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ゼアゼア の商品レビュー

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8件のお客様レビュー

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2024/07/23

2018年の発売時からずっと気になっていた小説をようやく購入。12人の都市インディアンの視点が代わる代わる描かれ、最後は祭りの祭典「パウワウ」で幕を閉じる。アメリカの都市インディアンのことを恥ずかしながらほとんど知らなかったので、初見の単語や文化も多くて新鮮だった。 12人の視点...

2018年の発売時からずっと気になっていた小説をようやく購入。12人の都市インディアンの視点が代わる代わる描かれ、最後は祭りの祭典「パウワウ」で幕を閉じる。アメリカの都市インディアンのことを恥ずかしながらほとんど知らなかったので、初見の単語や文化も多くて新鮮だった。 12人の視点が交互に移り変わるこの小説では、インディアンたちの苦境(肥満、ドラッグ、アルコール依存、離婚、自殺)が繰り返し描かれるが、一方でどこか前向きな気持ちになるようなエピソードもある(物語ること、踊ること、繋がろうとすること)。だからこそ緊迫のエンディングは衝撃そのもので、そんな終わり方ってあんまりでしょう、と思う。あまりに突然で、無慈悲で、暴力的。でも、これこそがインディアンが数百年にわたり見せつけられた現実だと思うと、読者はもう何も言うことができない。 私としては本書を、ドミニカの凄惨な歴史を現代オタク文化と見事に繋げたJuno DiazのThe Brief Wondrous Life of Oscar Wao (2007; ジュノ・ディアス「オスカー・ワオの短く凄まじい人生」)と並ぶ現代アメリカ文学の傑作に挙げたい。なお、本作の続編Wandering Starsが今年発売された。続編では1864年のサンドクリークの虐殺がモチーフとなっているようだ。相変わらずスラングが多くて難しそうだが、読んでみようと思う。

Posted byブクログ

2024/05/19
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※このレビューにはネタバレを含みます

望まずに移住させられたとしても、その心と文化は失わずに生きる。そういう人達が集まる場所で、乱射事件が起きる。となると、世間ではやはりインディアンで違う部族だとすぐ殺し合うんだな、とかとんでもなく間違った意見が生まれてもおかしくない。偏見の塊すぎる考えだが、イメージというのは恐ろしいものだ。色々な背景を持つ人間同士が、色々な思惑を持って、パウワウの場に集まって来る。そこは楽しいイベント会場になるはずだったのに、銃一つで全て変わってしまった。見た目は白人に似ているけれど、根っこは真の白人ではない。それだけで仕事を不当に辞めさせられたり、偏見の目で見られたりする。女性が酷い扱いを受けても、自殺率や依存症になるリスクが高くても、全て生まれのせいで公平な目で見てもらえず、行政の支援もどこか適当な扱いを受ける。文化を継承しようと意識し始める者、生まれを忌避する者、生まれを利用して裏で生きていく者、とインディアンの中でも、これだけ考えの違う人間が存在している。更に、見た目や宗教、性別の違いなども含めるととんでもない数の考えと、行動をする人間が居る。それぞれの違いを受け入れながら、この人間社会は成り立っている、と思うと頭がパンクしそうになる。

Posted byブクログ

2023/09/19
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

登場人物が交代に語る(語られる)よくあるスタイルだけど、人数が多すぎてなかなか覚えられない。こんなに何回も人物表を見直した事はない。 そこを乗り切れば、大変おもしろかった。 アメリカの都市インディアンの話。 ナバホに行った時に、みんな居留地から出ていってしまうと聞いたけど、この話のインディアン達は祖父母の世代から、都市に移住した感じ。 現役世代にとってインディアン的な生活は、テレビの中のものだったりして、日常ではなくなっている。 伝統を守るためのパウワウという踊りのお祭りで、用意された賞金を巡って銃乱射事件が起こる。 お金、3Dプリンター、ドローン、白い銃。 インディアンの祭りを白人の生み出したものが破壊する。 都市インディアンは内部から白人的価値観に蝕まれて、インディアン性も失っていく。 結末は予想できたけど、なんだか悲しくなっちゃったね。やっぱり最終的には家族しかないのかな。

Posted byブクログ

2022/10/18

読了。 「都市インディアン」という言葉も、シャイアン族も、「胎児性アルコールシンドローム」も、MF Doomも、パウワウも、3Dプリントで銃を複製できてしまうことも初めて知った。 日本に生まれ、両親とも日本人で、日本人としての「ふつう」に慣れ親しんで暮らしてきた。自分たちがどこ...

