世界の「住所」の物語 の商品レビュー
「『住所』が無いと何が起こるのか」 手に取った本のテーマが普段じっくり考えないものだと、大抵面白くないと感じて終わる。(※あくまで個人の見解です) 本書を高評価したいと思ったのは、上記のテーマが(邦訳のタイトルを裏切らず)物語形式に進行されていたから。それも面白く味付けされて。 ...
「『住所』が無いと何が起こるのか」 手に取った本のテーマが普段じっくり考えないものだと、大抵面白くないと感じて終わる。(※あくまで個人の見解です) 本書を高評価したいと思ったのは、上記のテーマが(邦訳のタイトルを裏切らず)物語形式に進行されていたから。それも面白く味付けされて。 著者(作家。米ノースカロライナ州出身、ロンドン在住)が調査した世界各地の「住所」にまつわるストーリーが集結。「住所」という概念はどのようにして誕生したのか、また、人は住所に何を求めているのかが綿密に記されている。 次の行でいきなり別の人物紹介に突入したりと、人によっては戸惑うノリかもしれないが、個人的には逆にノリノリで読めた気がする。(うまく表現できないけど、相手の話が突然変わっても面白いから「うん、何なに?」と許せちゃう感じ笑) 全体的に「通り/ストリート」の命名をめぐる話が目立っていた。どんな名称にするかでその場所の印象や歴史的意義が変わってきたりする。 イギリスでは「〇〇ストリート」という住所にある物件の平均価格は「〇〇レーン(lane)」の住所の物件の平均価格の半額以下なんだとか。専門家曰く「ストリートチルドレン」など、「ストリート」から良からぬ響きを連想してしまうらしい。なかなかに面白い一例だったし、ふと『メリー・ポピンズ』のバンクス家を思い出した。中流家庭にあたる彼らの住所は、「桜通り」(Cherry Tree Lane)である。 東京の章もわが国のことながら新鮮だったなー。 東京では通りに名前をつけるのではなく、区画に番号をつけている。通りは区画と区画の間にある空間でしかない。ストリート名について国単位で揉める理由がいまいちイメージできなかったのはこのためか、とここで判明した。 区画を重んじる秘密を「西洋人と日本人の(文字の)書き方の違い」に見出した専門家も笑けるくらいに鋭い笑 文字を練習する際西洋人は線の上であるのに対し、日本人はマス目の中に文字を書いていく。都市デザインにおいても西洋人は線(通り)を、日本人はマス目(区画)で見るようになっていったのではないか? 日本人の、(何事においても)全体を見渡すのが苦手な特質も、まさかここから来ているのか…?! 「住所は人々を貧困から救うもっとも安価な手段のひとつ」 「誰もが顔見知りだから住所は必要ない」というウエストヴァージニアの住人の証言には唖然としたが、世界にはリアルに住所がなくそれを必要としている人々がいる。 郵便物の発送から徴税、警察にとっては逮捕するにあたっての手がかりにもなる住所。しかし彼らにとって住所を持つことは、それ以上の意味合いがある。銀行口座を開設するため、スラム街から抜け出すため、仕事を得るため、アイデンティティの一つにだってなる。 「自分が誰でもない人間ではなく、素性のたしかな人間であることを社会に示すためのツール」という言葉が、このテーマについて気にも留めてこなかった自分を揺るがした。
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おもしろそうな部分だけ読んで終わってしまったが、世界には今も住所がない地域があるということ、住所の由来、住所がどうやって決められてきたかなどについて、各国の歴史的背景や政治的戦略、民族性、宗教などいろんな要素から考察されていて興味深かった。
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住所について考えたことがなかったが、住所の歴史から、ある場合とない場合のメリット、住所がもたらす議論について多様な国や社会の観点から触れていて、とても面白かったです。
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ネパールやインド、バングラデシュを旅すると薄々気が付くけれど、世界の多くの場所が住所を持っていないのだという。意外なことに世界一豊かな国であるアメリカにも住所がない居住地は結構あるらしい。
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「世界の『住所』の物語」http://harashobo.co.jp/book/b525648.html すばらしい。住所をキーワードに、アイデンティティ形成、コミュニティの意義、疫病封鎖、統計学、プロパガンダ、宗教戦争、地図の概念、福祉向上などなど。世界各都市でみるといわゆる住...
