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言語の七番目の機能 の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2020/11/26

『「あなたたちフランス人はほんとに議論好きだから…」(You French people are so dialectical...)』―『第四部 ヴェネツィア』 もし記号論に興味があって、ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」や「フーコーの振り子」や「プラハの墓地」は好きだけれど...

『「あなたたちフランス人はほんとに議論好きだから…」(You French people are so dialectical...)』―『第四部 ヴェネツィア』 もし記号論に興味があって、ウンベルト・エーコの「薔薇の名前」や「フーコーの振り子」や「プラハの墓地」は好きだけれど、ダン・ブラウンの「ダ・ヴィンチ・コード」はちょっとなあと思っていて、本棚にアラン・ソーカルとジャン・ブリクモンの「「知」の欺瞞」やスラヴォイ・ジジェクの「ラカンはこう読め!」があるなら、この本もきっと面白いと思うに違いない。何しろこの本は、実在の著名人たちを登場させてその相互関係を炙り出しつつ行われる痛烈な社会風刺であり、実際に起きた事故や事件に基づく幾つかの死を織り交ぜながら言語の七番目の機能という謎を巡る推理小説。冴えないパリ第8大学文化コミュニケーション学部の一講師が、BBC「Sherlock」のベネディクト・カンバーバッチのような洞察力を発揮しながら、ロラン・バルトの死に真に責任を持つ者を追いかけるという話なのだ。 鍵となる「言語の第七番目の機能」とは何を指すのかについては、もう一人の主人公であるフランス内務省情報局の一警視と件の大学講師の対話の中で説明が為されるのでロマン・ヤコブソンが何者であるかを知らなくとも構わない。だが、フランスの歴史(特に戦後)、文化、社会が背景として色濃く文脈に滲出して来るので、主要な人物の政治的立ち位置などを知らないと著者ローラン・ビネが何を当て擦りたいのかがよく判らなくなる。訳者あとがきにもあるように、この本は記号に溢れた本であるので、例えば「ミシェル・フーコー(=認識論の大家)」というような受験勉強的知識だけではなく「同性愛者、薬物常用者、共産党に入党するも後に離脱、但しルイ・アルチェセールとの親交は維持」などということも知ると、登場人物たちの相関図の見通しが利き易い。特に、フランスにおける左派と中道右派の対立、構造主義とポスト構造主義の対立などが一人ひとりの著名人の名前に結びつくと俄然面白さが倍増する。 『人生は小説ではない。少なくとも、あなたはそうであってほしいと思っているだろう』―『第一部 パリ』 そういう虚実ないまぜの小説の面白さとは別に、やはりこの本には言語の機能、記号論的な面白さが溢れているように思う。特に対話形式となっている文章には、構図によって読み手の側に作用するよう仕掛けられた記号が数多くあるように思う。そして、パリ、ヴェネチア、イサカなどの土地や登場する建物に込められた仕掛けなど。そこでいちいち立ち止まらずに読んでももちろん面白いが、「矢印」を意識して読むと本書は更に興味深いものとなるだろう(なのでネット環境のあるところで読むことをお勧めします)。また、ウンベルト・エーコがしばしば「劇中劇」ならぬ「物語中物語」の構図で、登場人物たちに対する作家(≒読者)のメタレベルの視点を無意識の内にずらすように操作しているのとは逆に、ローラン・ビネはしばしば作家として読者に話しかけることによって読者の視線をコントロールする。その物語の次元を逸脱する行為は徐々に登場人物にも波及し、主人公は自分が小説の中の登場人物であることを疑い始めるのだ。その時、この構図は読者を神の視点から引きずり下ろし、登場人物の視線を思わず避けたくなるような心理を生み出す。物語の中の言葉を借りるなら、「メタディスクール(言説についての言説)」の作用線の方向をひっくり返したような働き。それについて語っていた筈の言葉によって、語っていた者が作用を受ける。但し、それを「読む」時には「語っていた側」は必然的に「読む側」に置換される。このような一つ下位の次元から上位のメタレベルへの侵入という構図はミヒャエル・エンデの「はてしない物語」でも使われていたけれど、「物語の中の物語上の登場人物」→「物語の登場人物」というフィクショナルな関係を越えて、「作家」→「登場人物」→「読者」というリアルな関係になっているところが記号論的な働きを意識させるようで面白い。あるいはこれは言語の「呪術的機能」なのか、などと考えて見たりする。 言語の第七番目の機能について、物語の中でエーコが「魔術的機能」『ある発話が世界についての何かを明示するだけに留まらず、実現するかしないかはともかく、その発話を通じて、なんらかの行動を誘発しようとする』と語るところは意味深だ。単純に捉えるなら日本語の「言霊」という考え方に通じるものと片付けるところだが、ローラン・ビネがこの本を通して何かを誘発しようとしているのだとしたら、と深読みしてみても面白いのかも知れない。例えば、二人組の日本人のメタファーは現実の世界の何を譬えていて、どんな働きをすることを期待されているのか、とか。

Posted byブクログ

2020/11/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

※私には難しすぎたので再読予定です。 大学講師のシモン・エルゾグは、哲学者、記号学者の ロラン・バルトの交通事故死の解明のため 警視ジャック・バイヤールに無理やり駆り出される。 実際に起こった事件を元に実在の人物が 様々な事件を引き起こしていく。 学者には疎いのですがかなりめちゃくちゃな 書かれ方をしていて心配していたら、後書きでも 他の方の感想でも心配されていて笑ってしまいました。 言語の七番目の機能を得ることができたら 世界は良くなるかな?いや悪用されるだけでしょうね。 2020年11月16日再読 メモを取り、未知の人物名は検索しながら 読みました。 バルトが持っていた文書の行方、ロゴスクラブ でのバトル、政治家たちの言動。 実在人物をこんなに書いちゃっていいのかと やっぱり思うけど面白い~。 第1章のパリをしっかり読み込めばあとは なんとか押さえ込む感じで読んでいけました。 シモンは七番目の機能を独力で手にすることが できたのかどうか...。 筋をしっかり把握しながら読むと、ブルガリア人と 日本人が不気味。特にシモンを助けてくれる日本人は 結局なんだったのでしょうね。 本書を読んで実在人物をこれほどに書いても 誰も訴えない、というところがとてもフランス的 だと思いました。今、国内で、表現の自由で 揺れているのも頷けます。 ※ ヤコブソンの言語の6つの機能 指示、感情表出、働きかけ、話しかけ メタ言語的、詩的 ちょっとネタバレ的なので 下に書きます。 7つ目とされる機能 魔術的もしくは呪術的機能

Posted byブクログ

2020/11/07

読むのに時間がかかった。軽やかにミステリーを楽しむという感じではなかった。出てくる登場人物について、この人どういう人だっけ?みたいなことをいちいち思い出したり調べたり。そんなことしなくても小説の中である程度説明してあるのだけれど。

Posted byブクログ

2020/10/16

Amazonはアメリカまで送れないって。なんでだろう? 英語で読むしかないのかな。今日、Amazonで注文できました。万歳。 読了。ま、なんということ! 哲学、記号学、言語学の有名どころがわんさか出てきて、訴えられないのかなあ、というレベルのことをやって、、、。本筋は推理小説、な...

Amazonはアメリカまで送れないって。なんでだろう? 英語で読むしかないのかな。今日、Amazonで注文できました。万歳。 読了。ま、なんということ! 哲学、記号学、言語学の有名どころがわんさか出てきて、訴えられないのかなあ、というレベルのことをやって、、、。本筋は推理小説、なんだろうね。面白かったよ。

Posted byブクログ