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太宰治 単行本にたどる検閲の影 の商品レビュー

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2020/12/21

作家太宰が活躍したのは戦中、内務省による検閲が行われていた時代から、戦後GHQによる検閲が行われている時代に跨がっている。そのため、戦中から戦後に『時代』が切り替わることによって同一作品でも、戦中に出した初版と、戦後に出した再版では内容に改訂が加えられていたり、没後の遺族や編者の...

作家太宰が活躍したのは戦中、内務省による検閲が行われていた時代から、戦後GHQによる検閲が行われている時代に跨がっている。そのため、戦中から戦後に『時代』が切り替わることによって同一作品でも、戦中に出した初版と、戦後に出した再版では内容に改訂が加えられていたり、没後の遺族や編者の校正によってさらに形を変えて…といった様々な経緯を経て、本文のバージョンが何パターンも存在する事となっている。 その結果、書店に出回っている全集や文庫本などは「どれを底本とするか」という選択の結果、現在我々に知られる本文と、それ以外に過去には流通していたが闇へ消えていってしまった知られることのないバージョンの本文とが存在することになる。 ブランゲ文庫や各種文学館が保管している資料を比較することで、検閲を通すために指摘を受けて修正した結果発生する歪み、検閲の指摘をされていないのに作家の意思で直した箇所、それぞれに作家、編集者、検閲側それぞれの思惑が複雑に絡み合っている様が見えてきてとても刺激的で面白い。 そして、一概に「初出版」の形へ戻すことが正解なのか?ということも考えさせられる(修正する際に、検閲ではなく作家の意思で手を加えたところの扱いとかね)一冊です。 主に扱ってるのは戦後のGHQの検閲の話なので、プレス・コードとかに興味のある人にも。

Posted byブクログ