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ホテル・ネヴァーシンク の商品レビュー

3.6

15件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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2023/03/10

ミステリーが物語の底を流れる ホテルとその所有者たち家族の年代記。 autumn522aki さんの熱いレビューに またまた、背中を押されました。 ホテル・ネヴァーシンクは、 元々は実業家が建てた邸宅。 実業家には夢がありました。 「家を子どもたちでいっぱいにしたい」 おそらく...

ミステリーが物語の底を流れる ホテルとその所有者たち家族の年代記。 autumn522aki さんの熱いレビューに またまた、背中を押されました。 ホテル・ネヴァーシンクは、 元々は実業家が建てた邸宅。 実業家には夢がありました。 「家を子どもたちでいっぱいにしたい」 おそらく彼には子供ができないまま 執念をもって建てられたこの館。 地上四階と半地下を備え 93もの部屋を有していたとのこと。 実業家亡き後、この屋敷を落札したのが ユダヤ人のアッシャー・シコルスキー。 「ホテル・ネヴァーシンク」として営業を始めます。 ホテルは大人気で、事業は成功。 そして、元々の所有者が夢に見た 「子どもたちが溢れる」場所に。 ところがある時、事件が起こります。 宿泊客の8歳の少年が忽然と姿を消したのです。 そして、その後もたびたび子どもが失踪。 謎が深まる中、転機となる事件が起こります。 アッシャー・シコルスキーのひ孫の失踪。 この事件がきっかけとなって 消えた子どもたちの謎が解かれることになります。 この物語には、ミステリー必須の探偵や警察は登場しません。 ホテル専属の探偵や地元の警察は出てくるのですが 彼らが事件を解決するという筋書きではないのです。 1章から14章まで ホテル創業者ゆかりの人物が一人ずつ 自分の人生を語ります。 彼らの語りこそがホテルの歴史であり、 謎のヒントでもあります。 最終章の15章では 何代にもわたる様々な人物が交差し 謎の解明に光が差し込みます。 そして「エンディング」。 80年以上に亘るホテルの歴史がつまびらかになります。 四世代にわたって語られる様々なドラマ。 akiさんがコメントの中で、 “文学作品のよう”と表現されていたのに納得しました。 もしかしたら、ホテルそのものが この作品を書いたのかもしれない。 そんな不思議な気持ちになる作品でした。 例えばこんな風に。 子どもたちの笑顔でいっぱいの屋敷。 私はそんな願いを込めて建てられました。 私の二番目の所有者はユダヤ人。 彼が私をホテルとして活用し、願いが叶いました。 ところが、ある時を境に 私は辛い時期をすごすことになりました。 度々子どもたちが消えていったのです。 そして皮肉なことに、謎の奥深くにあったものは 子どもへの愛だったのです。 遊びすぎちゃったかなぁ?

Posted byブクログ

2023/02/24

★5 決して沈まない豪華絢爛な〈ホテル・ネバーシンク〉世代を重ねた未来には #ホテル・ネバーシンク ■あらすじ 1930年代から現代まで、三代にわたって家族経営を続ける〈ホテル・ネバーシンク〉。絢爛豪華で巨大なそのホテルは、街のシンボルとなっていた。 しかしある時、ホテルで宿...

