MORE from LESS の商品レビュー
本書は「機械との競争」「セカンド・マシン・エイジ」などの著者として有名なMITのアンドリュー・マカフィー氏による最新の本です。一貫して読みやすく、データも豊富に提示されているのであっと言う間に読めました。本書の主張したいことは明白です。資本主義とテクノロジー進化は、(少なくともア...
本書は「機械との競争」「セカンド・マシン・エイジ」などの著者として有名なMITのアンドリュー・マカフィー氏による最新の本です。一貫して読みやすく、データも豊富に提示されているのであっと言う間に読めました。本書の主張したいことは明白です。資本主義とテクノロジー進化は、(少なくともアメリカにおいては)脱物質化を進めている。ここでの脱物質化とは、資源消費量を少なくしながら経済成長をしているという意味です。しかし資本主義とテクノロジー進化だけでは、公害などの外部不経済に対処できない。そこで必要になるのが「反応する政府」「市民の自覚」。これによって公害がいろいろな意味で高くつきますので、企業は外部不経済の削減にも取り組むということです。マカフィーは、「資本主義」「テクノロジーの進歩」「反応する政府」「市民の自覚」を希望の4騎士と名付けています(これは明らかにスコット・ギャロウェイの『The Four GAFA:四騎士が創り変えた世界』を意識していると思います)。 本書ではアメリカについてかなり詳細なデータ分析をしていることから、少なくともアメリカでは著者が主張するような「モア・フロム・レス(少ないインプットでより多くのアウトプットを生み出している)」が達成できていることは間違いないと思うのですが、果たしてこれは地球全体としても言えるのでしょうか。本書の最後までこの疑問は消えませんでした。つまりどういうことかというと、グローバリゼーションの進展で、資源をたくさん使う製造過程がアメリカなどの先進国から、中国やメキシコ、東南アジアなどに移転されていることがこの背景にあるのでは、という疑問です。アメリカやイギリスは経済のサービス化が進みました。つまり経済に占める情報通信や金融、サービス業の比率が高まりましたが、裏を返せば、資源を消費し公害も生み出しやすい製造過程を新興国に押し付けている、という見方もできるわけです。いいかえれば、欧米先進国の脱物質化は、新興国のより一層の物質化(資源消費)のコインの裏側でしかないのでは、と感じるわけです。 ただ、たしかにデジタル技術は色々な意味で資源消費を抑制する方向にある気もします。無駄をなくす、最適化する、また本書にもありますように、以前は複数の家電製品を購入しないとできなかったことが、いまはスマートフォン1台でできてしまいます。またこれまではハードウェアが担っていた機能が、ソフトウェアで担えるようになっている面も多々あります。ですので、本書はデジタル革命が「モア・フロム・レス」に寄与すること、それはアメリカだけでなく世界の工場としての中国や他の新興国でも、その傾向が見え始めている、といった感じで分析をしてもらえると、きわめて説得力があったのに、と感じました。
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経済成長するにつれて資源の消費量が増えていき、やがて使い果たしてしまうという言説の間違いを指摘して、明るい未来と何をすべきかを提言する。 「希望の四騎士」として挙げられていた、資本主義、テクノロジー、政府の行動、市民の声によって、消費する資源を減らしつつ経済成長していく、という...
