ブルースだってただの唄 の商品レビュー
これはもうタイトルにやられた。かなり前(1980)に出た作品みたいなのだが最近になって文庫化されたようで店頭でタイトル見たら読んでみたくなった。翻訳を生業とし当時アメリカで暮らしていた作者が何人かの黒人女性にインタビューを行ったもの。黒人であり女性であるということは二重に抑圧され...
これはもうタイトルにやられた。かなり前(1980)に出た作品みたいなのだが最近になって文庫化されたようで店頭でタイトル見たら読んでみたくなった。翻訳を生業とし当時アメリカで暮らしていた作者が何人かの黒人女性にインタビューを行ったもの。黒人であり女性であるということは二重に抑圧された存在である、という切り口で刑務所の心理学者、ケーブルテレビ局のオーナー、ソーシャルワーカー、囚人、街で暮らす百歳を超えた老婆、などに対する聞き書き。どういう生い立ちでどういう酷い目にあってそれをどう跳ね返したのか、または、跳ね返せなかったのか、が綴られている。特定の人種と性別にのみ焦点を当てた作品で今なら逆に世に出せないのでは、とも思った。自分たちが少し前までは奴隷であったために劣った存在と思っていたのだがジェームス・ブラウンに代表されるムーブメントでいかに勇気をもらったか、など非常に興味深く読んだ。タイトルにもなっているフレーズは心理学者が昔たまたま耳にして忘れられない言葉ということで少し長いけども引用する。果たしてこんな逞しさが自分にはあるだろうか。非常に興味深い作品。おすすめです。 「ブルースなんてただの唄。かわいそうなあたし、みじめなあたし。いつでも、そう歌っていたら、気がすむ? こんな目にあわされたあたし、おいてきぼりのあたし。ちがう。わたしたちはわたしたち自身のもので、ちがう唄だってうたえる。ちがう唄うたってよみがえる。」
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アメリカの黒人差別について、あまりにも無知だ。私の知識はせいぜい映画からのもの。今もまだ続いていることは看過できないと思うものの、やはり遠い。アメリカも遠いし、黒人も遠い。 黒人であり、女性であるということはどれだけの差別の中で生きていくことになるのか。特に、刑務所の2人、その中...
アメリカの黒人差別について、あまりにも無知だ。私の知識はせいぜい映画からのもの。今もまだ続いていることは看過できないと思うものの、やはり遠い。アメリカも遠いし、黒人も遠い。 黒人であり、女性であるということはどれだけの差別の中で生きていくことになるのか。特に、刑務所の2人、その中でもウィルマの話が印象に残った。ウィルマの語りをそのまま聞いているつもりになっているが、英語で聞き、語られたことが日本語に訳されていると思うと、藤本和子という人はすごい人だなと思う。 弱い立場、苦しんでいる人たちの話を聞いて本にしてくださる方々にありがたさを感じる。 過酷な人生でも強く生きていく、とにかく生きる、死ぬまで生きる、そのこと自体に意味があるのかとしみじみ思う。でもやはり、差別問題に関してはなくす方向に進めないと行けないし、ボンヤリしているわけにはいかない。当事者も遠くに感じている私たちも。
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歴史やニュースで大きな枠としてしか、黒人の人たちのことを捉えていなかったことに、この本を読んで気づきました。 奴隷として働いていた祖父母の思い出、実際にどんな仕事・生活をこれまでしてきたか。聞き書きで、理路整然・時系列に言葉が並べられていないことで却ってその人の人生が立体的に浮...
歴史やニュースで大きな枠としてしか、黒人の人たちのことを捉えていなかったことに、この本を読んで気づきました。 奴隷として働いていた祖父母の思い出、実際にどんな仕事・生活をこれまでしてきたか。聞き書きで、理路整然・時系列に言葉が並べられていないことで却ってその人の人生が立体的に浮かび上がってきます。 アメリカの話、と途中まで思っていましたが、日本人である自分にも、黒人のトピックにあたる考えるべきものがあるのでは、と問いかける本だと思いました。
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強烈な現実 そして変わらない現実 藤本和子さんを通して伝わってくる現実 解説に書かれている通り 「語り手だけでなく、聞き手の何かどくどくとこちらの血管に注ぎ込まれるような…」リアリティ!