★5 決して沈まない豪華絢爛な〈ホテル・ネバーシンク〉世代を重ねた未来には #ホテル・ネバーシンク ■あらすじ 1930年代から現代まで、三代にわたって家族経営を続ける〈ホテル・ネバーシンク〉。絢爛豪華で巨大なそのホテルは、街のシンボルとなっていた。 しかしある時、ホテルで宿泊していた子どもが行方不明になってしまう。その後も周囲では子どもが消えてしまう事件が発生するようになり、徐々に経営の斜陽化が進み始める。決して沈まないという意味の名前をもつホテルの行方はどうなるのか、そして事件の真相は… ■きっと読みたくなるレビュー 面白い★5 舞台設定、話の構成が超絶素晴らしい! 1930年代から2010年代まで、豪華で煌びやかなホテルを中心に話が展開されていきます。各章、年代ごとに少しずつ物語が進行しますが、語り手が毎回変わっていき、様々な目線と価値観で描かれていく群像劇。 もちろん年代が進んでいくので、登場人物たちも年齢を重ねていく。ある年代の語り手は少年時代でも、次の語り手になったときにはホテルで働いていたりする。 そう、登場人物の一生が描写されると同時に、〈ホテル・ネバーシンク〉の一生も見届けていくことになるのです。 まるで建物であるホテル自体が生き物のように時には笑い、泣き、苦しんでいることが伝わってくる。こんな刺激的なミステリーは他にないよ。 そして様々な立場の登場人物たちが魅力的すぎるんです。 ホテルの経営者、経営者を継ぐ者、離れていく者、嫌う者、バーテンダー、掃除係、ホテル付き探偵などなど。 それぞれの立場、価値観、向き合い方でホテルについて語られていく。まるで短編集を読んでいるかの如く小気味よく綴られ、時には楽しく、時には切なく、どんどん読み進められます。 特にホテルの後継者レンと妻のレイチェルの二人のやり取りは、読み応えたっぷり。熱い出会いから結婚、そして経年による関係性や価値観の変化が半端なくエグい。 そして子どもたちが行方不明になった真相… 最終盤の展開は、これまで読んできた経営者とホテルの嘆きを聞かされたようで、私は涙が止まりませんでした。 ■推しポイント 母が他界、父が高齢になったため、施設に入居をすることになりました。 そのため築45年の一戸建ての実家はもう不要となり、経済合理性を鑑みて、処分をすることになったのです。先日、片付け業者に依頼して家財道具をすべて搬出、家の中はすっかり空っぽになりました。 私が幼児の頃から育った、思い出がいっぱいの家。 家財も、日用品も、衣服も、本も、ゴミすらも何もなくなった家。 家が一生を終えていく… 決して沈まない家や、老いを重ねない人間なんて存在しません。残酷だけど時間は平等に経過していくのです。 願わくば、この住まいと家族の魂を解き放って、次に建てられる家、新しい家族に、明るい未来と溢れる希望を与えて欲しい。 いままで楽しい時間と住まいを与えてくれたことに、ありがとうと伝えました。

Posted byブクログ

2023/02/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

日本初上陸の作家、アダム・オファロン・プライス。訳がケイト・モートン「湖畔荘」等の青木純子さんということもあって手に取りました。 ニューヨーク近郊の山中に建つホテル・ネヴァーシンク。ホテルの関係者の視点で1950年から2010年代まで、ネヴァーシンク(不沈)の興隆から荒廃までを描いた作品。 1950年台に子供が行方不明となり、どうやらその後もホテル周辺で度々子供が行方不明になる、みたいなのだが、その辺りは深く描かれない。ミステリ色は弱め。 ある章の中心だったホテル関係者のことが、別の人物の視点の章でも描かれており、あの後、こういう人生を歩んだんだなぁとわかる仕掛け。何人か繰り返し中心となるため総勢10名ほどの視点か。 最後に犯人はわかるのだが、おまけというか、メインはそこではなく。ホテルの凋落、お祭りの後やパーティーの後のような侘しさが描かれた作品。 良かった。 ちょっと久しぶりにポケミスに手を出してしまいました笑(待ってても文庫落ちしない作品も多いので。。。)

Posted byブクログ

2022/07/22

20世紀前半、アメリカ。ポーランドから移住してきたユダヤ人一家が営むホテル〈ネヴァーシンク〉には、キャッツキル山地へ保養に来た家族連れが数多く訪れる。だが、創業者アッシャーの跡を継いだジーニーの時代に、宿泊客の息子がホテル内で行方不明になる事件が発生。捜査も虚しく少年は見つからな...

