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わたしの身体はままならない の商品レビュー

4.4

20件のお客様レビュー

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2022/10/31

【琉大OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC01982939

Posted byブクログ

2022/08/29

「常識とは、生まれた環境で身についた偏見である」 Diversity や Equity や Inclusion や Belonging を理解したつもりになっていたとしても、それらは学者や批評家の視点のトレースであることが多いように思う。社会や集団の「常識」や「普通」という型に...

「常識とは、生まれた環境で身についた偏見である」 Diversity や Equity や Inclusion や Belonging を理解したつもりになっていたとしても、それらは学者や批評家の視点のトレースであることが多いように思う。社会や集団の「常識」や「普通」という型に嵌められる苦しさは誰もが多かれ少なかれ感じているが、障害者の視点でこれを考える機会は僅少だ。僕らはあまりに知らなすぎるし、目を背けてしまっている。 他者のことも自分自身のことも、知らないから、よくわかっていないから、得体の知れない不安に苛まれてしまう。自分が安心したいがために、つい距離を置いたり、時には他者を排除しようとしてしまうのが人間の業なのかもしれない。けれども、一人ひとり異なることこそが「普通」だということに気づくことが、包摂的な社会をつくるための第一歩だと確信した。 そうは言っても、現実は「同じようになれないなら、どこかへ行け」と、社会環境を定数と見なして同化・順応できない者を排除する社会が多様性を阻害していることの方が多いように感じる。一方で、本書でも紹介される「社会モデル」のように、社会の側も変数であり、変えられるものと捉えることもできる。変えられるものと変えられないものを冷静に見定めなければならない。 一方で、社会環境が変数となり液状化していくことで背中を押される人もいれば、新たにスティグマを刻まれて苦しむ人も生まれ得る。価値観の押し付けやエンパシーの脆弱性もつきまとう。 本書中の「知識、受容、思いやり」というフレーズが印象に残った。知ることは第一歩だが、知ったつもりになって型に嵌めることは危険だ。他者を完全に理解することはできない。知ったとしても、わかりあえる訳ではない。けれども、他者を知った上で・それを受けとめ・思いやることには、何も知らずに・無関心で・排除することとの間に雲泥の差がある。 全く知らないものを信じることは難しい。他者を知ることで、慮ったり、信じたりすることができるようになるかもしれない。ただし、利己的な不安に駆動されただけの「知りたい」欲求には注意が必要だ。それは、単に自分が安心したいだけであって、他者を信じることとは対極にある。何かをコントロールしたり、できることを増やすことで自己の不安を取り除くのではなく、自分にはできないことをオープンにして、他者を信じられるようになることが、本当の自信と安心につながる。 互いの「障害」を知ることは、翻って自分は何者なのかという問いに向き合うことでもある。お互いが異なるからこそ、分かち合う歓びがある。 知ることには、深慮が求められる。しかしながら、平井秀幸が「深慮主義」だとして指摘しているように、ダイバーシティや包摂性を深慮できる人のみを礼賛・欽仰することは、それからこぼれ落ちる人を蔑視・排斥することにもつながりかねない。本来、ただいること・あること、生きるための営みとそれに対する必要性が先であるはずなのに、市場経済的価値を生み出せる生産性が無二の価値軸のように社会や集団の「常識」や「普通」が形成されていく...。ただやはり、お互いを知ることの先にしか光は見えないと思った。

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2022/03/12

桐島優太さんの「パーフェクト」という文章がかろやかで、飄々としていてたまらなく好きだった!他の文章も読んでみたい。

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2021/07/31

障がい当事者、支える側にいる人など、ままならなさと共に生きる人たちが語る本。 薬物中毒の方の語りは、淡々としていて嘘やごまかしは無いように思えるところが、スッと入ってきた。 ラストのホームレス女性支援をしている女性の方の話が1番好き。 ラストから2人目の、双子を亡くした方の話は、...

障がい当事者、支える側にいる人など、ままならなさと共に生きる人たちが語る本。 薬物中毒の方の語りは、淡々としていて嘘やごまかしは無いように思えるところが、スッと入ってきた。 ラストのホームレス女性支援をしている女性の方の話が1番好き。 ラストから2人目の、双子を亡くした方の話は、読みながら泣いてしまったので、もし外で読むときはお気をつけを。

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2021/07/06

トランスジェンダーとか依存症とか、当事者の方々のお話は興味深かった。「レビー小体型認知症」の樋口直美さんの「一緒に症状を面白がってほしい」というのは大事な要求(視点)だと思った。わたしたちはどんな障害に対しても、そんなふうにできたらいい。 いちむらみさこさんの「路上生活から見える...

