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彼方の友へ の商品レビュー

4.7

39件のお客様レビュー

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2024/09/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

同じコンセプトの小説を間を置かずに2冊読了した。『百年の子』と『彼方の友へ』。どちらも戦前戦後の少年少女雑誌の物語。しかもどちらも女性編集者が活躍する。同じ題材を扱いながらも作者によってテイストが違うから小説は面白い。今回は小説の中で主人公の佐倉ハツと遥かな時を超えて辛くも楽しくもあった時間を共有した。だから自信を持って言える。たとえ何百万分の一の存在であろうと、私も「最上のもの」を贈られた「彼方の友」のひとりだ。

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2024/07/14

先に読んだ「犬がいた季節」の解説に『その年の本屋大賞ノミネート作に「彼方の友へ」が入っていなかったことに途轍もない衝撃を受けた…』と書いてあるのを見て、この本も読んでみたいと思っていた。 こちらもとても面白かった。 昭和初期、父が消息を絶ち母も病気になっては進学も諦め慎ましい生...

先に読んだ「犬がいた季節」の解説に『その年の本屋大賞ノミネート作に「彼方の友へ」が入っていなかったことに途轍もない衝撃を受けた…』と書いてあるのを見て、この本も読んでみたいと思っていた。 こちらもとても面白かった。 昭和初期、父が消息を絶ち母も病気になっては進学も諦め慎ましい生活を余儀なくされていたハツのお話。 知り合いの口利きで憧れの少女雑誌「乙女の友」編集部に職を得たハツが場違いな場所で戸惑いの日々を過ごす序盤を過ぎて、なかなか原稿を仕上げてもらえない作家先生を自転車でさらってきたあたりから面白くなってきた。 そこからは、主筆の有賀に鍛えられながら、周囲の作家や画家からも様々なことを吸収して、ハツが物書きとして頭角を現していく姿が瑞々しく描かれて、とても惹き込まれる。 ハツの親しみやすい人柄はもとより、冷静な主筆の有賀、優しいながら謎めいた画家の純司、いつも一緒にいて支えてくれる編集補佐の史絵里、陰ながら指導してくれる科学小説家の空井、ハツが憧れる女性作家の美蘭など、それぞれに陰影がある人物像が面白みを増す。 “友へ、最上のものを”という思いのもとに描かれる雑誌づくりの話には、ともすれば不要不急と切り捨てられる美や芸術、音楽や文芸の存在の重さを改めて教えられるし、この時代を描けば避けて通れない大戦前夜から敗戦までの禍々しい出来事には反戦の思いを、銃後で協力し合って逞しく生きる女性たちの姿には社会における女性活躍に対する思いを汲み取ることができる。 色々なテーマが折り重なっている物語だが、それらが声高にではなく、お話の中からしっかりと沁みてくるような描き方が好ましい。 後半、有賀が入営するあたりからなんだかメロドラマっぽくなってきたが、そこからあのようなエピローグになろうとは…。戦後の復興の中でそれぞれが歩んだ数奇な運命が、五線譜の暗号とつながるラストがとても良かった。 番外編も、本編であのように逝った空井を偲んで秀逸。

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2024/06/30

すっかり 映画を見ているようなそんな 映像が目に浮かぶような感覚で読んでいました。 読み終わった後も余韻にどっぷり浸かったままで、とても素敵な本に感動しています。 時は 昭和12年から20年 戦前から戦後の激動の時代のお話です。世の中がざわついていて、 不安がある中で 雑誌「乙女...

