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ニッケル・ボーイズ の商品レビュー

4.3

15件のお客様レビュー

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2021/01/10

アフリカ系アメリカ人のエルウッドは、ホテルの下働きをしている祖母に育てられた。従業員たちに可愛がられ、勉強もでき、先生から黒人が無償で学ぶことのできる大学への進学を勧められる。大学へ行くためにヒッチハイクした車は盗難車だった事から、共犯者として少年院に送られてしまう。そこはニッケ...

アフリカ系アメリカ人のエルウッドは、ホテルの下働きをしている祖母に育てられた。従業員たちに可愛がられ、勉強もでき、先生から黒人が無償で学ぶことのできる大学への進学を勧められる。大学へ行くためにヒッチハイクした車は盗難車だった事から、共犯者として少年院に送られてしまう。そこはニッケルスクールという名前だったが、スクールとは名ばかり、虐待のまかり通る過酷な少年院だった。 後年、閉校になったスクールから傷だらけの白骨が掘り出された事から、当時の院生に話題が集まる。 スクールでの悲惨な日常と、不正を外部に知らせようとするエルウッドと、大人になった院生とが交互に描かれる。はたしてエルウッドはどうなったのか。悲しいラストだが、胸をうたれる。 遠い昔のアメリカではない、50年ほど前である。キング牧師が登場した頃の話だ。そして21世紀になっても黒人への差別は続く。黒人の大統領が誕生しても、大坂なおみは7枚ものマスクを用意していたのだから。

Posted byブクログ

2021/01/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ハッピーエンドではなくて、悲しい結末だが、救いない結幕ではない。暗いないようなので、新年に読むには、しんどかった。翻訳はとてもよい。

Posted byブクログ

2020/12/25

真面目に前向きに暮らしていた少年が、不運によって人種差別が色濃く漂う劣悪な少年院に放り込まれる。 実話をベースにしたフィクション。 だが、この物語のような話はいくらでも存在したのだろう。

Posted byブクログ

2020/12/12

1960年代前半、公民権運動が徐々に活性化しつつあったアメリカを舞台に、優秀な学力を持つ黒人の高校生は無実の罪で少年院に送られる。そこは管理者である白人たちが物資の横流しで儲け、少しでも反抗する黒人少年を撲殺して無かったこととする地獄であった。 この恐ろしい筋書きは空想のもので...

1960年代前半、公民権運動が徐々に活性化しつつあったアメリカを舞台に、優秀な学力を持つ黒人の高校生は無実の罪で少年院に送られる。そこは管理者である白人たちが物資の横流しで儲け、少しでも反抗する黒人少年を撲殺して無かったこととする地獄であった。 この恐ろしい筋書きは空想のものではない。フロリダに存在し、100名以上の行方不明者を出したドジャー少年院がモデルになっている。施設が老朽化のために閉鎖され、暴力の痕跡も歴史に埋もれようとしていた中、ハリケーン後の敷地清掃で27名もの正体不明の遺骨が発見されたことによって、この少年院での恐ろしい暴力の実態が明るみに出ることとなった。 本作『ニッケル・ボーイズ』は、ニッケル少年院を舞台として主人公の少年がいかに恐ろしい暴力をサバイブしようとしてかを克明な心理描写と共に描き上げる。物語は1960年当時と現代の2つの時間軸を舞台として、現代にまでサバイブできた生存者たちに植え付けられた暴力のトラウマまでも生々しく示される。そして、この2つの時間軸を使った予想外の叙述トリックによるラストは必読、思わず読んでいた本を落としそうになってしまった。 南部で虐げられる黒人を北部に逃すための比喩である”地下鉄道”が実際に鉄道として存在していたなら、という途方もない想像力を持って描かれた前作『地下鉄道』での受賞に続き、2度目のピュリッツァー賞を受賞した本作。ノンフィクション部門でピュリッツァー賞を2回受賞したのは彼が史上4人目であり、先達にはウィリアム・フォークナー、ジョン・アップダイクらであるということを知れば、コリソン・ホワイトヘッドの作家としての凄さは十分に伝わると思う。

Posted byブクログ

2020/12/07

『ニッケル・ボーイズ』コルソン・ホワイトヘッド著、藤井光訳(早川書房)エルウッドの人生から見える米国の構造的人種差別。実在した「エルウッド」たちの叫び。「究極の良識が、あらゆる人の心に息づいていると信頼すること」が公民権運動のメッセージ。(p.216)読んで...

『ニッケル・ボーイズ』コルソン・ホワイトヘッド著、藤井光訳(早川書房)エルウッドの人生から見える米国の構造的人種差別。実在した「エルウッド」たちの叫び。「究極の良識が、あらゆる人の心に息づいていると信頼すること」が公民権運動のメッセージ。(p.216)読んでいて身体が強張り震えた。#読書 #coltonwhitehead #翻訳 #藤井光

Posted byブクログ