20世紀前半、アメリカ。ポーランドから移住してきたユダヤ人一家が営むホテル〈ネヴァーシンク〉には、キャッツキル山地へ保養に来た家族連れが数多く訪れる。だが、創業者アッシャーの跡を継いだジーニーの時代に、宿泊客の息子がホテル内で行方不明になる事件が発生。捜査も虚しく少年は見つからなかったが、十数年後、今度はホテルの地下室で衰弱した少女が救出された。そして同時に、かつて行方不明になった少年の白骨死体も発見されたのだった。三代続く経営者一族、従業員、事件の被害者、それぞれの人生をオムニバス形式で追いながら、リゾートホテルの興亡を見届けるゴシック・ミステリー。 ミステリーの構造的には恩田陸の『ユージニア』に似ている。が、犯人探しが主軸というわけではなく、殺人事件はあくまでネヴァーシンクに落ちた影の一つであり、ホテルがやがて崩壊するきっかけという感じ。視点人物を移しながら語られる物語には、事件と直接関係ないエピソードも多い。 主役はホテルそのものと、それに執着するシコルスキー一家。少年殺しの真犯人とされる人も、個のキャラクターというより創業者の歪みを象徴する存在として書かれていると思う。だが、意外とこの一家はみんなまともで、期待したほど怪奇方向に流れていかないんだよなぁ……。建築としてのホテルの魅力を訴える描写があまりないのも残念だった。 一番印象に残ったのは、盗癖のある従業員とそれを目撃した女性客のエピソード。縦軸には全く関わらない話だけど、それだけに気持ち悪くも侘しくもある読後感が忘れられない。アリスがラリって竜巻に呑まれそうになる話や、地下鉄でのささやかな出会いが自殺願望をギリギリのところで取り払う話も、くっきりと絵が浮かんで映像的だった。アリスの成長譚部分がしっかりしていることで、全体の印象がグッと現代的になっていると思う。 逆にレナードは最後まで腹を括れず、狂気にも陥らず、惨めに年老いていくので読後はしょんぼりしてしまった。アリスとの対比になっているんだろうけど、この人、話の中心にいるわりに魅力に欠けるし(だから妻レイチェルの嘆きにリアリティがあるとも言える)、でも善良だから酷い目にあってほしくもないんだよね。キャラ造形含め、少し惜しい感じのする作品だった。

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2022/02/28

子供たちの失踪とホテルの50年。 犯人探し、ではなく、ホテルを経営する一族や関係者たちの光と闇が描かれている。 登場人物が多いので、一覧表の確認は必須。 かなり早い段階で真相に気がつくので、ちょっと拍子抜けしてしまう…。どこかで似たような話を読んだ(見た?)ような…気がするので...

子供たちの失踪とホテルの50年。 犯人探し、ではなく、ホテルを経営する一族や関係者たちの光と闇が描かれている。 登場人物が多いので、一覧表の確認は必須。 かなり早い段階で真相に気がつくので、ちょっと拍子抜けしてしまう…。どこかで似たような話を読んだ(見た?)ような…気がするのです。

Posted byブクログ

2022/02/06

ニューヨーク州キャッツキル山地の山間に建つホテル・ネバーシンク。シコルスキー一家はこの地に流れつき、建物を買い取り、ある時この地に観光に来て泊まるホテルがなくて困っていた家族を泊めて料理を提供したところ好評になり、やがてホテル・ネバーシンクとしてホテル業を始める。 トルーマン大統...

