地上に星座をつくる の商品レビュー
「旅に行きました、行きたかった観光地に行ってきました〜」という気持ちが朗らかになる旅行記ではなく、生死を賭けて旅をしていることが多い筆者の生きる目的を垣間見ることができる一冊。 今回初めて著書を読んだが、写真家という表現者だからか、文章もとても端的に表されていて読みやすかった。旅...
「旅に行きました、行きたかった観光地に行ってきました〜」という気持ちが朗らかになる旅行記ではなく、生死を賭けて旅をしていることが多い筆者の生きる目的を垣間見ることができる一冊。 今回初めて著書を読んだが、写真家という表現者だからか、文章もとても端的に表されていて読みやすかった。旅の内容とリンクして、私の気持ちの揺れ幅も大きかったように思う。 写真が白黒なのは少し残念。
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石川直樹(1977年~)氏は、日本 5人目、世界 85人目の七大陸最高峰登頂(2001年、当時世界最年少記録) 、8000メートル峰5座(6回)登頂(エベレストに2回登頂)などの実績をもつ冒険家(本人は「冒険家」と呼ばれることに違和感があると言っているが)、写真家。 本書は、月刊...
石川直樹(1977年~)氏は、日本 5人目、世界 85人目の七大陸最高峰登頂(2001年、当時世界最年少記録) 、8000メートル峰5座(6回)登頂(エベレストに2回登頂)などの実績をもつ冒険家(本人は「冒険家」と呼ばれることに違和感があると言っているが)、写真家。 本書は、月刊誌「新潮」に2012~19年に連載された「地上に星座をつくる」を時系列に一冊にまとめたもので、著者は「あとがき」で「都度、1ヶ月間に起こった最も印象的な出来事について毎月書いてきたので、忘れっぽい自分にとって、この連載は自分の歩みそのものであり、生の記憶と直結しているといってもいい」と記している。 私はこれまで著者の、『最後の冒険家』(2008年開高健ノンフィクション賞受賞)のほか、『全ての装備を知恵に置き換えること』(2005年)、『いま生きているという冒険』(2006年)などのエッセイ・紀行集を読んできたが、常に驚き感心するのは、著者の幅広い好奇心と人間離れした行動力、そこから何かを感じ取る鋭い感性、そしてそれを他人に伝える文章表現力であり、本書においてもそれらは遺憾なく発揮されている。 本書に登場する場所は、山形、ネパール、バングラデシュ、ムスタン(ネパール)、国東半島、韓国、ペルー、福島、ヒマラヤ、チベット、岩手、富士山、パリ、斜里、サハリン、ベトナム、アルバータ(カナダ)、パキスタン、新潟、アメリカ、沖縄、オーストラリア、能登、知床、札幌、白老、ノルウェー、富山、鹿児島、シベリア、ユーコン、アラスカ、宮古島・・・と、例によって、国内外の実に様々な国・地域である。 長引くコロナ禍の中で、ついつい内向きの発想になってしまう昨今だが、本書からは大いに元気を与えてもらえたし、また、著者が『いま生きているという冒険』の中で「冒険とは何か?」について語っていた、「現実に何を体験するか、どこに行くかということはさして重要ではないのです。心を揺さぶる何かに向かいあっているか、ということがもっとも大切なことだとぼくは思います。」という件を、思い出すことができた。 自らの「冒険心」に刺激をもらえるエッセイ集である。 (2020年12月了)
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