たとえ天が墜ちようとも の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
前作は教養小説の色合いが強く、未熟な登場人物にじれったさを感じ、情緒的なトーンに今ひとつ乗り切れなかったが、今回は大人の話で格段に面白い。 突然妻を失った夫の悲しみに満ちた回想シーンは胸を打つ。 刑事弁護士としての経験が生きる法廷の場面は、一気読み。 タイトルが示す「正義」への強い意志が根底にあるので、悪意に満ちた世の中に惓んだこころに心地よかった。
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高級住宅街で女性が殺害された。刑事マックスは、被害者の夫の刑事弁護士プルイットに疑いをかける。プルイットは元弁護士で大学教授のボーディに潔白を証明してくれと依頼した。ボーディは引き受けるが、それは命の恩人である親友のマックスと敵対することを意味していた。たとえ友情を失おうとも、正...
高級住宅街で女性が殺害された。刑事マックスは、被害者の夫の刑事弁護士プルイットに疑いをかける。プルイットは元弁護士で大学教授のボーディに潔白を証明してくれと依頼した。ボーディは引き受けるが、それは命の恩人である親友のマックスと敵対することを意味していた。たとえ友情を失おうとも、正義を為すべく対決するふたり。予想外の展開となる白熱の陪審裁判の行方は。 前作もよい印象があったが、今回はさらに上を行く仕上がり。リーガル・ミステリはやっぱりこうでなくては。
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刑事のマックスと弁護士のプルイット。親友の二人が裁判で闘うことに。お互いの正義がぶつかり合ってそこには友情を壊しかねないものがある。その迷いと決意とに揺れながら進む。前作でも思ったけれどとても濃密な人物たちの描写があってどんどん深く入り込んでいってしまう。二転三転する裁判と親友二...
刑事のマックスと弁護士のプルイット。親友の二人が裁判で闘うことに。お互いの正義がぶつかり合ってそこには友情を壊しかねないものがある。その迷いと決意とに揺れながら進む。前作でも思ったけれどとても濃密な人物たちの描写があってどんどん深く入り込んでいってしまう。二転三転する裁判と親友二人の行方と最後まで気が抜けない面白さ。ラストも余韻がたっぷり残る。
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この物語は、いっそ秋の夜長に読むべきだ。 冒頭から切々と胸に沁む。 涙流るる一夜になるだろう。 主人公は二人。 マックス・ルパート、ミネアポリス市警刑事。 ボーディ・サンデン、ロースクール教授にして弁護士。 親友同士である彼らが、ひとつの事件に、真っ向から挑むのである。 事...
この物語は、いっそ秋の夜長に読むべきだ。 冒頭から切々と胸に沁む。 涙流るる一夜になるだろう。 主人公は二人。 マックス・ルパート、ミネアポリス市警刑事。 ボーディ・サンデン、ロースクール教授にして弁護士。 親友同士である彼らが、ひとつの事件に、真っ向から挑むのである。 事件のはじめから、マックスは追い込まれている。 その様にと胸をつかれて、読み進むのが辛いこともしばしばだ。 ボーディにしても、事件に取りかかる前、取りかかってからと、胸に迫るものがある。 秋の夜長に目頭を抑えて、さて、夜半を過ぎた頃だろうか。 あなたは涙に濡れる暇がなくなる。 そして気づく。 これまでの涙が、すべて法廷に現れるのだと。 それは強みになり、動機になり、相手を追い詰める理由となる。 あるいは弱みになり、もろさとなり、怒り、絶望を生む。 法廷の緊張感、法廷に赴く者の心の機微が生々しく描かれる。 それもそのはず、作者アレン・エスケンスは、刑事弁護士として25年もの間活躍してきたのだ。 なるほど、法廷戦術が細やかに書かれるわけである。 そして、たとえばこの場の「異議あり」の意味、発言や提案の理由が、わかりやすく簡潔に説かれる。 これがうまい。 さらには、 『たとえ天が墜ちようとも』 この題の意味が明かされた時、その重みも増すのだ。 著者の作品は2020年現在6作あるのだが、翻訳されたのはこれが2冊目である。 翻訳1冊目は、デビュー作の『償いの雪が降る』である。 著者自身はこれらをシリーズものと捉えていないらしいが、『償いの雪が降る』を読んだ人には、本作に、「あなたはあの時の!」という驚きがあるだろう。 どちらから読んでも障りはない。 ただ、一方を読んだ人は、もう一方も読みたくなるだけだ。 どちらも間違いなく名作である。
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