文豪怪奇コレクション 幻想と怪奇の夏目漱石 の商品レビュー
夏目漱石の怪奇幻想名作集。昔「吾輩は猫である」は読んだけれど、そうかそこにもこんな怪奇幻想のエッセンスがあったのか! やはり何度読んでも「夢十夜」は素敵です。そして一見紀行文のようにも見える「倫敦塔」は、歴史の色々を知っているとさらに趣深く読める一編。 新体詩や幻妖句集が収録され...
夏目漱石の怪奇幻想名作集。昔「吾輩は猫である」は読んだけれど、そうかそこにもこんな怪奇幻想のエッセンスがあったのか! やはり何度読んでも「夢十夜」は素敵です。そして一見紀行文のようにも見える「倫敦塔」は、歴史の色々を知っているとさらに趣深く読める一編。 新体詩や幻妖句集が収録されているのが嬉しいところ。短いけれど、怪奇幻想はぎゅぎゅっと詰まっている印象です。
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新潮文庫で読み、ちくま文庫全集で読み、これで三度目。 ちくま文庫でいえば第2巻(初期)と第10巻(小品)を並べ直したようなセレクト。 ■鬼哭寺の一夜 ……新体詩。女人幻想。 ■水底の感 ……藤村操「女子」(!)について。 ■夢十夜 ……まあいつもの。 ■永日小品(抄) ……蛇/猫の墓/暖かい夢/印象/モナリサ/火事/霧/声/心 ……二度読んだあと、ポッドキャストやCDやで何度聞いても、憶えられず、そのうち眠ってしまうのが、こちら。このままの付き合い方を続けたいとも思う。 ■一夜 ……確かに「だからどうした」という感想。とはいえ「草枕」の萌芽があるとも感じる。「猫」や奥泉光の諸作でも度々感じることだが「益体もなさ」を愉しむ時間を持てることこそが読書の醍醐味だ、文章を読んで日常や生活からほんの少し遊離することが読書の経験だ、と。何か得られるものを求めるのではなく、文章を読む時間そのものが娯楽である、と。憂慮、煩悶、輾転反側、真面目腐った理念、から一線引いたところでものを書いていこうという表明のようにも感じる。百数十年後の読者としては、イデオロギーから一線引くための態度を漱石から得るというのも、ありかもしれない。大袈裟な言説は「ひとまず信じるな」というのは、押井守も言っていたことだし、吉本隆明も煎じ詰めればそう言っていたと思う。 ■吾輩は猫である(抄) ……首くくりの松の個所。 ■琴のそら音 ……なんか心配になったけど結局大丈夫で安心した、というだけの話。だが外界の描写と内面の描写が緻密に溶け合っているので、「どう心配になったか」「どう暗示が埋め込まれたか」「どう不吉な兆候に行き会ったか」読むうちに、体験しているように感じた。それが大丈夫とわかって解放され、床屋と客のいい口調の会話でさらに解放され、最後に嬉し恥ずかしな場面が来ても清々しい。読み手を操作する巧みさに充ちている。家政婦の婆さんもいいキャラ。心霊への興味と対応は「吾輩は猫である」にも似通った水準。 ■趣味の遺伝 ……探偵は厭だ嫌いだというのは漱石のいつもの調子だが、自嘲しながらも探偵した結果が開陳される。なるほど「異性の」趣味の遺伝か! 夢野久作を連想せざるをえない。また、結構際どい夢想を繰り広げながら、出征兵士を送り出す群衆に遭遇する。逆かな、群衆の狂乱から、狂騒的な戦場を妄想する。その念入りさが凄まじい。なんとなく「愛のコリーダ」で吉蔵が行進する兵隊に逆行する場面を連想したりもして。ところで「陽気の所為で神も気違になる」という冒頭は印象深いが、それに続く数節で戦争の夢想に至るとは、忘れていた。 ■倫敦塔 ……中野京子「怖い絵 泣く女篇」にあった、ポール・ドラローシュ「レディ・ジェーン・グレイの処刑」をナショナル・ギャラリーで見て、漱石は着想を得ている。ジョン・エヴァレット・ミレー「オフィーリア」が「草枕」の那美の着想の一部であるように、漱石と絵、という着眼点は大学生当時にはなかったので、今回実作を通じて気づけてよかった。 ■幻影の盾 ……山尾悠子が「傳説」を書く際に「……と思え」という言い回しを拝借したという文体。漱石は3回、山尾は22回も! 拡大利用甚だしい。 ■薤露行 ……断念。 ■マクベスの幽霊に就いて ……断念。 ■漱石幻妖句集 東雅夫 選 ……「菫ほどな小さき人に生まれたし」は有名だが怪奇の文脈で選ばれると、これはこれで。また「あんかうや孕み女の釣るし斬り」のあまりの残酷絵ぶりよ。 □編者解説 ……この文庫でシリーズを始めようとする気概ばっちり。
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夏なので幻想怪奇系積読消化するぞのじかんです。 これは最近買った本だからそんなに積読じゃないけど、積む予定だったから読めてよかった。 幻想怪奇かとゆーとそこまでではなかったけど、「琴のそら音」とか面白かった。 「薤露行」は、わたしはアーサー王伝説をぜんぜん知らんので、Wikipe...
夏なので幻想怪奇系積読消化するぞのじかんです。 これは最近買った本だからそんなに積読じゃないけど、積む予定だったから読めてよかった。 幻想怪奇かとゆーとそこまでではなかったけど、「琴のそら音」とか面白かった。 「薤露行」は、わたしはアーサー王伝説をぜんぜん知らんので、Wikipediaとかで調べながら読んでたよ。擬古文しんどかったけど、話に合った文体やとおもた。 あと、夏目漱石てやっぱり「人というのはこういうものだから」ていうのを描写するのがものすごくうまいというか、今まで意識してなかったようなそういうのを分かりやすく言語化してスーンと納得させてくれるよね。
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