すっかり 映画を見ているようなそんな 映像が目に浮かぶような感覚で読んでいました。 読み終わった後も余韻にどっぷり浸かったままで、とても素敵な本に感動しています。 時は 昭和12年から20年 戦前から戦後の激動の時代のお話です。世の中がざわついていて、 不安がある中で 雑誌「乙女の友」に憧れていた右も左もわからないハツを 温かく、そしてきびしく 作家としても主筆としても育て た有賀主筆や、仲間達の温かいやりとりが本当に胸が何度もキュンとしたり、じんわりしたり…力強さを感じたり… 身近な人達が 次々に戦争に出征していく中 あとを引き継ぎ、みんなが帰ってくる場所を守っていきたいと 奮闘するハツの姿は、清々しく 勇気をもらえる姿でとても 感動しました。 悲惨な戦争と向き合いながら強く生きる姿は、今の時代人ごとではない気持ちになります。 日々悔いがないように大切に生きなくてはという気持ちになりました。

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2024/06/09

以前さてさてさんの本棚で拝見して、面白そうだなと思ったのだが、これもまた酔っ払いの私がいつの間にか勝手に買っていた( ̄▽ ̄) 老人施設で暮らす佐倉ハツ。 ある日小さな箱が手渡される。 その箱は遠い昔刊行された雑誌の付録だった。 ハツは老人施設でまどろんでいる。 次第に夢の中へ...

以前さてさてさんの本棚で拝見して、面白そうだなと思ったのだが、これもまた酔っ払いの私がいつの間にか勝手に買っていた( ̄▽ ̄) 老人施設で暮らす佐倉ハツ。 ある日小さな箱が手渡される。 その箱は遠い昔刊行された雑誌の付録だった。 ハツは老人施設でまどろんでいる。 次第に夢の中へ引き寄せられ、過去を思い出す。 『乙女の友』という雑誌は、少女時代のハツの憧れであった。中でも有賀憲一郎の詩と、長谷川純司のイラストに魅力され、切り抜きをノートに貼って大切にしていた。 ひょんなことから、その憧れの雑誌社で、しかも有賀主筆の隣で働くことになるハツ。 戦前から戦後までの激動の時代を、雑誌社の仕事を通して成長するハツの姿を描いた長編感動作。 ほんのり恋愛要素もあるのだが、奥ゆかしすぎちゃって、もどかしい。 そして、割と早めに気づいたのだが、長谷川純司は有賀憲一郎が好きらしく、おお、こんなところにも若干のBL要素が(笑) いや、先生方に言わせたらこんなのBLでも何でもないですね(^_^;) 失礼しました。 今日、箱の中ぽちっておきました。 ちょっとずつですが、おびのりさんに近づいていきます(笑) NHKの連続ドラマを見ているような(ほぼ見たことないくせに)清々しい物語だった。 誰にでもおすすめ出来る一冊(*^▽^*)

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2024/05/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ネットでオススメされていて、ずっと読みたかった作品。読み終わった後、登場人物がとにかく愛おしくて、皆が決して幸せになれた訳ではないのに、懸命に繋いだバトンがしっかり受け継がれいたラストには、とても爽やかな気持ちになった。 志半ばで戦地へ旅立った有賀主筆、有賀主筆を愛し、美蘭との間に授かった彼の孫を見守り、その温もりに包まれたままこの世を去った純司、満州で愛息子を残し亡くなった史絵里、心の赴くままに作品を残し命を奪われた空井、空井の人生を照らす太陽のようなソルさん…。 "サクラ・ハツ、マイスウィート・ハート" "Dear Friends, Sincerely Yours" "彼方の友へ、いつまでもお慕いしています" 最後の方で独身だったと書かれていた波津子が、番外編では戦地に行く前に慎と結婚したとあったので、その後戦死したのだろうか…。 あと強いて言えば、仕事を紹介してくれた親戚のおじさんや冒頭に出てくるジェイドはどうなったのか気になった。

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2024/03/11

【少女雑誌の灯す光】 伊吹さんの本を初めて読みました。 時は戦前の昭和。少女雑誌「乙女の友」が大好きで、その主筆とイラスト作家の先生たちにあと蛾れている佐倉波津子ことハツ。あるきっかけで、その主筆のアシスタント、という形で出版社編集部に雇ってもらえることになるのだけれど… 戦争...

