1,800円以上の注文で送料無料

忘却についての一般論 の商品レビュー

4.5

10件のお客様レビュー

  1. 5つ

    4

  2. 4つ

    4

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/07/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アンゴラの事情を軽く予習したものの、背景となる社会の動きと雰囲気がつかめなかった。多数登場する人物たちのドラマの交差と時代の急速な流れも相まって、ますますややこしい。 わからないなりに、作者の人間への優しい眼差しと愛情は感じられた。

Posted byブクログ

2021/12/31

文学ラジオ空飛び猫たち第32回紹介本。 1970年代のアンゴラの首都ルワンダ。革命の最中、主人公はマンションの自室に30年近くひきこもり…という設定ながら、魅力的な登場人物たちの物語が錯綜する、にぎやかな小説です。 「忘却についての一般論」はタイトルの固さからイメージがつかないよ...

文学ラジオ空飛び猫たち第32回紹介本。 1970年代のアンゴラの首都ルワンダ。革命の最中、主人公はマンションの自室に30年近くひきこもり…という設定ながら、魅力的な登場人物たちの物語が錯綜する、にぎやかな小説です。 「忘却についての一般論」はタイトルの固さからイメージがつかないような、ユーモア溢れるストーリー展開と爽やかさがあり、重い部分もありますが、読了後はポップな印象が残ります。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/32-eqmb8f

Posted byブクログ

2021/10/09

ルドは30年もアンゴラの元姉の家で過ごす。 現実から遠いようで、荒れているようで、なんだか美しいのはなぜなんだろう。 3回目のチャレンジでやっと読めた。装丁も絵画のよう。

Posted byブクログ

2021/07/27

『ルドヴィカ・フェルナンデス・マノは二〇一〇年十月五日未明にアンゴラの首都、ルアンダのサグラダ・エスペランサ診療所で永眠した。享年八十五歳。サバル・エステヴァン・カピタンゴは、ルドが孤立して暮らした二十八年間の最初の数年に書いた十冊の日記のコピーを私に渡してくれた』―『まえがき』...

『ルドヴィカ・フェルナンデス・マノは二〇一〇年十月五日未明にアンゴラの首都、ルアンダのサグラダ・エスペランサ診療所で永眠した。享年八十五歳。サバル・エステヴァン・カピタンゴは、ルドが孤立して暮らした二十八年間の最初の数年に書いた十冊の日記のコピーを私に渡してくれた』―『まえがき』 アンゴラという地球の裏側にある国で石油開発をやっている会社があるというのを聞いて(その会社とは後々色々と係わりを持つことになったのだが、それは置いておいて)、入社したての自分はこの業界の守備範囲の広さを改めて感じたものだった。もちろん、ポルトガル支配下の植民地だった時代から独立前後の混乱に至る長く曲がりくねった道程のことなど知ることもなく、その響きに冒険心のようなものをくすぐられる思いがしたのだ。それをナイーヴと呼べばそれまでだけれど、その気分の元を照らしてみれば、コロンブス以降繰り広げられた西欧諸国による帝国主義的植民地競争を正当化する理屈を白々と語ることと同根の高揚感である、と意識すべきと自戒する。その国の作家が書いた小説ということで少し身の引き締まる思いを感じながら読む。 忘却とは、意識的な記憶の抹消なのか、それとも徐々に進行する記憶の劣化なのか。幾つもの物語が錯綜するこの小説の中で、記憶は物語に登場する人々に、良くも悪くも、思いがけない形で蘇る。それを人間の記憶に関して一般的に起こることと認めるなら、忘却とは完全な記憶の消滅を意味するのではなくて、顧みられることなく潜在する記憶の在り様を呼ぶものであると判断するしかない。もちろんこの結論は次の新たな疑問へ変換されるだけの仮初の結論だ。顧みられることを意識的に疎んじたのか、あるいはただ単に切っ掛けを失っただけなのか。だがそうすることで初めて気づくこともある。その違いを明らかにすることとは、主人公のルドにとって、歴史のもたらした厄介事に白黒をつけることのようなものだ、と。もっとも主人公は、その歴史から切り離されてしまっていたのだけれど。 無と有が対称する状態を指す概念であるのなら、それは地と図の関係のようにどちらかのみが自律的に存在する状態を指すことは出来ない。忘却もまた、忘れ去られる記憶が「存在」しなければ忘却するという行為はなく、忘却した後は忘却という行為を含めて全てが無かったことになってしまう。忌まわしい気持ちを封じ込める為の忘却が、その原因となった事実を含めて全て無かったことにしてしまうことの善し悪しをどう考えるか。それは報復の応酬のジレンマと同様の行ったり来たりを繰り返す思考へと落ち込んでいく。自分の存在を周囲から切り離し誰にも見つからないようにしたいと願いつつ、その状況を誰に宛ててでもなく膨大な量の文字として書き残すというルドの行為は、まさにそんなジレンマそのものと見える。その意味で、本書は確かに「忘却」に関する一般的な思考を物語風に記したものと言えるだろう。 訳者あとがきを見ると、著者のジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザは本書以外にも魅力的な著書を世に出しているらしい。是非とも、未邦訳の書も翻訳されて欲しい作家と思う。

Posted byブクログ

2021/06/27

[出典] BOOKMARK Vol.18 (2021 SUMMER) 20210625, 紀伊国屋書店@新宿 P.14

Posted byブクログ

2021/03/27

素晴らしい本。訳者が翻訳の賞を取ったとかで、あれも良かったが、この方とは相性良い。アンゴラって国は全然わからなく、南米なのかアフリカなのか、アフリカだった。読んでる感じ、貧富の差がでかそう。植民地下にあり、ポルトガルからの独立戦争で、ひきこもりでいた女性に転記?が起きるが、ひきこ...