読了。 「都市インディアン」という言葉も、シャイアン族も、「胎児性アルコールシンドローム」も、MF Doomも、パウワウも、3Dプリントで銃を複製できてしまうことも初めて知った。 日本に生まれ、両親とも日本人で、日本人としての「ふつう」に慣れ親しんで暮らしてきた。自分たちがどこから来たかなんて、そんなの疑う余地も必要性も感じない。 「人は歴史に囚われ、歴史は人に囚われている。」(ジェームズ・ボールドウィン) 生まれる前のこと、もっともっと昔の祖先の物語なんて、正直どうだっていい。誰かの大昔の物語を背負わされるなんて、まっぴらだし、子どもたちにもそんなことさせたくない。 「今」ここにいる。それだけじゃだめなの? そう思うのは、自分が置かれているこの現状に何ら不満がなくて、恵まれているからこそなのかもしれない。傲慢かもしれないと気づいた。 ゼア・ゼアの登場人物たちのように、出自が不明確だったり、依存症や肥満や困窮で喘いでいたら、どうして自分がこんな目に遭わなくちゃいけないのか、過去に原因や拠り所を求めたくなるのかもしれない。 本編と相関図を行ったり来たりしなくてはいけないし、誰かに感情移入することも難しくて決して読みやすい訳ではないのに、読む手が止まらなかった。

Posted byブクログ

2021/09/02

まだ途中だが、気になったので。一人称と三人称がごっちゃになっていて非常にわかりにくい。翻訳あるいは校閲ミスだろうか。原文がどうなっているのか不明だが、あえてごちゃまぜにしているとも思えない。

Posted byブクログ

2021/05/17

カリフォルニア州オークランドに生きる「都市インディアン」たちの物語。 存在しなかったことにされたインディアン。 自分たちの歴史を知識では知っているが、世代を経て体験としては薄れていく。 アイデンティティとはなにか、考えさせられる。

Posted byブクログ

2021/05/08

過去の白人入植者に迫害を受け虐殺されたネイティブアメリカンたちの歴史的背景を理解しつつも、そういった歴史との関係が世代とともに薄れて、自分のアイデンティティがどのくらいインディアンなのか、迷いながら生きる現代の都市インディアンたちの物語です。 貧困、恵まれない家庭環境、アルコー...

過去の白人入植者に迫害を受け虐殺されたネイティブアメリカンたちの歴史的背景を理解しつつも、そういった歴史との関係が世代とともに薄れて、自分のアイデンティティがどのくらいインディアンなのか、迷いながら生きる現代の都市インディアンたちの物語です。 貧困、恵まれない家庭環境、アルコール中毒や肥満などの健康問題、社会的に弱い立場の人たちが抱える問題が浮き彫りになっています。 異なる文化が出会った時、そこで暴力的な「融合」が強いられると、元々の文化から新しい時代へのトランジションがうまくいかず、のちの世代まで大きな禍根と問題を残すのかと思いました。

Posted byブクログ

2021/01/23

第四部はまるでスローモーションだった。冒頭とラストが呼応して激しく響き渡る。圧倒的迫力。 ”インディアン””ネイティブ・アメリカン”と言えばつい狩猟やテントや保護区や独自のダンスなどのいかにもなイメージを抱いてしまいがちだけれど、なるほど現代の経済や文化の中で”都市インディアン...

第四部はまるでスローモーションだった。冒頭とラストが呼応して激しく響き渡る。圧倒的迫力。 ”インディアン””ネイティブ・アメリカン”と言えばつい狩猟やテントや保護区や独自のダンスなどのいかにもなイメージを抱いてしまいがちだけれど、なるほど現代の経済や文化の中で”都市インディアン”として生活しているわけだよね。イメージの”インディアン”はどこにもあってどこにもない。 それは”インディアン”に限らず、どこの国でもどの民族でも、日本でも日本の中のどこかの地方でも同じだよね。 そういえば作中に出てきたけれど、しばらく棚で眠らせていたルイーズ・アードリックも読み返してみようかな。

Posted byブクログ