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善医の罪 の商品レビュー

3.8

27件のお客様レビュー

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2024/01/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

実際の事件をモデルにした医療小説。冒頭の横川の尊厳死を描く場面は、医者でもある作者の真骨頂でもある。とてもリアルで、その現場で眺めているかのような感覚を覚え、手に汗を握りながら読んだ。 本小説のテーマは安楽死であり、安楽死が認められていない状況下では自分の希望通りの最期を迎えることができない、想像を絶する悲惨な最期を迎える可能性がある、医師が罪に問われる可能性がある以上積極的な医療行為が行われない可能性があるといった問題を提起している。また裁判の描写を通じて、医療と法律の問題も描いている。超高齢化社会を迎えようとしている日本は、これらの問題にもっときちんと向き合うべきだと考えさせられた。 安楽死の問題を考える際、我々は患者側・その家族の側の視点で思考することが大半だ。一方でこの小説を読むと、医療行為を施す医師の側の感情、思考、葛藤がリアルに伝わってくる。「白衣の輪郭がぼやける」という表現に代表されるように、安楽死の問題については医師もまた大きな迷いや葛藤を抱えているのだろう。一方の視点からのみ考えてはならないことを強く認識させられた。 読み進めていく中でもう一つ気になったのは、横川の死が個人的なものでなくなっていく過程である。 死は人生の終幕であり、本来は個人のものなのである。しかしながら、登場人物の多くがそれぞれの思惑に沿って横川の死を少なからず利用しているように思え、嫌悪感を覚えた。横川の尊厳を傷つけているのはルネが行った医療行為ではなく、死後利用しようとしている側なのではないか。横川の妻の、「ほんとうはどうしてほしかったのだろう」という言葉はとても重く、尊厳を傷つけられないためには一人ひとりが「自らの最期」について少なからず考えておく必要があるのではないかと感じた。

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2023/06/29

久しぶりの久坂部羊の小説 今まで読んだ久坂部羊の小説も凄かったでが、この作品も凄く考えさせられるストーリーでした。 尊厳死がテーマになっており、それに関しては日本は法律的にまだまだ未熟なのだと思わざるを得ないと感じましたが、必ずしも尊厳死が正しいわけでもなく、安易に容認されればマ...

久しぶりの久坂部羊の小説 今まで読んだ久坂部羊の小説も凄かったでが、この作品も凄く考えさせられるストーリーでした。 尊厳死がテーマになっており、それに関しては日本は法律的にまだまだ未熟なのだと思わざるを得ないと感じましたが、必ずしも尊厳死が正しいわけでもなく、安易に容認されればマイナス面もあり凄く難しい問題だと思いました。 しかし、登場人物の病院幹部やスタッフの性根の悪さが腹立たしい限りで、悪意ある証言が集まれば冤罪が簡単に成立されていく事や、検察が事実を追求するのでは無く有罪にする事しか考えずに事実と異なるストーリーを展開し、裁判長がそれを事実と判断する裁判の怖さを感じました。 事実に基づくフィクションらしいですが、事実が湾曲されても、判決を言い渡した裁判長の考えが事実になってしまう法律の怖さもありました。 医療訴訟に関わる人達は読むべき小説かもしれません。

Posted byブクログ

2023/03/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

医療現場が抱えている問題点やジレンマがリアルに描かれている。 この作品を読んだ医療従事者は、追い詰められていく主人公に対して、人ごとではない心境になっただろう。 裁判での描写も含め、フィクションでありノンフィクションでもあるこの作品は、最後まで興味深く読み進めることができた。

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2022/08/30

白石先生の立場を思うと読むのも辛い 実際にあった話をもとにしたフィクション 尊厳死問題はずうっと前からあるが、正しい答えはない 患者思いの医師が理不尽な理由でいなくなるのは避けないといけない 裁判官も人間であり、もし過去に自分の家族が末期に機械に繋がれ点滴で浮腫んで肉体は...

白石先生の立場を思うと読むのも辛い 実際にあった話をもとにしたフィクション 尊厳死問題はずうっと前からあるが、正しい答えはない 患者思いの医師が理不尽な理由でいなくなるのは避けないといけない 裁判官も人間であり、もし過去に自分の家族が末期に機械に繋がれ点滴で浮腫んで肉体は腐り始めるような状態を経験していたら判決も違うはずである

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2022/08/25

延命治療を中止した医師は善意の医師なのか、殺人者なのか?延命治療の是非、安楽死、尊厳死に問題が残る。

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2021/12/19

自分の患者が心肺停止で運ばれた。 元々延命治療を望んでいなかったことを知っている主治医は彼を尊厳死させるが、3年後に裁判沙汰になり、検察の欺瞞、病院の体裁に翻弄される。 実際の日本の医療現場では、救命の可能性が低い患者の呼吸不全で人工呼吸器の装着を控える(withhold)こと...

自分の患者が心肺停止で運ばれた。 元々延命治療を望んでいなかったことを知っている主治医は彼を尊厳死させるが、3年後に裁判沙汰になり、検察の欺瞞、病院の体裁に翻弄される。 実際の日本の医療現場では、救命の可能性が低い患者の呼吸不全で人工呼吸器の装着を控える(withhold)ことはよくあるが、既に装着した人工呼吸器を尊厳死を目的として中止する(withdrawal)ことは実際の日本の医療現場では殆どない 日本では尊厳死が当たり前という価値観も法律すらないので、あえてこれを主題にしたのは意義深い ドラマや小説によくあることだが、登場人物をキャラ立ちしようとし過ぎて、現場のリアリティが少しなくなっている。少し設定の詰めも甘いと感じてしまうのは自分がまさに救急医療の現場にいるからか。

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2021/12/16

2021-12-162難しい主題を選んだけど、医療と法律という相入れない感じがよく理解できた。産婦人科と小児科医が減っている理由がわかる気がする。

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2021/09/16

面白い。善意でやったこと、医学的にも正しいことをやってるのに、人間の欲に落とし入れられてハラハラドキドキの展開に。ありがちなテーマをより深いミステリーに仕上げて面白かった。

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2021/08/26

尊厳死という言葉を考えさせられる、内容でした。それと、裁判の怖さを知りました。あと、組織をまもるため、なりふり構わず個人を攻撃するようになる組織の論理も、こわかった。 以上、一気読み必至の読みやすさでした。

Posted byブクログ

2021/04/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

なんかモヤモヤする!医師は、本人や家族の証言や、大事な決め事は全て録音でもしておかないと、殺人罪で有罪になってしまうじゃん!白石医師が甘いと言われればそれまでで、後の人はお金や保身、嫌がらせばかりで、追い詰められるだけの展開に、もう気分だだ下がり…。リアリティがあるのだろうが、悪い奴がのさばって罰をうけないのは納得できない。

Posted byブクログ