素晴らしい本。訳者が翻訳の賞を取ったとかで、あれも良かったが、この方とは相性良い。アンゴラって国は全然わからなく、南米なのかアフリカなのか、アフリカだった。読んでる感じ、貧富の差がでかそう。植民地下にあり、ポルトガルからの独立戦争で、ひきこもりでいた女性に転記?が起きるが、ひきこもりは続ける。あまりにリッチな敷地内で自活できちゃう。無理に国の悲惨さなどを攻撃的に描かれてなく、静かに生きたいんだ、という平民の心情が書かれている。もっと読みたいなこういうの。

Posted byブクログ

2021/01/18

・ルド 小説の最後に明かされる、過酷な体験を経て、アパートの一室にひきこもることになる女性。 ・オデッテ ルドの姉 ・オルランド オデッテの夫の白系アンゴラ人。アンゴラの首都ルアンダの高級マンション〈羨望館〉に部屋を持ち、オデッテとともに暮らし始める。ルドもそこで同居することに。...

・ルド 小説の最後に明かされる、過酷な体験を経て、アパートの一室にひきこもることになる女性。 ・オデッテ ルドの姉 ・オルランド オデッテの夫の白系アンゴラ人。アンゴラの首都ルアンダの高級マンション〈羨望館〉に部屋を持ち、オデッテとともに暮らし始める。ルドもそこで同居することに。 ・ファンタズマ アルビノのシェパード。オルランドがルドにプレゼントした子犬。のちにルドの唯一のよりどころになる。 1974年のポルトガル独裁政権の打倒、それにつづく植民地アンゴラの独立→内戦。オデッテとオルランドは、その混乱のなかですがたを消し、ルドは〈羨望館〉にファンタズマとともにひきこもって、部屋(住戸)のドアの前にレンガで壁を築き、30年に及ぶ独居生活に突入する。 しだいに襲いくる飢えと渇き。しかしどうにか作物を育て、兄夫婦ののこしたダイヤモンドの粒をエサに(!)ハトをおびき寄せてつかまえ、調理して食べ、ルドはしぶとく生き抜いていく。 いっぽう、外の世界は、ときに凄惨な市街戦の様相を呈し、理不尽な逮捕、拘留や、銃殺刑が横行しているものの、人々はなんとか生き抜いていく。そしてそこここに張りめぐらされた細い人の縁がつながって、いつしか外の世界とルドのとじこもる内の世界とのあいだにかすかな架け橋がかけられていく。 テーマやモチーフだけ見たら重たそうなのだけど、とことん底を打った人たちの、肝のすわった明るさのようなものがあって、どこか軽やかで光に満ちている。 文章の流れるようなリズムと相まって、一気読みしました。

Posted byブクログ

2020/11/04
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

再読記録 2020年11月4日 アンゴラに詳しくないままに読了したので もう一回トライしました。人名に慣れがなく 少し読むのに苦労しました。 ポルトガル生まれの女性ルドヴィカは 姉夫婦とアンゴラで同居することになるが アンゴラはポルトガルの革命の余波で不安定に なる中、ある夜、姉夫婦は出かけたまま行方不明に なりルドヴィカは自分を守るために部屋の入口を セメントで封鎖、27年間犬とともに一人で暮らす。 ルドヴィカが「静」であり外の世界は「動」。 元秘密警察の捜査官、ポルトガルの元傭兵、 政治犯、記者、ストリートチルドレン、 それぞれが自らの世界で動いて人生を切り開き 最後にルドヴィカと出会う。 解説文だけで「女性が数十年も一人で引きこもって いた話」とばかり思い込んでしまっていて この「動」の部分を読みこなすのが難しくて 大変でした(^^;)キーアイテム、次々と起こる事件、 それぞれに絡んだ糸が解かれて最後に形になる 感じが映画のようでとても読み応えがありました。

Posted byブクログ

2020/11/02

ポルトガル出身でアフリカのアンゴラの首都ルアンダが舞台。アンゴラってどこ?ポルトガルの土地勘もないし、見知らぬ国の物語。紛争期間中の1人の女性の長期籠城生活とそれを取りまく人々の動きが絡み合ってばらけていたものがきれいに収束していくさまが、映画的で鮮...

ポルトガル出身でアフリカのアンゴラの首都ルアンダが舞台。アンゴラってどこ?ポルトガルの土地勘もないし、見知らぬ国の物語。紛争期間中の1人の女性の長期籠城生活とそれを取りまく人々の動きが絡み合ってばらけていたものがきれいに収束していくさまが、映画的で鮮やか。 たくさん出てくる詩も情景描写も静かに心に染み込んでくる感じと、手紙や鳩やダイヤモンドの粒という細かい物の扱いがとても繊細で感心した。端正で大人っぽい訳で支えられてる良質な文学という印象。 読んでよかった。映画化してほしい。

Posted byブクログ

2020/09/04

外の世界から、内戦から閉じこもった女性の27年。 その間に紡がれた人と人、彼女の詩と現実とのタペストリーが、いつしか彼女の扉を開いていく。 「忘却についての一般論」という題名のとおり、忘れることははたして正しいことなのか否か。 まだ私にはわからないけれど、この本はそのひとつの答...

外の世界から、内戦から閉じこもった女性の27年。 その間に紡がれた人と人、彼女の詩と現実とのタペストリーが、いつしか彼女の扉を開いていく。 「忘却についての一般論」という題名のとおり、忘れることははたして正しいことなのか否か。 まだ私にはわからないけれど、この本はそのひとつの答えを提示している。 日はまた昇る。わたしたちを照らしながら。

Posted byブクログ