シルクロード全史(下) の商品レビュー
1. はじめに この章では、第一次世界大戦の背景にあるロシアとイギリスの関係、及びロシアの帝国主義的拡大について詳述されている。ロシアの経済的、政治的変遷がどのようにしてイギリスとの対立を生み出し、最終的に戦争へと繋がったのかが探求される。 2. ロシアの帝国主義的拡大 2.1...
1. はじめに この章では、第一次世界大戦の背景にあるロシアとイギリスの関係、及びロシアの帝国主義的拡大について詳述されている。ロシアの経済的、政治的変遷がどのようにしてイギリスとの対立を生み出し、最終的に戦争へと繋がったのかが探求される。 2. ロシアの帝国主義的拡大 2.1 歴史的背景 ロシアは19世紀の初めから中央アジアへの領土拡張を進めており、その過程で多くの民族を併合していった。この動きは当初は穏便であったが、次第にロシアの勢力がイギリスに対抗する存在となっていく。 2.2 経済成長と領土拡張 ロシアの領土拡張は経済成長を促進し、農業生産性を向上させた。この新たな農地の獲得により、ロシアはより多くの資源を手に入れることができた。しかし、ロシアの拡大政策はイギリスにとって脅威となり、両国の緊張を高める要因となった。 3. イギリスとロシアの対立 3.1 イギリスの懸念 イギリスはロシアの南下政策を警戒し、インドへの影響を懸念していた。ロシアの進出がインドの安定に悪影響を及ぼすことを恐れ、アフガニスタンに対する軍事介入を計画する。 3.2 軍事的対策 イギリスはロシアとの対立を避けるため、アフガニスタンにおける影響力を強化するために軍事行動を取る準備を進めた。特に、ロシアの動向を注視し、必要に応じて迅速に対応できる体制を整えた。 4. 結論 この章は、ロシアの拡張主義がどのように第一次世界大戦の引き金となったのか、イギリスとの対立の構図を明らかにしている。また、ロシアの経済的成長と領土拡張の影響が、国際政治における力のバランスをどのように変化させたのかを示している。ロシアとイギリスの関係は、戦争へと向かう過程でますます緊張を増していったことが強調されている。 本書の要点まとめ 1. 第一次世界大戦の背景 - ロシアとイギリスの対立: 第一次世界大戦の背後には、恐ろしいドイツの影だけでなく、ロシアの脅威も存在した。特にロシアの東方での影響力が増大し、イギリスに対する対抗心を強めた。 - 経済と領土の拡張: 1800年代からロシアは中央アジアでの領土拡張を進め、経済成長を促進した。これにより、ロシアはイギリスを凌駕する存在となり、特に南部と東部において影響力を強めた。 2. ロシアの内政と外交 - 中央アジアの併合: ロシアは穏便に中央アジアの部族を併合し、各地域の指導者に特権を与えることで支配を拡大した。これにより、農業の発展や経済成長が促進された。 - オスマン帝国との関係: ロシアはオスマン帝国を攻撃し、ベッサラビアやカフカス南部の支配権を獲得した。この過程でロシアの南方への野望が顕著になった。 3. イギリスの外交政策 - ペルシアへの介入: イギリスはペルシア(現在のイラン)に対して経済的・政治的な介入を強化し、ロシアの影響力を抑えようとした。ペルシアには賄賂や外交的圧力が伴った。 - 石油資源の確保: イギリスの企業や投資家はペルシアの石油資源に目を付け、採掘権を得るための交渉を行ったが、地元の反発が強く、契約が無効化される事例もあった。 4. 中東の地政学的状況 - アメリカとイランの関係: 1950年代末からイランのシャーは、アメリカとの関係を強化しようとしたが、国内の経済問題や社会的不公平が影響を及ぼした。 - イラン革命の兆し: 社会的不満が高まり、アメリカの支持を受けた政権に対する反発が強まった。ホメイニのような指導者が民衆の不満を利用し、反体制運動を促進した。 5. 現代の中東における影響 - 石油資源を巡る争奪: 中東の石油資源は国際的な関心を引き続けており、各国がその確保に動いている。特にアメリカはこの地域における影響力を維持するための戦略を進めている。 - 新たな地政学的変動: 21世紀に入り、アメリカや中国、ロシアが中東の地政学において重要な役割を果たし、地域情勢が複雑化している。 まとめ 本書は、第一次世界大戦前後のロシアとイギリスの対立、ペルシアの地政学的状況、そして現代の中東における影響力の争奪を中心に、歴史的背景とその後の展望を詳細に述べている。特に、石油資源の重要性が各国の外交政策に大きな影響を与えていることが強調されている。
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帝国主義の時代にはイギリスが、大戦後はアメリカが、それぞれ石油欲しさに中東を支配しようとする。その無茶苦茶なやり方が丁寧に説明されている。 アメリカの二枚舌によってイラクやアフガニスタンが反発するも、結局アメリカによって酷い目にあう。そんな時、犠牲になるのは、貧困層などの社会...
帝国主義の時代にはイギリスが、大戦後はアメリカが、それぞれ石油欲しさに中東を支配しようとする。その無茶苦茶なやり方が丁寧に説明されている。 アメリカの二枚舌によってイラクやアフガニスタンが反発するも、結局アメリカによって酷い目にあう。そんな時、犠牲になるのは、貧困層などの社会的弱者である。アメリカは、自国の利益のためであれば何でもする。そんなアメリカの属国である日本か、米軍に守ってもらえる訳がないことが中東で起こったことから容易に推測できる。 しかし、石油だけでなく、天然ガス、レアメタルなどの資源も豊富な中東などのシルクロードにある、アジアのは背骨と呼ばれる地域が急速に発展してきている。そこに一帯一路政策の中国が深く関わってきている。 いずれにしても、これらの地域が今後の歴史を考える上で非常に重要であることがよく分かった。
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※このレビューにはネタバレを含みます
図書館の新着コーナーで、上巻に続き下巻も手に取った。 下巻、帝国主義に翻弄されてきた世界をわかりやすく解説している。特に石油をめぐる帝国列強の攻勢とその衰退による現地の政治混乱はほんとえげつない。 本書はシルクロードの過去から現在を語ることにより、メソポタミアからペルシア、ロシア、中国に至る「アジアの背骨」が、今後、世界の中心となることを静かに主張している。 また読みたい一冊だ。
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