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存在しない女たち の商品レビュー

4.2

34件のお客様レビュー

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2021/02/20

2021年2月頭の森氏の「女は黙っとれ」発言をきっかけにこの本を手に取った。普段購入する本よりもお札一枚分多い金額に一瞬ためらったけれど、事前に目を通していた『この本は紛れもなく、非常に役立つ実用書である。手元に置いておいて、自分が黙らせられそうになった時、いないことにされそうに...

2021年2月頭の森氏の「女は黙っとれ」発言をきっかけにこの本を手に取った。普段購入する本よりもお札一枚分多い金額に一瞬ためらったけれど、事前に目を通していた『この本は紛れもなく、非常に役立つ実用書である。手元に置いておいて、自分が黙らせられそうになった時、いないことにされそうになった時に反論の根拠として常に出せるようにしておきたい。』という書評の言葉に背中を押された。 参考:書評全文 https://web.kawade.co.jp/bungei/3957/ 読めば読むほど頭が痛くなる。私たちはこんなに不自由な社会で暮らしているのか。 もちろん、日本で定職を得ている「私」と、本書で紹介されているような貧困地域の女性では、そこにも大きな隔たりはあるし、平成生まれの「私」と昭和生まれの母親世代、あるいは祖母世代の女性のあいだにも「女性差別」と言ってもその影響力にはグラデーションがあるだろう。 しかし、森氏の発言や、つい先日Eテレで放送されたという亀井氏の夫婦別姓を望む人々への暴言などを見るにつけ、問題の根っこはなにも変わっていないと強く感じる。少しばかり待遇が良くなったからって「ま、いっか」なんて言ってやるもんか。 雪かきひとつとっても、女性の行動パターンを勘案することでまわりまわってコスト削減につながる、女性が働けるようになればその分GDPが向上する、など社会的なメリットも多くある。多くの企業にとっても人口が増えれば利用者や消費者が増えて売上にもつながるはずなのに自社の女性社員の出産や育児には消極的な態度をとる。二枚舌じゃないのか。 いないことにされている世界の半数の人たちが教育に経済活動に参加すればより優れた結果を生み出すことができる(なんせ可能性は倍になるのだから)。そうしたら私たちはその恩恵を受けてより豊かな社会で生きることができのに(この話は『教育格差』(筑摩新書)にもつながる話だ。)なぜいないことにする? 冒頭の「黙っとれ」発言については、女性のほうが話を遮られやすいことがデータに基づいて紹介されている。世界でもあるあるな話のようで頭がくらくらしてくる。 炎上案件といえば、生理と射精を同一視して炎上していた件を思い出したが、これって女性の体は男性の劣化版とする考え(p.226)と通じるものがあるように感じた。そもそも男女の体はまったく別のものなのだと認識していたらわざわざ同一視して互換させる必要なくない? ぶつぶつと文句だらけでもはやレビューでも感想とも言えない文章になってきたが、ひとつだけ言えるのは、値段や厚さに手に取ることを躊躇しているのならばとりあえずどこか気になるところを少し読んでみてほしい。どこを開いても、きっと、これはじっくり読まなければ、と思うだろうから。

Posted byブクログ

2021/08/09

中学生の頃の話だ。ある晩、母親が「500円あげるから食器洗いをしてくれない?」と言った。 それほど大仕事でもないし、別に疲れるわけでもない洗い物が時折ものすごく面倒になることは、たかだかひとり分で済む今の僕にもよくわかる。それでも普段から淡々と家事をこなし...