経済成長するにつれて資源の消費量が増えていき、やがて使い果たしてしまうという言説の間違いを指摘して、明るい未来と何をすべきかを提言する。 「希望の四騎士」として挙げられていた、資本主義、テクノロジー、政府の行動、市民の声によって、消費する資源を減らしつつ経済成長していく、というの理論は面白かった。 例えば、資源量が減るほど価格が上がるので、使用量を削減するインセンティブがはたらくというのは、「後40年で石油が枯渇する」論では抜け落ちてた概念だと思う。 四騎士すべてが噛み合った自動車業界と、すべてが裏目に出たソ連によるクジラの絶滅も腑に落ちた。 「世界は良くなっている」という明るい未来の提示は、ファクトフルネスに近いものを感じ、アクセルを踏み続ける必要性には納得。 遺伝子組み換え、核エネルギーの活用も、証拠と数字に基づけば推し進めてもいいのかもしれない、と思わされた。
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マルサス 人口論 1798年 マーシャル 人間の欲求と欲望は数限りなくある。 もっと良質、より多くの選択肢、全く新しい要求を満たしてくれるものを求める。 脱物質化 ~より少ないものから、より多くのものを アメリカでの原材料の消費はピークを過ぎた。経済成長は続いているにも。 リサイクルは経済的だがインプット、アウトプットの脱物質化とは無関係。 大地に帰る生活はエネルギー効率が下がり環境に良くない。 ①テクノロジーの進歩 スリム化 アルミ缶軽量化 置換 水圧破砕法による天然ガス汲み上げ 最適化 航空会社の空席削減、列車稼働率向上 消滅 iPhoneに機能統合 コンピュータ活用 目的達成のためにテクノロジーの組合せが可能になった。 ②資本主義 利潤追求 自由参入と競争 財産権と契約履行義務 非中央集権的な仕組み 私的所有 自発的交換 ✖ 利己的/道徳は通用しない/不平等 希望の四騎士 ①テクノロジーの進歩 ②資本主義 ③市民の自覚 ④反応する政府 賢者=皆が希望に満ちているなかでひとり絶望する人 2016年 世界人口よりスマホ契約数のほうが多い 2017年 15億台の販売 世界の公園や保護区:1985年 4% →2015年 15.4% 貧困人口 :1999年 17.6億人 →2015年 7.5億人 安全な飲み水 :1990年 世界人口の75% →2015年 90% 中等教育就学率 :1986年 50%未満 →2015年 75%以上 平均余命 :1800年 28.5歳 →1950年+20年 →2015年+25年 都市にはサービス業が集中 84%が都市住人 欧州委員会 2015年 衛星画像調査 売り上げ利益の集中 勝者総取り グローバル化と新しいテクノロジー 2016年 アメリカの株式市場の富の84%が全世帯上位10%に集中 ④社会関係資本 Social Capital の衰退 ・・・答えがない 人として温かいつながりがなくなっている 絶望死 アメリカ 2016年 19.7万人 ≒ 死亡者の8% 多様性の増加=多元主義 ⇔ 権威主義 権威への不信、価値観の衝突、コンセンサス欠如、アイデンティティ崩壊 アメリカの20%の郡は マイナス成長(2010~2017年) ヨーロッパは工業化より前から町が存在、 アメリカは工業化を支えた文化、構造が消える エレファントカーブ 2008年 裕福国の先端は伸びているが、中流層はこの20年で所得が伸びていない ③人的資本 アイデアを生み出す力 デジタルツールが増やす 経済活動の再拡散 10年後 地球へのフットプリント(天然資源、温室効果ガス)は縮小する。 ノードハウス 税収中立型炭素税 税収が直接市民へいく 原子力の正当な評価を受けていない ブランドを守るための協調 炭素クレジットの購入
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著者は、マサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院主席リサーチサイエンティスト。デジタル技術が世界をどう変えるかを研究している。 資本主義への信頼が揺らいでいる中で、資本主義とテクノロジーの発展が世界を豊かにしている事実と理由を解き明かしてくれる。ただし市場だけでは対処できない...