ニューヨーク州キャッツキル山地の山間に建つホテル・ネバーシンク。シコルスキー一家はこの地に流れつき、建物を買い取り、ある時この地に観光に来て泊まるホテルがなくて困っていた家族を泊めて料理を提供したところ好評になり、やがてホテル・ネバーシンクとしてホテル業を始める。 トルーマン大統領も泊まったなどホテルは隆盛を迎えるが、経営が娘に移った後に、泊まり客の家族の少年が行方不明になる事件が起きて、ホテルの歴史に暗い影を落とし始める、、、 1950年から物語は始まり、家族経営のホテルを舞台に父親、娘ジーニー、その息子レン、と経営が受け継がれる流れの中で、ジーニーやレン、ホテルで働くメイド、ホテル付き探偵、ジーニーの弟、レンとホテルの常連客家族の娘レイチェルの恋愛、レンとレイチェルの間にできた娘、再びホテルで起きる事件に巻き込まれる姪のアリスなど、章ごとに次々と焦点をあてる登場人物を変えながら2012年まで、ホテルとそれに取り憑かれた家族が、ホテルと共に年老いていく物語というのが相応しいかもしれない。 ホテルで行方不明とった少年に何が起きたのか?誰の犯行なのかというのは、物語の最後に明かされる秘密だけれど、この物語自体は謎解きではなく、そんな暗い過去を持つホテルが寂れていく様子、まさに沈んでいく船から逃れるように昔からのホテルの従業員や、家族さえもがホテルから離れていく中で頑なにホテル・ネバーシンクを守り続けようとするレンの執着を描いているようでもある。

Posted byブクログ

2021/10/08

ニューヨーク郊外のリゾートホテルが舞台。その地で民宿から丘の上の大邸宅をホテルに変え、成功したユダヤ人一族。創業者と子どもたち、孫、古くからの従業員たちのそれぞれのストーリーを繋いでいく。ホテル開業後のある時、宿泊していた男の子が行方不明になった。同じ頃、ホテルの周辺でも子どもが...

ニューヨーク郊外のリゾートホテルが舞台。その地で民宿から丘の上の大邸宅をホテルに変え、成功したユダヤ人一族。創業者と子どもたち、孫、古くからの従業員たちのそれぞれのストーリーを繋いでいく。ホテル開業後のある時、宿泊していた男の子が行方不明になった。同じ頃、ホテルの周辺でも子どもが行方不明になったが、犯人も子どもも見つからなかった。やがて、一族の子どもも行方不明になるが、ホテルの地下室で見つかり保護されたが、一緒に最初に行方不明になった男の子の遺体も見つかる。そこからホテルは少しづつ客が離れていく。 3代に渡る一族の物語の中から、ホテルの凋落とともに犯人が明かされる。 なかなかうまく出来たストーリーだった。閑話休題的な章もあり、飽きずに読ませてくれた。

Posted byブクログ

2021/05/07

とある実業家の道楽的思い入れにより改築に次ぐ改築が繰り返された広大な屋敷、フォーリーハウス。 財政難により競売にかけられた屋敷はユダヤ人シコルスキー一族に買い取られ『ホテルネヴァーシンク』として一時代の輝きを放つ。 半世紀に渡る隆興と凋落の裏にはシコルスキー一族の決して美しいばか...

とある実業家の道楽的思い入れにより改築に次ぐ改築が繰り返された広大な屋敷、フォーリーハウス。 財政難により競売にかけられた屋敷はユダヤ人シコルスキー一族に買い取られ『ホテルネヴァーシンク』として一時代の輝きを放つ。 半世紀に渡る隆興と凋落の裏にはシコルスキー一族の決して美しいばかりではない営みが息づいている。 ホテルとしての絶頂期に起きたネヴァーシンクでの男児失踪事件の真相究明を細い軸にしながら、歴代の関係者の物語で各年代の場面を構成する形式。 必ずしも失踪事件の謎が前面にあるわけではなく、あくまでもネヴァーシンクを取り巻く歴史絵巻。 本筋とは関係のなさそうな挿話が、伏線かと思いきや本当に全く回収されないまま進んでいくことも。 多数の登場人物がゆる~く繋がりながらひとつの流れ作り出すまさに人生のような物語。

Posted byブクログ

2021/04/27

ユダヤ移民により開業したホテル、ネヴァーシンク。苦労の末、栄えていくが、ホテル近辺で子供が行方不明になる事件が続く。謎は提示されるものの、ふかく掘り下げられる気配はなく、物語はホテルが栄え、衰退していく約50年の歴史を、3代にわたる経営者一族、従業員、宿泊客たちによるドラマとして...