トランスジェンダーとか依存症とか、当事者の方々のお話は興味深かった。「レビー小体型認知症」の樋口直美さんの「一緒に症状を面白がってほしい」というのは大事な要求(視点)だと思った。わたしたちはどんな障害に対しても、そんなふうにできたらいい。 いちむらみさこさんの「路上生活から見えること」、これが読みたくて借りたのだった。いちむらさんは強い。想像力で暴力から身を守り生き抜いていく。ほんとにしなやかで強くて、尊敬する。 「私がダンボールに出入りしていると、男の通行人がやってきて「どうして体を売らないのか」とたずねてきたりしました。 私は、星のイメージを発展させ、銀紙で星をたくさん作り、(略)キラキラさせることで防衛を試みました。 (略) しかし、星は破れました。夜中ずっと掃除をしている路上生活の人が私の星を掃いてしまったのです。ある晩、私がダンボールの中でうとうとと寝ていると、パイプ椅子が飛んできました。(略) 私はそれによってとうとう、クジケそうになりました。しかし、あることを聞いて勇気がもてました。この界隈の路上生活者たちが、ダンボールハウスを「ロケット」と呼び合っているというのです。まさにダンボールロケットで眠ることは、まるで宇宙飛行です。何が襲ってくるかわかりません。でも、ロケットと呼び合うことえお互いが繋がり、それは、助け合いと安眠に、少し近づきます。私は、路上生活が生み出したこのファンタジーに救われ、そして、私の星のイメージとも一致したので、銀紙の星を倍増させ、ひるみませんでした。 そのようにロケットに星を貼り付けて、毎日寝ていると、女の人が寝ているほど安全なのかと思われたのか、隣にひとつダンボールロケットがやってきて、やがて、たくさんのロケットが並ぶダンボールロケット街になっていきました。そうして住人が増えると、襲撃はほとんどなくなりました。」

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2021/06/12

▼最近お薦めの本に、平井秀幸さんの博士論文を単行本化した『刑務所処遇の社会学―認知行動療法・新自由主義的規律・統治性』(世織書房)があります。彼はその本の中で、「深慮主義」という言葉を使って、いま社会には深慮主義が蔓延している、と書いています。けんかっ早い人、暴力的な言動をする人...

▼最近お薦めの本に、平井秀幸さんの博士論文を単行本化した『刑務所処遇の社会学―認知行動療法・新自由主義的規律・統治性』(世織書房)があります。彼はその本の中で、「深慮主義」という言葉を使って、いま社会には深慮主義が蔓延している、と書いています。けんかっ早い人、暴力的な言動をする人が、まっさきに排除される世の中になっていると。ダイバーシティの理解がされ始めているように見えるけれど、それは深慮できる人に限ると、引用で紹介しています。深慮主義からこぼれ落ちる人が障害化されていて、そういう人たちが刑務所に集中し、隔離されている。そんな状態を描いた研究です。  非常に鋭く、世の中の姿を焙り出した作品です。(p.42、熊谷晉一郎「液状化した世界の歩きかた」) (スティグマの帰属理論) ▼「古今東西、自分の意志の力や努力で克服できると間違って信じられている属性には、スティグマが貼られやすい」という理論です。私たちの文化圏では、一つは依存症が例に挙げられます。意志が弱いから、努力が足りないから、などと勘違いされやすい属性です。そして身を切る思いで言いますが、肥満もそうです。あなたが食べたからでしょう、意志が弱いからでしょう、と思われやすい属性です。あるいは学歴、職歴。これも努力不足であなたのステイタスがあるわけだと。(p.47、熊谷晉一郎「液状化した世界の歩きかた」) ▼依存症の人たちから学んだのは、正直に語ること自体がリカバリーだということです。薬物依存リハビリテーションセンターのダルクにいる私の尊敬するメンバーの方が、ダルクは語り方を学ぶ場所、ある種の英会話教室だと言っていました。年数を重ねてきたダルクのメンバーが作り上げたナラティブの迫力はすごいものがあります。教育的でもなければ異議申し立てでもない、こんなにも正直なナラティブが紡げるのか、と思わせます。これから、そういう語りにたくさん触れて頂けたらと思っています。(p.52、熊谷晉一郎「液状化した世界の歩きかた」) ▼束縛されることがなく何でもできることが自由なのではない。自分の力ではどうにもならない運命に翻弄され、大事なものを守るためにいろんなものを捨てた。そこに残されていた、不確かではあるが小さな可能性。それを自らの意思でつかみにいく。そんな風にしなければ自由というものは手に入らないのだと思う。(p.79、野澤和弘「障害者と家族の幸福について」) (和田行男『だいじょうぶ認知症―家族が笑顔で介護するための基礎知識』朝日新書、pp.167-168からの引用) ▼とどのつまり、本人が椅子から立とうとすると「危ないから座っていてください」と行動を抑止し、本人がどんなに頑張っても立ち上がることができないようなソファーを置いて、そこに座らせていたり、施錠して出て行けないようにしたり、物を隠して触れないようにする、薬物を使うなどの手を打つことになるのです。  すると家族等が一番望む「安全な生活」は担保できたとしても、自分の意思を行動に移すという人としてのステキな姿は消え失せ、そのことからくる混乱は増し、動かないことによる心身の活動性低下や能力の衰退が合わさって起こるなど、「生き生きとした姿」を失うことにつながりかねないのです。 (pp.154-155、伊藤亜紗「信頼の風土」) ▼不確実性を残すということは、失敗する可能性を残すということ、つまりは挑戦する可能性を残すということでもある。若年性アルツハイマー病の丹野智文は、今の日本の支援は失敗を許さない体制になっていると言う。「『失敗させないようにどうするか』なんですよね。失敗して何がダメなんだろうっておれ思っててね。ふつうの人でも失敗するのに、何で障害者は失敗しちゃだめなのかなって」  周囲の人が、当事者を信じることができないために、先回りしていろいろなことをやってしまう。結果として、当事者は挑戦する可能性を奪われていき、ますます幸福感を失っていく。(p.156、伊藤亜紗「信頼の風土」) ()