著者は、マサチューセッツ工科大学のスローン経営大学院主席リサーチサイエンティスト。デジタル技術が世界をどう変えるかを研究している。 資本主義への信頼が揺らいでいる中で、資本主義とテクノロジーの発展が世界を豊かにしている事実と理由を解き明かしてくれる。ただし市場だけでは対処できない問題も多く、市民の意識と反応する政府が必要であると説明する。一方でテクノロジー企業の寡占と、中流の没落、社会の分断といった、現代社会が抱える問題も浮き彫りにしている。 <要約> これまでの常識を覆すMore from Lessというパターンが出てきた。少量の物質や材料、エネルギーで、より多くの製品や食料を生み出すことができるようになったのだ。つまり脱物質化が起きている。 米国ではGDPは右肩上がりに成長している反面、金属などの材料の消費量は1970年代でピークを迎え、その後は減少している。農作物の収穫量も年々増加しているが、肥料、灌漑の水、作付面積はピークを過ぎて減少している。経済成長に比べてエネルギー消費量も鈍化している。 このMore from Lessのパターンは「テクノロジーの発展」と「資本主義」がもたらした。近年のコンピューターを中心とした技術発展により、より少ない物質から多くの製品を生み出すことが可能になった。また企業にとって原材料費はコストであるため、利益追求のためにそれらを削減する努力を惜しまない。 イノベーターにより技術が生みだされ、起業家と投資家により革新的な企業へと成長を遂げる。既存の技術は特許により守られるため、他の企業は新たな技術を開発しなければならない。資本主義の中で企業や製品は常に競争に晒されるため、テクノロジーは絶え間なく発展していく。資本主義とテクノロジーがMore from Lessを加速させるのである。 ただし資本主義とテクノロジーだけでは解決できない問題がある。それは公害と動植物の絶滅など環境問題への対応だ。市場は多くの重要な事柄について対処できるが、負の外部性については適切に対処できない。 市場では売り手と買い手、取引に直接関係するものに便益を提供する。しかし第三者への負の影響にはうまく対処できない。例えばある商品を生産する工場の周辺で重大な汚染が発生しているとする。売り手と買い手には直接の被害は発生しないが、近隣住民といった外部には被害が発生している。このように公害や動植物の絶滅など環境破壊へ対処するためには、テクノロジーの発展と資本主義だけでは不十分で、これら2つを適切にコントロールするための「市民の意識」とそれに「対応する政府」が必要である。 「テクノロジーの発展」「資本主義」「市民の意識」「反応する政府」。これらの4つを「希望の四銃士」と呼び、これらがバランスよく適切に機能することが、豊かな未来を創る。More from Lessのような脱物質化と同時に世界の貧困も減っており、世界は豊かになっている。 しかし、ここ二十年で貧困層と富裕層が実質所得を大幅に伸ばしている中で、先進国の中流層だけは所得があまり伸びていない。中流層が没落しているのである。 これは産業が工業からサービス業へシフトする中で、多くの工場労働者や未熟練労働者が職を失ったためである。一方で破壊的なテクノロジーを持つ企業は、勝者総獲りの寡占状態で、勝者と敗者の二極化が起きている。また、工場や企業、職場を失った地域は衰退し、経済活動を通して生まれていた人と人のつながり(社会関係資本)も希薄化している。 「テクノロジーの発展」と「資本主義」は、中流層の没落、市場の寡占、社会の分断といった新たな問題を引き起こした。「市民の意識」と「反応する政府」は、これらの問題にも対処していかなければならない。
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科学技術の発達の恩恵で、経済活動が活発になってもそれに比例して地球資源を食い潰していく訳ではなく、むしろピークは過ぎて効率化が進んでいる…ふむふむ。でも「希望の四騎士」なんてダッサイのが出た辺りから、既視感続きでつまんなくなったー。 ところで、「勝者総取り」方式って、経済用語な...
科学技術の発達の恩恵で、経済活動が活発になってもそれに比例して地球資源を食い潰していく訳ではなく、むしろピークは過ぎて効率化が進んでいる…ふむふむ。でも「希望の四騎士」なんてダッサイのが出た辺りから、既視感続きでつまんなくなったー。 ところで、「勝者総取り」方式って、経済用語なんですか?選挙方式だと思ってたんですけど。
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人新世の資本論と前後してチェックしたような気がする。 アースデイで提唱されたCRIB戦略は不発。その中の「大地に帰れ」運動は大地に負担だったそうだ。 ではなぜ脱物質化が進んでいるのか。 レアアースはレアではなくて、鉱石から取り出すときの負荷への責任を負いたくないから中国ばかりが掘...
人新世の資本論と前後してチェックしたような気がする。 アースデイで提唱されたCRIB戦略は不発。その中の「大地に帰れ」運動は大地に負担だったそうだ。 ではなぜ脱物質化が進んでいるのか。 レアアースはレアではなくて、鉱石から取り出すときの負荷への責任を負いたくないから中国ばかりが掘っている、んだって。 レアアースが絞られればレアアースを使わない技術が生まれる。 そうするとレアではなくなる。 金にしても銀にしても、『成長の限界』の予測を遥かに超えて十分埋蔵されている。
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