「世界の『住所』の物語」http://harashobo.co.jp/book/b525648.html すばらしい。住所をキーワードに、アイデンティティ形成、コミュニティの意義、疫病封鎖、統計学、プロパガンダ、宗教戦争、地図の概念、福祉向上などなど。世界各都市でみるといわゆる住所が整備されている地域のほうが少ないというのが学び(おわり
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住所がわかるということは、国から徴税されたり、存在を明らかにされることである。メールで連絡するのに、なぜ住所欄があるのか? 凝ってかわいいフォント、装丁など、これぞ紙の本という感じ。久々に紙でしか味わえないいい本だった。とてもいい本。「モンテレッジオ」に続くいい本だった。
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最近、渋谷でホームレス女性が近隣に住む男性に殴り殺された事件があった。記事では、所持品の中に親類の連絡先などがびっしり書かれた紙があり、人や社会とつながっていたいという思いが感じられたとある。 https://news.yahoo.co.jp/articles/1ba73271c...
最近、渋谷でホームレス女性が近隣に住む男性に殴り殺された事件があった。記事では、所持品の中に親類の連絡先などがびっしり書かれた紙があり、人や社会とつながっていたいという思いが感じられたとある。 https://news.yahoo.co.jp/articles/1ba73271cbd2157e96446f8e7860449ee3c511ce 本書の最初と最後に、住所はアイデンティティであり、「住所を持つと、そこに住む人々は社会の一員になれた気がして自信を持てる」と書かれている。上記の事件を振り返り、本当にそうであると実感した。 上記の女性が生活保護等の助けを求められなかったことの一因(ほんの小さな要因かもしれない)として「住所がないことを認めなければいけない」ということがあったかもしれない。 私が無知のため日本ではわからないが、外国では住所(住居)をもつために生活保護が必要だが、生活保護を申請するために住所が必要という国もあるとのこと。こういう矛盾は私を含めた周りの人が声を上げていかなければいけない。 その他の内容では、やはりというか、人種差別に紐付くことがらが多かった。住所というか、欧米では通りの名称を決めるのはなかなか難しい。韓国のようにあまり主張の強くない名称では土地と結びつかず、一方で人名にすると住民全員が賛同することは難しく反発が出る。旧東ドイツや英国の例は読んでいてなかなか辛い。 米国では住所もお金で買える、というお国柄が出ているのが興味深かった。それによる弊害は一読に値する。 スラム街に住所を割り当てる活動と、それを支える技術の話が出てくる。それはそれで素晴らしいが、そのあとに生じるであろう地域社会や隣人との連続性をどうするかという問題を考えさせられた。
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そういえばたしかに外国の所在地って 「通り」からついてる感じ。 「ベーカー街」って訳すけどBaker Street ざっと各国の住所の歴史を知りました。 だいたい最初は支配階級の情報収集的な…。 アメリカとかでもザックリした宛名しかない 土地があると知って驚いたわ! 救急とかが...
そういえばたしかに外国の所在地って 「通り」からついてる感じ。 「ベーカー街」って訳すけどBaker Street ざっと各国の住所の歴史を知りました。 だいたい最初は支配階級の情報収集的な…。 アメリカとかでもザックリした宛名しかない 土地があると知って驚いたわ! 救急とかが困るのでシステム的につけようとして 拒まれたりするとか。 いろんな経緯があっておもしろいな。 日本についても少し書かれていて 「通り」という線じゃなくて 「丁」のようなブロックで住所をつけてる というポイントが挙げられてました。
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