あしなが蜂と暮らした夏 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
アシナガバチの観察眼だとか、おかあとの交流などはとても面白く読めた。あおむし団子を作る様子や、1匹1匹の女王の個性があり、巣作りまでも変わってくるのは、作者が一夏何匹ものハチを観察してこそ見つけたもの。ただ、ハチの生活にちょいちょい介入しているのがよろしくないと思う。ハチの幼虫にクリームを舐めさせてみたり、東京に帰るからと巣を剥がして持ち帰ったり、新幹線に乗せるなんてあり得ない。ハチの生活環境に大きなストレスを与えてしまうし、一般的にハチが苦手な人が多いのに何の気無しに新幹線やアパートに持ち込んでしまうことが理解できなかった。生き物の営みにも少し配慮をして観察していただきたかった。
Posted by
驚愕の内容。 鋭い観察眼、綿密で根気ある観察によって判明する様々な事実。 そして地元の老婆との交流。 この本はサイエンスでもあるし、ヒューマンドラマでもある。 100ページほどの薄い本だが、内容が濃い。 読了50分
Posted by
比叡山麓近くの農家の納屋に巣をかけたあしなが蜂の観察記録。 ワクワクしながら読んだ。 動植物、自然を観察することは、たいへん面白いことだなとあらためて思った。
Posted by
文句なしに星5つ。なんならもっとつけたいくらい。 甲斐信枝さんの絵本は、はでな色づかいの、写真たっぷりの、おしゃれなグラフィックデザインの今どきの動植物の本の中に置くと地味で目立たない。 しかし、内容も絵も素晴らしく、植物や昆虫をこれほどつぶさに観察し、愛情こめて描いた人は本当...
文句なしに星5つ。なんならもっとつけたいくらい。 甲斐信枝さんの絵本は、はでな色づかいの、写真たっぷりの、おしゃれなグラフィックデザインの今どきの動植物の本の中に置くと地味で目立たない。 しかし、内容も絵も素晴らしく、植物や昆虫をこれほどつぶさに観察し、愛情こめて描いた人は本当に少ない。絵で描写された動植物は、写真以上に分かりやすい。 まず、そのことをもっと広く世の中の人々に知ってほしい。 で、久しぶりに出たこれは絵本ではない。 始めに数ページ甲斐さんのスケッチブックからの抜粋はある(この絵を見れば、動植物の画家として一流でありことがわかる。絵だけでも価値がある。)が、本文に挿し絵はない。 あしなが蜂が紋白蝶の幼虫を狩るシーンから始まり、巣を探して農家の納屋にたどり着く。ここで甲斐さんは腰を据えてあしなが蜂の観察を行うことにする。 子どもは読んで、ふーんとしか思わないだろうが、ここがもう凡人ではない。 甲斐さんの住んでいる京都市の中心からこの納屋はバスを乗り継いで片道一時間半かかるところである。田舎だからきっとバスの本数も少ないだろう。ここに毎日のように通い、一日中、時には夜明け前から(この時は納屋の近くの喫茶店に泊まり込み)観察するのである。学者として研究機関に所属しているわけでもなく、画家・絵本作家ではあるが、観察にお金が出るわけではない。誰かから依頼された仕事ではない。ただ、自分が好きだから、観察したいから通っている。すごすぎる。そしてその観察眼の鋭さ、正確さ、対象に対する愛情、全くあきれるほどすごい。 しかしその先の展開はもっとすごい。 仕事で東京にしばらく住むことになり、そこに、巣を(蜂ごと)3つ持って行くのである。それは落っこちそうになっていた、あるいは落っこちたのを甲斐さんがテープなどで梁にくっつけた巣で、甲斐さんがいなければ早晩落ちてしまい、蜂は全滅してしまうからであったが、学者ならそこまでしないし、したとしても持って行くのは研究室である。ところが甲斐さんは六畳一間のアパートで蜂とともに暮らすのである。 一つの巣は途中で女王蜂がいなくなったので、幼虫の面倒を甲斐さんが見る。大きめの幼虫にはお刺身(ここで甲斐さんファンなら『こがねぐも』を思い出す)をこねて、2・3ミリの団子にして与え、小さい幼虫はそれでは食べられないので大きい幼虫が噛んでいるものを取り上げて与える。砂糖水を水滴にして垂らしてやる。 このあたりの幼虫の動きや表情(!)は幼さ、弱さと同時に愛らしさと生命力に溢れていて、それを育てる喜びは人間の赤ん坊や犬猫の子どもを育てるのと変わらない。 一つの巣が出来上がり、蜂がいなくなるまでを慈しみ、支え、見守った甲斐さんという人の偉大さを心の底から感じた。 本当に素晴らしい。昆虫が生理的に耐えられないという人以外は読んでほしい。特に昆虫に興味のある子どもに大人が読んであげてほしい。現代のファーブルである。 甲斐さんは90歳を過ぎ、新しい作品が出るかわからないが、改めて過去の作品も読み返したくなった。 ちなみにこれは40年前のことだったそうで、今もこんなに豊かな農村はあるのか、自然に敬意を払いながら共に生きる人々はいるのかとちょっと心配になった。東京のアパートで蜂を飼うことも、現在だったら苦情が来たり、バレてネットで叩かれたり大変なことになったかもしれない。 『こがねぐも』も、家のすぐ近くにこがねぐもの巣(網)を見つけたのだと思い込んでいたが、もしかしたらこちらも電車やバスを乗り継いで観察しに通っていたのかもしれないと思った。 甲斐さんがお元気なうちに、どんな生い立ちで、どんな風に生きてきたのか、是非聞き取っていてほしい。ドラマや伝記になるくらい面白いと思う。
Posted by
斐信枝さんは、1930年、広島生まれ、ですから御年90歳になられる、その年代には珍しく、植物の画家として生き抜いたかたです。 子ども関係者なら名前は知らなくとも、一度や二度は福音館の彼女の科学絵本を見たことがあるでしょう。 その彼女が40年も前にあしなが蜂の巣をみつけて観察し、母...
