的に計画していた張本人がいると思いきや、これは資本主義の構造的に孕んでいる欠陥だったなんて。救われない道を人類を突き進んでいる様に思えてくる。  それでも、対価を求めない「贈与」、つまり、分かち合いや助け合いの相互扶助によって、富の持つ豊かさをシェアしていこうとする“アソシエイツ”の考え方が今ジワジワと、浸透し始めているということに明るい兆しを感じざるおえない。

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2021/05/12

資本主義とそれ以外の違いは、商品(価値)と富(使用価値)にある。 資本主義以前は富に焦点が当てられ、自分にとって使用価値があるものを必要なだけ生産していた。資本主義では商品に焦点が当てられ、資本という価値を獲得するために商品をできる限り多く生産するようになった。 つまり、資本主義...

資本主義とそれ以外の違いは、商品(価値)と富(使用価値)にある。 資本主義以前は富に焦点が当てられ、自分にとって使用価値があるものを必要なだけ生産していた。資本主義では商品に焦点が当てられ、資本という価値を獲得するために商品をできる限り多く生産するようになった。 つまり、資本主義以前は使用価値という上限のあるものを目標とした生産活動であったが、資本主義では価値(金銭等)という上限のないものを目標とするため、際限なく広がっていく。 だから資本家も際限なく生産活動を行い、結果として富の集積、格差の拡大も際限なく続いてしまう。 資本主義社会では構想と実行が分離されている。 労働者は構想から切り離され、単純労働を実行するだけになるため、ますます自律性を失い立場が弱くなっていく。 筆者の意見によると、労働者にもっと構想の機会を与えることが必要らしい。 マルクスの思い描いた将来社会はコミュニズムである。社会の富(川の水)が商品(ペットボトルの水)として現れないように、みんなでシェアして、自治管理していく、平等で持続可能な定常型経済社会である。 →「各人はその能力に応じて与え、各人はその必要に応じて受け取る」

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2021/04/24

自由の拡大、物質的な豊かさ、イノベーションなど多くの価値をもたらした一方で、自然との共存、富裕層と貧困層の格差、ブルシットジョブ化など、限界も見えつつある資本主義。150年以上前に、その資本主義のメカニズムを解析し、矛盾や限界を明らかにしたマルクスの資本論。今だから、こそ読むべき...

自由の拡大、物質的な豊かさ、イノベーションなど多くの価値をもたらした一方で、自然との共存、富裕層と貧困層の格差、ブルシットジョブ化など、限界も見えつつある資本主義。150年以上前に、その資本主義のメカニズムを解析し、矛盾や限界を明らかにしたマルクスの資本論。今だから、こそ読むべき古典をビギナー向けに具体例も交えながら、解説した入門書。非常に分かりやすく、とても良い入門書だと思います。 1章では物質代謝論を中心に人間と自然の関係の中の労働について考え、2章では剰余価値論をもとに資本主義の中で長時間労働が無くならない理由を考察し、3章ではイノベーションが労働者を貧しくし、ブルシットジョブが増えるメカニズムを考察し、4章はポスト資本主義の在り方について提案されています。 私も人間から見た場合、ソ連の崩壊、中国の資本主義経済の導入など共産主義は失敗に終わった古いシステムであるが、余剰を作らず、必要なものを平等に分配するエコなシステムなので、環境的には良い面もあると思っていました。これからの時代に適した社会ルールやシステムを考えるための新たな視点として、本書は大いに役に立つものだと思います。 以下、ためになった考えを記載します。 物質代謝論→自然に働きかけ、食べ物や洋服などを得て、自己の欲求を満たす。この自然への働きかけが労働である。人間だけが正確な目的を持った意識的な労働を行う。 富と商品と資本主義→森や水源や空気などの自然や公園や図書館などの公共施設を富と呼ぶ。これらの富を囲い込み商品化し、儲けを載せて販売し、資本の増加を追求する。これが資本主義。 使用価値と価値→商品には使用価値と価値がある。使用価値は有用性で決まり、価値は労働によって決まる。例えば空気は使用価値は高いが、価値は低い。一方ダイヤモンドは使用価値は低いが、価値は高い。資本主義以降は、使用価値が高く人が必要なものを人が作るのではなく、売れそうなものを人が作ることになった(物象化)。 雇用者と労働者の契約→労働者は事前に労働力を対価を事前に雇用者と合意する。そのあと実際の労働は雇用者に裁量がある。裁量労働制の場合、対価が変わらないので、雇用者は責任感を煽り長時間働いてもらい、多くのアウトプットを得ることが最善となる。労働者は、1.自由に就職できること(辛くとも自ら選んだ道)、2.生産手段から切り離されてることから、逃げ出すことも難しい。就職までは自由であるが、後は奴隷と変わらない。自ら選んだ働いてる自負から、奴隷よりも厳しく自分を責め、理不尽も受け入れ、追い詰める。雇用者に有利な仕組み。 労働プロセスの分離→フレデリックテイラーに代表される近代の科学的管理手法のもとでは、構想と実行が分離され、10年働いた後も一人では何の商品も作れない労働者となる。 ポスト資本主義→資本は人間だけでなく、自然からも豊かさを一方的に吸い付くし、その結果人間と自然の物質代謝に取り返しのつかない亀裂を生み出す。資本主義は価値の増殖を無限に求めるが、地球は有限である。生産手段と地球をコモンとして取り戻し、贈与と分配、相互扶助をベースとした脱成長型経済を目指していくべき。

