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インド倶楽部の謎 の商品レビュー

3.5

22件のお客様レビュー

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2020/09/23
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

その人でしかありえない犯人が、意表を突く動機ごと、論理的に提示される、生真面目なフーダニット。その論理は美しいし、ケレンを求めるのは筋違いだとわかっちゃいるが、それでもひたすら続く、地味な捜査の描写は、流石に少しシェイプしたい。

Posted byブクログ

2020/09/22

『謎を解くのは先生で、あんたが物語を完成させるんかな。それがコンビを組んでる理由や』 作中の容疑者が、火村・アリスコンビを評した言葉ですが、なるほどなあ、と思いました。何とも奇っ怪な事件に対し、今回も火村とアリスコンビはそれぞれの視点から、事件と物語にケリをつけます。 前世の記...

『謎を解くのは先生で、あんたが物語を完成させるんかな。それがコンビを組んでる理由や』 作中の容疑者が、火村・アリスコンビを評した言葉ですが、なるほどなあ、と思いました。何とも奇っ怪な事件に対し、今回も火村とアリスコンビはそれぞれの視点から、事件と物語にケリをつけます。 前世の記憶を共有するという人たちが集まり、開かれた占いの集い。その集いに参加していた二人が殺害され、さらに被害者の一人が予言された死の日付と、死亡推定時刻も近いことが分かる。事件の管轄である兵庫県警は、火村とアリスのコンビにも協力を要請する。 話の構成はやっぱり巧い。占いに隠された思惑と、被害者の生前の不審な動き。そこから過去へ過去へと事件を遡っていくと、たどり着くのは小さな旅館での土砂崩れ事故。少しずつ材料がそろい、事件のピースが見えてくるのが心地良い。 今回は野上刑事の活躍も印象的。火村とアリスは各警察から頼りにされていますが、野上刑事だけは、素人が事件に首をつっこむことを、心よく思っていない様子を隠そうとしません。 読んでいるイメージからすると、いわゆる昔ながらの刑事というか、足と勘で事件に迫る、頑固な印象が強い。そんな野上刑事が捜査を進め、片道8時間の山奥の旅館までの強行軍を厭わず向かう。その最中で野上刑事の家族や心情も垣間見えて、彼がより身近に感じられました。 前世であったり予言であったり、胡散臭い話が多く事件の真相も特殊ですが、一方でアリスが終盤にふと思い浮かべる、前世と来世に対する啓示が印象的。 『前世とは昨日のこと』 アリスは火村の過去に関して、思いをめぐらすのだけど、読者であった自分の心にも気持ちよく迫ってくるものでした。過去の失敗や後悔、苦い記憶を前世のこととして切り離す事ができたなら……。 作中で色々と不思議で、奇怪な前世論が出てくるので、アリスのセンチで優しい前世の啓示は、その対照としてよりストンと落ちてきます。 そしてこのアリスの啓示と同じようなことを考えた登場人物が、最後に火村の心の裡に何かを起こす。火村の心情がこのシリーズで描かれることはほぼないけど、それでも彼の心情に起こったものを、アリスと同じように想像してしまう。 犯罪学者の火村が事件を解決する。作家のアリスが事件に物語を与える。 ミステリってともすると、事件の解決とそのロジック、あるいはどんでん返しに神経が注がれ、物語としては物足りなく感じてしまうものもあるけど、作家アリスシリーズ、特に近作のものにおいては、その心配がほぼなくなってきているように感じます。そしてそれは、何よりアリスの心情が反映されている語りの部分が大きい。 事件を解決する火村。事件に物語を与えるアリス。やっぱり良いコンビです。

Posted byブクログ