斐信枝さんは、1930年、広島生まれ、ですから御年90歳になられる、その年代には珍しく、植物の画家として生き抜いたかたです。 子ども関係者なら名前は知らなくとも、一度や二度は福音館の彼女の科学絵本を見たことがあるでしょう。 その彼女が40年も前にあしなが蜂の巣をみつけて観察し、母蜂がいなくなった巣を引き取って魚の刺し身だんごで幼虫を育てた、ひと夏の記録です。 その冷静な観察ぶり、あしなが蜂を観察してみようという思いつき、そのために一時間半もかけてせっせと通う情熱、豊かな文章は、科学記録者の鏡です。 素晴らしく読みやすく、大人なら一時間もかからないでしょう。 中途半端に時間があいたとき、熱いお茶を一杯淹れて、しばらく山の道具小屋(そこに蜂の団地があった)におでかけください。 ページを閉じたときにはその余韻で、汚れを落とし、しばらく爽快な気持ちで過ごせることと思います。 熱いシャワーを浴びたあとのように……。 2021/09/29 更新
Posted by
『雑草のくらし』で知られる90歳の絵本画家が見つめた、昆虫の宇宙。母蜂不在の巣を持ち帰り、蜂を育てともに過ごした一夏を描く。
Posted by
『あしなが蜂と暮らした夏』の書名が表しているように、あしなが蜂の観察記録というよりも、共に暮らした濃密なひと夏の想い出の記録だ。 甲斐信枝さんの観察者としての確かな眼を通して、あしなが蜂の生態の不思議に目を見張る。 と同時に小さな命へ注がれる愛情溢れる眼差しに感動する。 そ...
『あしなが蜂と暮らした夏』の書名が表しているように、あしなが蜂の観察記録というよりも、共に暮らした濃密なひと夏の想い出の記録だ。 甲斐信枝さんの観察者としての確かな眼を通して、あしなが蜂の生態の不思議に目を見張る。 と同時に小さな命へ注がれる愛情溢れる眼差しに感動する。 そのひと夏をさらに豊かにしたのは、農家のおかあとの出会いだ。 「おかあと納屋のあしなが蜂と、私と、三者の親愛の日々」とある。 おかあのことを「自然の摂理を畏れる人の謙虚さがありました。人間と他の生きものを、同じ生きものの仲間として、同格に扱っている風がありました」と称えているが、 それはそのままご自身のお姿であろう。
Posted by
つぶさに生き物の観察されてきた著者の絵本で育った世代です。 エッセイもまた心に染み入る内容です。 地域の気候風土、人、そしてそこに息づく自然を見つめる優しい著者の生き様が目に浮かびます。
Posted by
「おかあと、納屋のあしなが蜂と、私と、三者の親愛の日々」「自然の摂理を畏れる人の、謙虚がありました。」「おかあは、無意識に人間と他の生きものを、同じ生きものの仲間として、同格に扱っている風がありました。これは恐らく、おかあの知によるものではなく、想によるものと感じられました。」 ...
「おかあと、納屋のあしなが蜂と、私と、三者の親愛の日々」「自然の摂理を畏れる人の、謙虚がありました。」「おかあは、無意識に人間と他の生きものを、同じ生きものの仲間として、同格に扱っている風がありました。これは恐らく、おかあの知によるものではなく、想によるものと感じられました。」 甲斐さんは、おかあについて、こう述べたが、甲斐さん自身もおかあと同じひとなのだ。 わたしも甲斐さんやおかあのように、自然に生きる生きもの同士として、小さな世界を守り、小さな世界から学ぶ人間でありたいと思うのだ。 自然の生き物の残酷さと、人間のそれは、全く次元が異なる。蜂、蟻、人間。この中で一番愚かな社会性をもつ生き物は、間違いなく人間です。多くの外国の若者たちは、人間の愚かさに気づき、自然を守ろうと一致団結して頭の固い大人と闘っている。日本の若者はどうだろうか。現代の若者を育てた日本の社会のあり方は、正しかったのだろうか。若者を批判するのは間違っているのだ。貴方方がみっともないと言う若者は貴方方が創り出したのだから。古きよき日本人は、すでにもう亡くなりつつあるのではないか。日本のために、地球のために、子どもたちには海外の教育からも学び、日本の古きよき教育からも学んだ、質の良い教育を受けさせたいと願う。そして、これからの若い人たちに、希望を託したい。絶望よりも希望を伝える、そんな大人でありたい。
Posted by
観察の記録だが研究書ではないので、難しくなく興味深く読めた。蜂を見守り(手助けすることもある)、地元の人と交流する姿が暖かい。
Posted by
- 1
- 2