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その旅お供します 日本の名所で謎めぐり の商品レビュー

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11件のお客様レビュー

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2020/10/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

厳島神社や石舞台古墳、大湯環状列石など、自分の好きな場所が出てくるのは嬉しい。 旅がなかなかしづらいこのご時世、本の中だとしても旅できるのはありがたい。 しかも、その旅には謎解き要素ももれなく付いてくる。 何ともお得な旅である。 それにしても、初対面の相手でも「旅についていっていいですか」と言える、そのコミュニケーション力の高さよ。 自分ならまず無理だ。 それを受け入れてしまう相手も相手だと思う。 普通、よく知らない人と旅をしようだなんて思いもしないぞ。 そこは場所がバーということもあって、酒の力で多少判断力落ちてるんじゃないかなと勝手に思っている。 ついていく方もコミュ力高いが、それを受け入れる人もコミュ力高し。 タイムカプセルの隠された場所を探したり、ストーカー男の謎解きではミスリードを誘ったり、謎解き部分も非常に楽しめた。 特に薩摩切子の話はしてやられたって感じで面白かった。 旅も味わえて、謎解きも味わえて、バーのカクテルも非常においしそうで(特に色の描写が印象的)その点は非常に満足したのだが、個人的には難点もあった。 謎解き、いわゆる探偵役は歴史学者の男性。 しかし彼が主人公ではない。 主役は依頼人となる人たちで、毎話交代制。 まあそれはいい。 そのタイプのミステリはいくらでもある。 問題は、探偵役と依頼人が出会う場所となるバーのマスターの存在である。 プロローグはマスターが主役の話で始まるが、結局彼は主役にはならない。 あくまで閑話での主役であり、彼自身にも一応謎があるので、最後に伏線にはなってくる。 しかし、彼のせいで、誰を主軸にして読めばいいのか混乱するのだ。 要は「表紙の二人は誰だ」という話である。 恐らくは旅好きなマスター夫妻なのではないかと思われる表紙の二人。 (何せ、探偵役が女性と旅したのは作中では一度だけで、その女性もレギュラーキャラではない) しかし、何度も言うが、マスターは本編の主役ではない。 え、じゃなんで主役ではない彼が表紙に出張ってるんだという話になってしまう。 仮に一話限りの探偵役の彼と女性ペアの絵だったとしても、マスターの存在はちょっと難点がある。 作者の思い入れが強かったのだろう。 明らかに贔屓が見て取れる。 主役ではないのに、やたらと存在感が強い。 謎を解く訳でもないし、探偵役と依頼人との橋渡しが役目と言えば役目で、その割には旅の話をやたらひけらかし、その度に探偵役の存在感を薄めてしまう。 そう、探偵役より存在感が強いので、探偵役に同調しようとしても邪魔されてしまう。 その点が個人的には非常に勿体なかった。 バーのマスターは背景になっておけとまでは言わないが、あれならバーのマスターを主役に据えてもよかったような気がする。 キャラクターのバランスがちぐはぐな気がした。 これは勿体ないなあと。 粗筋では歴史学者の彼が主人公のように書かれているのに、実際の本編とのギャップが最後まで埋まらず、非常にもどかしい思いをしながらの読書となった。 旅も謎解きも面白いのだ。 それは断言できるが……つくづく勿体ない。

Posted byブクログ