仮面の告白 新版 の商品レビュー
園子が見る視線を鏡のように見る自己の肖像 園子と出逢い清純さを共有する 時間の帯が彼らを巻き取って形を変えながら運んでゆく 園子という無垢なる存在は決して自分を純潔であるものから裏切ってはならない 力を意味するトルソは自分を打ちのめし卑小な存在であることを明からしめる 火に焼...
園子が見る視線を鏡のように見る自己の肖像 園子と出逢い清純さを共有する 時間の帯が彼らを巻き取って形を変えながら運んでゆく 園子という無垢なる存在は決して自分を純潔であるものから裏切ってはならない 力を意味するトルソは自分を打ちのめし卑小な存在であることを明からしめる 火に焼けた褐色の肌は遠く眩しいものを望むに等しい 相反する2つのものは自分を決して離さない 形を変えながら運んでゆく中で与えてくる衝撃は混ざり合い益々強固なものとなり ついには2つの衝動を別つ 明らかにマイノリティな感覚は侮蔑を味わわせるその度に焦燥感に怯える 園子とトルソは自分にとっては美という存在である 見詰めて抱く幻想への残酷な復讐 現実からの復讐 絶大なる純粋性を我がものにしながらそれを捨ててしまうという自己欺瞞は対象的に絶対に敵わない圧倒的な肉感的な支配下である自己の劣等感が影に隠れている 二律背反する対象を内なるものとして呻吟する姿 孤独としてではなく認められた愛 いつまでも終わらないで欲しいと思う 不可能性に悩んでいる時間を読みながら考えることは自分にとって純粋体験 コントロールを失い自我の認識を強いられるラストスパートの園子といた30分間の世界を2つに切り裂かれた不意打ちは衝撃的でした
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今作『仮面の告白』は三島由紀夫の初の長編となった作品です。しかもそうした「始まりの作品」でありながらこの小説はかなりどぎついです。後の三島を予感させる内面の苦悩、葛藤、嵐がすでにここに描かれています。 本作の主人公は同性愛的傾向を持ち、さらには若い男の流す血に性的興奮を持ってしまうという、特異な少年です。ですが、彼はそのことに煩悶し、世間一般の幸福を望んでもいました。 しかし、やはり彼にはそのような平穏は許されていなかった・・・ この作品は三島由紀夫の自伝的な小説と呼ばれています。三島自身は妻を持ち子もいますので完全には小説そのままではありませんが、彼の抱えていた悩みやその生育過程が今作に大きな影響を与えたとされています。
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はじめて三島由紀夫の作品を読んだ。 まず文章から圧を感じる! 褌姿の由紀夫が私の前に胡座と腕組みをして近距離にも関わらず拡張マイクで私に読み聞かせをしてくれるのだ。 その目の前で縮み上がった私は正座を崩す事もできず、物語が終わる頃には足どころか全身の痺れと由紀夫の恐怖で失禁して...
はじめて三島由紀夫の作品を読んだ。 まず文章から圧を感じる! 褌姿の由紀夫が私の前に胡座と腕組みをして近距離にも関わらず拡張マイクで私に読み聞かせをしてくれるのだ。 その目の前で縮み上がった私は正座を崩す事もできず、物語が終わる頃には足どころか全身の痺れと由紀夫の恐怖で失禁している、そんなイメージでこの本を読みました。 あの時代によく自身の性的マイノリティやサディストなど晒せたなと感心してしまう。 作品に対しての背景などは知識不足。 一体何を目的に執筆したのかいつか調べてみたい。 とにかく人を惹きつける作品でした。
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まだ途中なのだけど恐ろしくって居ても立っても居られないので書き残す。三島由紀夫の妖しい程の文章力が恐ろしい。ひいては日本語そのものの妖しさ美しさか。アンミカ的に言えば「白って200色あんねん」の世界。 だんだんと鮮やかなオレンジ色から漆黒へと移り変わる夕方的な感情、物語の進行を、...