ユダヤ移民により開業したホテル、ネヴァーシンク。苦労の末、栄えていくが、ホテル近辺で子供が行方不明になる事件が続く。謎は提示されるものの、ふかく掘り下げられる気配はなく、物語はホテルが栄え、衰退していく約50年の歴史を、3代にわたる経営者一族、従業員、宿泊客たちによるドラマとして進められていく。ラストでようやく事件の真相が判明するが、予想通りだった。早川ポケミスではあるが、ミステリー要素はほぼ感じられなかった。

Posted byブクログ

2021/04/15

 ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズの初期作品の一つである『キャッツキルの鷲』というタイトルはなぜか忘れがたいものがある。さてそのキャッツキルという地名だが、「キル」は古いオランダ語で「川」の意味なのだそうだ。古いオランダ語。うーむ。  ハドソン川に沿ったいくつかの土...

 ロバート・B・パーカーのスペンサー・シリーズの初期作品の一つである『キャッツキルの鷲』というタイトルはなぜか忘れがたいものがある。さてそのキャッツキルという地名だが、「キル」は古いオランダ語で「川」の意味なのだそうだ。古いオランダ語。うーむ。  ハドソン川に沿ったいくつかの土地の名には「キル」が付いてるらしい。この作品の直後にぼくが読むことになるアリソン・ゲイリン著『もし今夜ぼくが死んだら、』の舞台が、実はニューヨークに注ぐハドソン川流域の架空の町ヘヴンキルなのである。「キル」の意味を教えてくれたのはそちらの翻訳を担当している奥村章子さんで、彼女が巻末解説でそのことを教えてくれたのだ。これもまた読書の順番という偶然。  ハドソン川流域キャッツキルには、実際に1986年まで、この小説のモデルとなる巨大リゾートホテルが存在していたらしい。本書の作者は、この巨大施設を舞台に、何人も少年が消えているというミステリーを構築する。それも様々なスパイスを加えた連作短編集という表現形式で、半世紀を越えるスケールの大きな物語を作り出した。  本書は、章ごとに主人公を変え、一人称あり、三人称あり、でそれぞれの異なる物語を語らせる。1950年に始まり、2012年にすべてにけりをつけて閉じる壮大なる物語。意外なのは、この作品が2020年度エドガー賞最優秀ペーパーバック賞受賞作品であること。賞の受賞そのものが意外なのではなく、こんなに壮大なスケールの物語なのにペーパーバック賞であるというところが意外なのだ。  蛇足かもしれないが、「キル」を教えてくれた前述の『もし今夜ぼくが死んだら、』も前年の2019年に同じペーパーバック賞を受賞。これも我が読書順のある意味偶然。何か、運命というようなものがあるのだろうか?  壮大とは言ったが、誰にとっても親しみやすい短めの物語の蓄積によって織り成されるがゆえに、読者を選ばない親しみやすい作品と言えるのかもしれない。ペーパーバックというフレンドリーな賞の対象となったのはそこなのかもしれない。  ポーランド出身のユダヤ人一族が、ナチスドイツの迫害下、飢餓に苦しむ生活から逃れ、アメリカ大陸へ移住し、彼らなりの新世界を切り拓いてゆく家族史を主軸に、ホテル経営に関わる多種多様な登場人物のストーリーで時代と人々を積み重ねてゆく。  不気味に少年を襲う黒い影、というミステリーを縫い込みつつ、ページは進む。次々と語り手が変わり、色合いを変えるゴシック模様のような斬新な物語。個性いっぱいのこの世界・この時代を、現代から振り返り、俯瞰し直すような楽しみが、本書の最大の魅力であろう。そんな個性的で新しみに満ちた本書の感触を是非味わって頂きたいと思う。

Posted byブクログ