【少女雑誌の灯す光】 伊吹さんの本を初めて読みました。 時は戦前の昭和。少女雑誌「乙女の友」が大好きで、その主筆とイラスト作家の先生たちにあと蛾れている佐倉波津子ことハツ。あるきっかけで、その主筆のアシスタント、という形で出版社編集部に雇ってもらえることになるのだけれど… 戦争という緊急事態と価値観の大転換の中でのお話。 いろいろ考えさせられた。 「そんな余裕のない状況なら、書物や雑誌など不要ではないですか」 コロナの緊急事態下に問われたたくさんの文化活動の意味。リアルだった。 出版社や書籍に関わる人々はどう影響され、どのような決断を経ていったのか。 違う時代の話。 たくさんの芸名。 おちゃめでカラフル。 教科書や授業では知りえない、生きている人間を感じられた本。 フィクションなんだけど現実でもある、そんな気がするお話だった。 灯台のような雑誌。「暗がりのなかに光をともす存在」。 状況がどんなに難しくなっても、「彼方の友」―全国の読者―との間に自らが課した約束を守り続けるために下す決断の数々。知りえないけれど。そんなことを考えたり。 女性とキャリア。今も男女のキャリア格差は閉じていない。この議論は今に始まったことでも何でもないことにあらためて気づく。主人公をはじめ、昭和前期にも強く生きる女性たちが生き生きと描かれている。 そしてなにより、この本は、ただ昔を書くのではなく、今老人施設で余生を過ごす主人公ハツが、夢うつつの状態の中、過去を回想している設定。 人の価値観に与える戦争の影響は大きい、ってそのあと読んだ村上春樹さんのエッセイに書いてたけれど、断絶があるぐらい、すごい激動の時代を生きてきた人が、今も生きていて一緒の社会にいるってこと、 凄い貴重だし、普段自分は忘れすぎてる、と思う。 本気で想像しないと想像できないことなのだと思う。

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2024/02/25

出征が決まった時、好きな人に想いを伝えるか?伝えないか?  幼馴染の慎ちゃん、自転車で2人乗りをしたあの少年部員、有賀主筆、、、 みな、とても苦しい。戦争なんて絶対してはいけない。この時代でなかったら違う人生を送れただろうに…

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2024/01/28

映画を見たような読後感でした。 こんなふうに戦中戦後の日本を支えてくれた形になるものたちがいることに感謝します。勇気を与えてくれる一冊です。

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2023/12/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

乙女の友。その一冊に携わった多くの人が戦禍に巻き込まれながらも、彼方の友へと日々の美しさや楽しさを届けるために奮闘する物語。ハツコが幼くして夢破れた後、ほんの働き口として訪れた出版社。しかし、有賀主筆をはじめとした個性豊かな面々に支えられて、作家そして主筆へと成長する。 美しくて、面白くて、楽しいものを届けるという情熱がたまらない。様々な作家先生と編集部員が織りなすてんやわんやの日常の中で、少しずつ成長する主人公に胸が熱くなる。次第に戦争が影を落とす中で、有賀とハツコが離れ離れになった時、そして時を超えてまた通じ合えた時、人の想いや情熱は簡単には途絶えることはないと思えて感動した。 ちなみに私の推しキャラは史絵里さん。最後の満洲引き上げのエピソードでもまた泣いた。 霧島美蘭のかなしい人シーンも名場面。

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2023/11/06

昭和12年〜20年の戦争真っ只中でのお話。当時の状況を出版社の目線で見るというのは新鮮でした。主人公の波津子は謙虚でひたむきに生きていて、応援したくなるような気持ちになります。また、物語のいろんな場面で胸にグッとくるシーンが描かれていて、波津子や他の登場人物の言動に心掴まされます...

昭和12年〜20年の戦争真っ只中でのお話。当時の状況を出版社の目線で見るというのは新鮮でした。主人公の波津子は謙虚でひたむきに生きていて、応援したくなるような気持ちになります。また、物語のいろんな場面で胸にグッとくるシーンが描かれていて、波津子や他の登場人物の言動に心掴まされます。戦争を生きた人たちの心の暖かさを感じました。

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