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2021/04/20

行き過ぎた資本主義に対する問題意識と、これに対するマルクスの再評価はおおいに価値がある。マルクス本人の草稿についての情報はワクワクした。ただし、マルクス個人を持ち上げ過ぎているきらいがある。 農業に関する部分など、かなり偏った情報に基づいていたり、論議が浅いと感じられる。この本の...

行き過ぎた資本主義に対する問題意識と、これに対するマルクスの再評価はおおいに価値がある。マルクス本人の草稿についての情報はワクワクした。ただし、マルクス個人を持ち上げ過ぎているきらいがある。 農業に関する部分など、かなり偏った情報に基づいていたり、論議が浅いと感じられる。この本の解説を額面通り受け止めるべきかは、個人的に疑問を感じる。それぞれが考えるしかない。

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2021/04/08

難解なマルクスの資本論を噛み砕き解説していて非常に明快であり読みやすい。資本主義のprofit maximizationによる弊害から始まり、持続可能な定常型経済社会による打開策が示されている。要点は、資本主義がコモンや富を次々と解体し商品を生み出し、それによって現れる価値が次第...

難解なマルクスの資本論を噛み砕き解説していて非常に明快であり読みやすい。資本主義のprofit maximizationによる弊害から始まり、持続可能な定常型経済社会による打開策が示されている。要点は、資本主義がコモンや富を次々と解体し商品を生み出し、それによって現れる価値が次第に主体となり人間を資本という自動化された運動に巻き込んでいく。結果、人間と自然との物質代謝に修復不可能な亀裂が生じ様々な分断が生まれる。晩期マルクスは、解体されたコモンを再生し新たな生産手段と地球を取り戻す過程を構想していた。

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2021/04/07

2021.04.06 本当に簡単に資本論が解説されていてわかりやすかった。130ページ程度のオンエアとセットの本だと思われるが、本だけでも十分有用だと感じだ。齊藤先生の人新世の資本論とセットで読むとさらによくわかる気がする。

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2021/03/27

マルクスの「資本論」と「資本主義」というテーマと斎藤先生、「資本論」概要を知るにはとても面白いものになっていました。キーワードが多過ぎて、簡潔にまとめるのが無理なほどです。 共産主義に通じるものとして心理的に敬遠する方もいると思いますが、斎藤先生のマルクス論、資本論考察には触れて...

マルクスの「資本論」と「資本主義」というテーマと斎藤先生、「資本論」概要を知るにはとても面白いものになっていました。キーワードが多過ぎて、簡潔にまとめるのが無理なほどです。 共産主義に通じるものとして心理的に敬遠する方もいると思いますが、斎藤先生のマルクス論、資本論考察には触れてみるといいと思います。 社会主義・共産主義は歴史で否定され、高度経済成長によって資本主義経済の甘い罠にハマった世界では、「資本論」はすでに過去のものとされてきましたが、グローバル経済社会の現代において再び注目される理由が分かると思います。 マルクスが目指したのは単純な共産主義社会ではなく、もっと自然経済として成熟した互助性のある社会でした。世界の富豪たった26人の資産が、地球人口の半数の資産に匹敵する資本主義が、新自由主義の佞言の下で安易に民営化を進めることが、如何に恐ろしく、危険なものなのかを知ることができます。

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2021/03/27

3月15日頃読了 エッセンスを理解するには十分。 最終章は資本論の解説というより、マルクスが現代を見てどう思うか、著者の解釈が記されていた。 著者自身がマルクスに賛同する観点から本も出してるような研究者なので、現代の情報技術による技術革新に対してもマルクシズムの観点から批判的だが...

3月15日頃読了 エッセンスを理解するには十分。 最終章は資本論の解説というより、マルクスが現代を見てどう思うか、著者の解釈が記されていた。 著者自身がマルクスに賛同する観点から本も出してるような研究者なので、現代の情報技術による技術革新に対してもマルクシズムの観点から批判的だが、少し議論が浅い気がしてモヤりました(100分なので仕方ないが…) 詳しい人にもっと話を聞きたくなる。

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