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黒人に対する差別について初めてリアルを感じた。 著者の翻訳に感嘆しながらも、聞き書きの胸をつく威力はすごい。 歴史的背景を知らないが故に理解の難しいところもあったが、それを差し引いても読んでよかったと思える一冊。
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教育は歓迎するが、白人文化への同化は望まない、という女性の言葉が印象的だった。 国や地域に文化があるなら、女独自の文化を保ったままでいいんじゃないのか?ことさらに男性への同化を自他に求めなくとも、やっていけるんじゃないのか?男たちが勝手に作ったヒエラルキーを内面化してあげなくても...
教育は歓迎するが、白人文化への同化は望まない、という女性の言葉が印象的だった。 国や地域に文化があるなら、女独自の文化を保ったままでいいんじゃないのか?ことさらに男性への同化を自他に求めなくとも、やっていけるんじゃないのか?男たちが勝手に作ったヒエラルキーを内面化してあげなくても、もう、いいんじゃないのか? 本書を読みながらしきりに「崖」(石垣りん)の一節が思い出されてならなかった。 戦争の終り、 サイパン島の崖の上から 次々に身を投げた女たち。 美徳やら義理やら体裁やら 何やら。 火だの男だのに追いつめられて。 とばなければならないからとびこんだ。 ゆき場のないゆき場所。 (崖はいつも女をまっさかさまにする) それがねえ まだ一人も海にとどかないのだ。 十五年もたつというのに どうしたんだろう。 あの、 女。 女たちが落ちる「崖」に、ここまで、という終わりはない。 20年も経つのに。 そろそろ80年も経とうというのに。 当時インタビューを受けた女性たちは、今、60代、70代を迎えている。アジア人女性が黒人男性に路上で殴り倒される自分たちの国を見て、どんな思いでいるのだろう?
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人種差別を生きた黒人女性の聞き取り。 13で家を出た人の話が印象的、つらい生活でも、 こんなものと生きて来た。神を信じて。 豊かな日本人には、耐えられない。 人間は、いかなる状況でも生きていかれるのか?
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生きていく上で、 男の子と女の子にとるべき態度を別々に教えなくてはいけなかったということ、 暴力がとても近くにあったこと、 いわゆる授業の教材で使うような本(to kill a mockingbird, the bluest eyeなど)の描写と変わらない状況に置かれていた...
生きていく上で、 男の子と女の子にとるべき態度を別々に教えなくてはいけなかったということ、 暴力がとても近くにあったこと、 いわゆる授業の教材で使うような本(to kill a mockingbird, the bluest eyeなど)の描写と変わらない状況に置かれていたこと、 などなど、 生の言葉とそのまま出会って、たった少しではあるけど黒人の女性の置かれてきた環境、そのまわりの空気を知ることができました。 情報として、人種差別と戦うために、黒人男性がやってきたことや、代表的な女性の発言などがアクセスしやすいところにあったので目にしていたけど、 いち女性の人生を紡ぐ言葉は、とても心に入ってきました。
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歴史の授業で何の思い入れもなく習った事柄が、個人の語りによって生々しく押し寄せてくる。昔の本だけど、外国の話だけど、全然他人事じゃない。
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30年ほど前のアフリカン・アメリカ女性の生い立ちの聞き書き。中でも夫の不倫相手を殺し、服役する女性の話が辛い。自分ではどうにもできない生い立ちを抱え、やむをえず殺人を犯す。1986年出版の本だが復刊。今読みたい名著。 ブルースなんてただの唄。嘆いていたって始まらない。
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