Posted byブクログ

2021/08/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

自分で設定しているカテゴリの「講演録・対談録」に分類したけど、正確には「講義録」です。 東京大学駒沢キャンパスで、自主ゼミとして様々なマイノリティの方々を招いて対話型の講義をしてもらったのを、本にまとめた、という形です。講義をした方、というか、語っている方々は障がい者、数万人に一人という難病を抱えている方、トランスジェンダー、障がい者の親やきょうだい、同性愛者でHIVに感染した人、あえて(?)路上生活を送っている女性、死産に立ち会ったお父さん、薬物依存だった人、など。非常に興味深いです。私は教育に携わっているので、性的マイノリティの方が、自分の性に思春期に違和を感じ始めたときの気持ちや、どんな言葉で傷ついたか、学校教育のどこに問題があるか、などはとても参考になるし、私にできること、私がすべき言葉かけなど、考えることができた。公教育の現場でもだいぶ性による区別を固定化しないことが進んできており、私も男女とわず「さん」づけで呼び、集団で役割を決めるときも男子一名、女子一名、などと決めないようにはしている。小さなことだけれど、大事なことだ。制服も、近々多くの自治体で女子のスラックスが認められるようになる。 そのほかに興味深かったのはレビー正体型認知症の方の体験談。幻視が見える脳の病気で、いないはずの人が部屋の隅や車の中に見えたりする。そりゃあ恐ろしかろう~!と思うのだが、自分の病気のことをちゃんと調べ、向き合って生きている。症状が現れ出したときに「うつ病」と間違って診断され、抗うつ剤を服用したりして病気が悪化して苦しんだ。最近、「うつは特別な病気じゃない」「誰でもなりうる」という変にポジティブ(?)な情報が先行して、本当はそうじゃないのにうつと誤診されたり、自分でうつだと思いこんだりする人が増えているらしい。誤診は怖い、と思った。この方が主張しているように、医師が専門に特化しすぎて他の病気のことはわからない~みたいなの、本当に怖い。あらゆる可能性を考えて診断してほしいものである。 さてさて、双子の赤ちゃんの死産に立ち会ったお父さん。もちろん涙なしでは読めないけど、ただ単に赤ちゃんを亡くした悲しみだけではない、その時の看護師さんの言葉かけ、「男だから、夫だからしっかりしなくては」と思ってしまった自分の心の動き、そして現在のご自分の仕事のことなどと絡めての内容で、心に突き刺さった。現在は福祉事業に携わっており、亡くなってゆく高齢者を看取ることもある。その時に、高齢の母を看取る男性たち(60代や70代)は、「男だから泣いちゃいかん」てな感じで毅然とふるまおうとしたりする。上手に「お母さんの手を握ってあげてください」と促せば、「お、おぉ」と言いながら手を握り、そして号泣したりする。「男だから~~しなきゃいけない」なんて固定観念を取っ払って、最初から「おかあさーん!」って泣いてもいいのに、なんて不自由なんだろう。 ありのままに、気持ちに正直に生きるって、出来そうでできないものなんだ。 この本に出てくる方のような、めずらしい病気の方やめずらしい体験をしてしまった方じゃなくても、本来人間はみんなそれぞれ違うのだ。人からどう思われるかとか、多くの人がやっているからとか、それが常識だからとかではなく、別の意味で「正しいのか」「本当に自分がやりたいことなのか」「本当にそうすべきなのか」と、ちゃんと考えて生きたい。

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2021/03/05

障害者やマイノリティの体験談をまとめた本。文章という表現方法のもとではどんな人も平等で、簡単に寄り添える。実生活でこんな人に出会った時にも寄り添える人間でありたい。

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2021/01/31

面白くて一気に読んでしまった。ここ最近で一番。新しい視点や思考を得られたことに感謝します。障害は、医学的なものでなくて、社会の構造や関係にある。

Posted byブクログ

2021/01/18

最近読んだ中でいちばん面白い。 障害者がテーマだが、なにが障害なのかということについて考えさせられる。何度も繰り返し読みたい。

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