まだ途中なのだけど恐ろしくって居ても立っても居られないので書き残す。三島由紀夫の妖しい程の文章力が恐ろしい。ひいては日本語そのものの妖しさ美しさか。アンミカ的に言えば「白って200色あんねん」の世界。 だんだんと鮮やかなオレンジ色から漆黒へと移り変わる夕方的な感情、物語の進行を、こうも的確に、鮮烈に、それでいて三島由紀夫的に言語化できるとは! 「ツライ、綺麗、うざい」を封印されたら私は何も喋れなくなるのに、そういったゲームがあれば、きっと最後まで生き残るのは三島由紀夫なんだろう。
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本当に実直に三島さんの気持ちが綴られた本だった。びっくりするくらい。 性と愛がテーマ? 男性の筋肉と血と死体が性的対象である事の葛藤。 自分が普通の人であると思いたい葛藤は私にも分かる気がした。共感できるのは太宰治の人間失格と少し似ていると感じた。 とんでもなく優秀で世間から見れば大成功人、東大法学部卒業後、大蔵省で勤め、小説家としても大成している彼にもこんな悩みがあったのかと思う。まだ同性愛について認知が浅いこの時代、悩みに悩み、亡くなった人もいただろう。きっと誰にも言えず、自分で自分のことが理解できず、とても苦しかっただろう。でも同じ人はいたはずだ。自分だけではきっとないということ、そしてありのままの自分を受け入れることがいつか必要なんだと思った。それが何よりも難しいのだけれど。自分だったら絶対に出来ないが、作品を読んでいるともう少し上手くできないものかと思ってしまうところがあり面白かった。(園子さんへの対応など) 難しく書かれすぎていると感じる文章。頭のいい人だからこそこんな風に考えすぎてしまうのかな。 愛する人と性の対象が違うことが有り得るのかという謎があったが、確かにどうだろう。 園子への感情は私には愛のようにも感じたが。だからこそキスで何も得られなかったのは不思議だった。 逆に近江に感じた強い性欲魅力は愛なのだろうか。 愛と性の対象は必ずしも同じなのであろうか。 その後結婚し子供もいると聞いたが、どのようにその後の人生を考え、歩んだのかとても気になる。 不思議と共感出来、私好みのエッセイのような作品だった。私はやっぱり人の人生に共感できるような作品が好きだ。
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三島作品二作目です。 前半部分は抽象的な記載が多く、正直あまり入り込めませんでした。 他方、園子とのエピソードが始まってからは、主人公のアンビバレントな感情がとても面白く、一作目に読んだ「金閣寺」ほどの没入感はなかったですが、とても楽しめました。 同性愛者は思春期において自らの性的指向について明確な認識ができないことがありますが、あの時代だとその確信を持ってしまうことが、「私」にとってはまさに死刑判決だったのでしょう。「私」の性的衝動は希死念慮とも結びついていますしね。 そこに至るまでの葛藤や、最後に「私」がいたった心理がとても興味深かったです。 もちろん、三島自身が、〈告白の本質は「告白は不可能だ」といふことだ〉としたうえで、〈肉にまで喰ひ入つた仮面、肉づきの仮面だけが告白することができる〉としているので、本作品の記載がどこまで三島の心理を表しているのかは不明確ですが…
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覚悟していたよりかは幾らか語りが率直で、三島文学にしては読みやすかったという印象。しかしまあ巧みに言葉を操るなあ。。。しばらく寝かせてまた読み返そうと思います。
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この告白によって 私は自らを死刑に処す___ タイトルに惹かれ手に取った小説。 ガラス細工のように緻密で美しい文章。 難解な箇所も多く、読むのにかなり時間がかかりました。今までに読んだことのないジャンルでしたが、かなり惹き込まれ、そして考えさせられました。文章の構成力が素晴らしく...
この告白によって 私は自らを死刑に処す___ タイトルに惹かれ手に取った小説。 ガラス細工のように緻密で美しい文章。 難解な箇所も多く、読むのにかなり時間がかかりました。今までに読んだことのないジャンルでしたが、かなり惹き込まれ、そして考えさせられました。文章の構成力が素晴らしく、1人の人間の人生を追体験しているように感じられました。 ありきたりな表現しかできないのがもどかしいですが、自身の感情をここまで的確に言葉にできるのは本物の天才としか言えない。 三島由紀夫という人物をもっと知りたくなった。 今、出会えてよかった一冊です。
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今回はおびのりさんのお勧め作品です!皆さんにお勧め頂いた本は大抵面白いのでびっくりですが、久々の三島由紀夫さんでした。 この方、本当に博識だし文章が美しいし、最後の方にびっしり注釈があって行き来しましたがそれも全然苦では無く、むしろこんな芸術的な表現をするんだ!と感銘を受けました...