中学生の頃の話だ。ある晩、母親が「500円あげるから食器洗いをしてくれない?」と言った。 それほど大仕事でもないし、別に疲れるわけでもない洗い物が時折ものすごく面倒になることは、たかだかひとり分で済む今の僕にもよくわかる。それでも普段から淡々と家事をこなしていた母が、「たかが食器洗い」に500円を出すというのには少し驚いた。 その後の記憶はあやふやだけれど、500円に釣られて僕は機嫌よく食器を洗ったと思う。そして偉そうに褒美をせしめたはずだ。ちょっぴり母のことを心配はしたけれど、「皿洗いくらい毎日やろうじゃないの」とは考えなかった。恥ずかしながら家事は母の仕事だと思っていたし、「家事なんか面倒くさがる思春期男子」という「特権」を手放すつもりもなかった。 首相時代から問題発言を繰り返してきた差別主義者が、自らが推進すべきオリンピック・パラリンピックの精神に泥を塗る暴言で世界を呆れさせている。僕も耳を疑ったし腹が立った。だけどこの本を読んでいる今、同時に怖さも感じている。これを読めば、濃淡の差こそあれ、僕も彼と地続きのグラデーションの中にいることに嫌というほど気づかされるからだ。 この世界は男性をデフォルトにして出来上がっている。辞書にもあるように「man=人間」なのだ。鍵盤の大きさが原因で女性のピアニストに手の故障が多いのも、ウィキペディアの「サッカーイングランド代表」のページに男子チームしか載っていないのも、極寒のフィールドで女性研究者だけが小用を足すために防寒着を脱がないといけないのも、すべては物事を決める場に女性がいないせいだ。 人々に「女の子らしい走り方をして」と頼んだ実験の動画を観たことはないだろうか。男性はおろか女性さえもクネクネとデフォルメされた滑稽な走り方をする中、まだ幼い少女たちだけがまっすぐ前を見据えて全力疾走する純粋さに涙がこぼれた。アメリカの調査によると、女児は6歳になる頃から「男性ほどは賢くなれないのではないか」と思い始めるという。間違った刷り込みは女性自身にも及んでいる。 世界の無償ケア労働の75%は女性が担わされている。5分もかからない僕の皿洗いが500円に値したはずがない。終わりのない家事労働に追われる母のたった5分の「一回休み」にこそ価値があったのだ。 目の前にあるのに見えていなかった不平等を膨大なデータで明らかにしてくれるとても良い本。大げさじゃなく(そして情けないことに)、どのページにもハッとさせられる事実がこれでもかと書いてあります。おすすです。

Posted byブクログ

2021/02/04

人類の人口の半分を占める女性を「ないもの」として設計された社会は、「人」とは男性を意味する。男性を基準に制度はつくられる。スマホの大きさは男性の手の大きさを基準につくられ、棚の高さも男性の身長にあわせて設計されている。音声認識ソフトも男性の声にはよく反応するが女性の声には反応が鈍...

人類の人口の半分を占める女性を「ないもの」として設計された社会は、「人」とは男性を意味する。男性を基準に制度はつくられる。スマホの大きさは男性の手の大きさを基準につくられ、棚の高さも男性の身長にあわせて設計されている。音声認識ソフトも男性の声にはよく反応するが女性の声には反応が鈍い。GDPには掃除、洗濯、育児、料理などの無償労働は含まれていない。 そもそもの前提として、制度設計の基になるデータに女性が含まれていないというデータにおけるジェンダーギャップがある。そのため、この世界は女性の視点が決定的に欠けている。 そこで、筆者は「女性の体」「女性に対する性暴力」「無償のケア労働」の3つテーマのデータを収集・分析し、それを社会に還元することがこの世界をよりよいものにすると提唱する。 男性のみならず女性もこの男性の作り出した世界に絡め取られていることも問題解決を難しくしているのだろう。 政治家や会社経営者の男女比が半々にならない限りこれらに問題は解決されないのだろう。逆に、制度としてクォーター制を導入することは一つの解決策だと思う。

Posted byブクログ

2021/01/03

いや〜、価値観変わる。経営者には全力おすすめ。読んだほうがいい。意思決定層における多様性の必要性もさることながら、ビジネスチャンスでもある。自社のデータを見る視点が確実に変わる。

Posted byブクログ