今回はおびのりさんのお勧め作品です!皆さんにお勧め頂いた本は大抵面白いのでびっくりですが、久々の三島由紀夫さんでした。 この方、本当に博識だし文章が美しいし、最後の方にびっしり注釈があって行き来しましたがそれも全然苦では無く、むしろこんな芸術的な表現をするんだ!と感銘を受けました。 この時代の文学は文章を見てるだけで気持ち良いし、頭が良くなる気がして大好きです。実際は1ミクロンも頭は良くなっていませんが、めげずに三島さんワールドに浸かってみましょう。 まず『人間失格』が思い浮かんだのですが、あちらと違って失格じゃねえのか、俺…から始まるお話。 三島さんは死に方も壮絶ですし中々マッチョなイメージも持たれがちですが、私はどちらかと言えば本作のような繊細な印象が強かったので半自伝じゃないのかな、と思いつつ読んでおりました。(実際にそう仰る方も多いみたい) 病弱で死にかけた事のある主人公が初めてときめきを覚えたのはなんと糞尿汲取人の若者。更にジャンヌダルクの絵本を見て胸キュンしていたら、実は女だと知ってガックリ。 裸の上半身に矢が刺さった殉教者『聖セバスチャン』の絵を見て自慰を覚えたのが13歳。女装して家でキャッキャウフフする背徳的な遊びもしちゃう。 筋肉質な若者が死んで行く姿を1人妄想する、そんな彼の初恋は体型に恵まれた級友の近江。 こう書くとどんな変態ワールドが展開されるんだと思われる方もいらっしゃるでしょうが、これが本当に芸術的なんです。再度書きますが美しい。 男の脇毛をあんなに綺麗に書く人が他にいるでしょうか?思わず爽やかな草原か何かと勘違いしそうになりましたよ。 そして驚くのが、お話の舞台が戦争中期から終わりにかけての時代という点。 当時は同性愛者への当たりが相当にきつい筈です。そんな中を男が好きというだけではなく、死んだ男にまで欲情するとなるとこれはもうバレたら世にも恐ろしい事になるのでは… 勿論、主人公はそんな性的嗜好はひた隠し、女性と恋に落ちる事も出来ました。 友人の草野の妹の園子です。 主人公は初恋の近江に対して不思議な嫉妬心も持っていました。自身の身体を鏡に写してみると、憧れの男達とは全く違う貧相な身体。己にがっかりしていたので、もしかすると病弱さ故の憧れを同性愛と勘違いしているのでは? 園子と出会い本当は異性愛者だと気付くのでは?と思っていたのですが、そんな事は無かった。 恋人のような関係を続け、実際に会いたいとも思ってはいた主人公ですが、初めて園子と接吻した時に「あ、やっぱり違うわ」と確信してしまう主人公。 彼女と結婚するだろうと言う周りの期待から逃げたくて、最終的に戦争で死ねばこの難しい関係を終わらす事が出来る。とまで思い込むように。 この2人がどうなったのか。気になる方には是非ともお読み頂きたいのですが、このお話は書く人によっては単なる暗い、何を言ってるのか分からないお話になってしまう危険な香りがしています。それなのに、この葛藤と軽い希死念慮と言うか死生観をこんなにドラマティックに書ける三島さんの才能っぷり。イケメンだし(関係ないけど ) 異性愛者としての仮面を被った本作の主人公ですが、後に三島さんご本人は憧れていた筋肉質の男へと自身を鍛え上げ、そして最後には妄想していた男達のように自害して血を流す…。 これが自伝だとしたら、仮面を本物の顔にしてしまったように思えます。 これを考えると感慨深いですし、この作品は三島さんご自身の人生込みで凄い作品なのではないかと、暫く表紙をじっと見つめてしまう深夜24時なのでした。 おびのりさん、かなり重たかったのに芸術作品を鑑賞した気分になりました! 『禁色』も楽しみです♪ 余談シリーズ。 最近沼落ちオススメ作品を読んでいてふと思った事が。 男性が男性を好きになる時も、異性愛者と同じで好みの容姿とか性格とか人によって違うんだろうな、と思うとやっぱり人間て不思議な生き物ですよね。 動物みたいに簡単に行かない所が。 好みのタイプって全てを具現化すると案外凄い事になってたりして。
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三島由紀夫の半自伝的小説。美しい文章に魅了された。 三島は勿論、マジョリティから逸脱した性質を持つ者の懊悩や感覚を描くのに、非常に卓越していると言える。しかしそれ以上に、多くの人間に普遍的に存在する感覚を、美しい文章で言語化する能力がずば抜けているとも感じた。 『仮面の告白』では、主人公が、自身の男色と殺害欲求を隠すために、女を愛しているという仮面を被る。 しかし、結果的には、その仮面のせいで、もしかしたら自分の核心のうちに本当にあったかもしれない「女を愛す心」をさえ仮面だと思い込み、悩み、園子から逃げる決断を取ったのではないだろうか。 このように、自身の本来の性質・仮面・隠れていたかもしれない気持ち、それらがないまぜになったような主人公の内面を描き出していた(と解釈した)。 とにかく、主人公の内奥を緻密に、無駄に抽象化して誤魔化すことなく、美しく描いていた作品であった。
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