1,800円以上の注文で送料無料

思考の技術 新装版 の商品レビュー

4.4

15件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    1

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/06/09

環境破壊、地球温暖化そして人口の爆発的増加など人類が立ち向かわざるを得ない問題は数多く存在する。何故なら勢い止まず、このまま将来に渡り継続するなら、いつかは人類の生存環境として存在し得なくなる事は容易に想像がつくからだ。近年昆虫食が静かに身近にも近づいている。虫嫌いな私は当然ショ...

環境破壊、地球温暖化そして人口の爆発的増加など人類が立ち向かわざるを得ない問題は数多く存在する。何故なら勢い止まず、このまま将来に渡り継続するなら、いつかは人類の生存環境として存在し得なくなる事は容易に想像がつくからだ。近年昆虫食が静かに身近にも近づいている。虫嫌いな私は当然ショッピングモールなどで開催されるイベントで試食を勧めらても中々手が出ないし、生きている姿を見て食えと言われたら、とてもじゃないが飢え死にした方が良いとさえ思ってしまう。人口の急激な増加は食料不足を引き起こすのは間違いなく、加えてそうした地域は発展途上にある事が多いため、エネルギー不足や工業化に伴う環境汚染を助長する可能性も高い。益々地球は温暖化し、南北両極上空のオゾン層破壊により、皮膚がんの増加なども引き起こす。近年、持続可能な開発目標を立てて環境を守ることを高々に宣言した世界であるが、こうした団結が生まれてくるあたり、いよいよ地球の危機も目前に迫ってきた事を証明しているかのようだ。 本書は1970年ごろの著者立花隆氏の処女作であるから、ゆうに50年以上前のものではあるが、既に現在の地球規模的課題を先読みしたかの如く、想定したリスクはほぼ現実のもとなっている。当時はまだまだ日本が急激な成長を続けている最中であり、社会は大きく変異していたであろうから、その中に違和感を見出して将来に向けて警鐘を鳴らした様に思える。人類よ自分たちだけが地球を棲家にしているのではない、と言う声が聞こえてくる様だ。立花氏はその様な状況に於いて、人々が地球と共存し、深い関係性の中にいる事にもっと目を向けて考えよ、といってくれている。人間の存在や営みは地球上の凡ゆる生物の活動と関係があり、人類がひとたび自分たちの利益のみを優先しようとするなら、それは関係性を部分的に破壊し、結果的に自分達へのしっぺ返しとして戻ってくる。地球上の食物連鎖も、植物の光合成も、宇宙線から我々を守る大気の存在も、それら全てが微妙かつ複雑に絡み合う事で、今の地球がある。それぞれの持つサブシステム同士が接続され地球というトータルシステムが成り立っているのだ。 生態学を考える時、この凡ゆるものの関係性を少しずつ調査解明していく手段が用いられるが、科学物理の様な明確な解は見当たらない。何故なら地球上には我々人類が到達できていない地、発見されていない生物種、この瞬間にも環境変化にうまく対応し進化を遂げる新たな種が生まれている可能性さえある。だからあくまで知り得た知識の中から、より関係性の深い事象を並べ繋ぎ合わせていく事で、新たな解を作り上げる。この流れは普段我々が何か事を起こそうとした時、成し遂げようとした時に自然と頭の中で実施している思考の技術に近い。筆者は更に関係性を維持していくためには、この複雑に絡み合う生態系を維持する事をメインに据えて思考すべきと訴えているようだ。過剰・極端が生み出す人々の行為は前述の様な生態系の破壊や、現代の地球課題の多くに繋がっていくのではないだろうか。 一方ではモノが溢れ手に入れては棄てる事を繰り返す先進国。その一方で1日1ドル以下で生活せざるを得ない貧困国。戦争とは無関係にソファに寝転がってスマホゲームに興じる人々。ミサイルの爆風に窓ガラスが吹き飛ばされ、身体中に傷を負いながら寒さに震える戦禍の人々。人類の間でさえ関係性を希薄なものに置き換えてしまう思考回路。自分さえ良ければ良いと言った考え方は、やがて自分達の首を強く締め上げる事になりそうだ。そうなる前に氏曰くエコロジー的発想で物事を思考していく技術を身につけ、それを磨き続けることが重要だ。

Posted byブクログ

2024/05/03

立花隆氏の処女作。 文系理系関係なく、上流から下流まで大局的な視点で物事を捉える事の大切さを感じさせる。

Posted byブクログ

2024/04/07

 先般読破した『評伝立花隆』を経て、原点に立ち返ろうと読んだ「知の巨人」立花隆氏のデビュー作『思考の技術』(新装版)。本書が提唱するエコロジー的発想は「自然の英知で脳を鍛えよ」。新カント派の発想に基づくという高校から文系と理系に分かれるのが通例である我が国の教育制度に対し、自然科...

 先般読破した『評伝立花隆』を経て、原点に立ち返ろうと読んだ「知の巨人」立花隆氏のデビュー作『思考の技術』(新装版)。本書が提唱するエコロジー的発想は「自然の英知で脳を鍛えよ」。新カント派の発想に基づくという高校から文系と理系に分かれるのが通例である我が国の教育制度に対し、自然科学と人文科学という2つの科学の必要性を認めないシカゴ学派。物体の存在から精神の作用に至る全てを貫通する基本的な法則性を見出しうるとする立場が科学主義。文系と理系を一体で考える教育が必要ではないだろうか。

Posted byブクログ

2024/03/26

50年以上前の実質的な処女作。「細分化された専門バカでは問題解決はできない。横断的な知恵が必要。」というようなことを死に際に言っていたように記憶しているが、その考えはデビュー当時から一貫していたということに驚く。ただしその解決策が生態学(エコロジー的発想)なのかという点には疑問が...

50年以上前の実質的な処女作。「細分化された専門バカでは問題解決はできない。横断的な知恵が必要。」というようなことを死に際に言っていたように記憶しているが、その考えはデビュー当時から一貫していたということに驚く。ただしその解決策が生態学(エコロジー的発想)なのかという点には疑問が残るが。

Posted byブクログ

2024/03/25

立花隆氏の処女作らしいが、傑作だった。 科学の思考は、対象に潜む雑情報を処理して、純粋なカタチにして捉えるというものだ。 一方で本書での思考法というのは、雑なものを、一歩上位に立って見つめ、最上流から最下流までの情報や生態系をいったんすべて記述することで理解する、とても雑然とした...

立花隆氏の処女作らしいが、傑作だった。 科学の思考は、対象に潜む雑情報を処理して、純粋なカタチにして捉えるというものだ。 一方で本書での思考法というのは、雑なものを、一歩上位に立って見つめ、最上流から最下流までの情報や生態系をいったんすべて記述することで理解する、とても雑然とした複雑なシステムの大枠をとらえてみようとする。 これっていまでも普通に通用するし、扱っているものこそ古けれど、あまり影響ない。 尊敬する人だとおもった。

Posted byブクログ

2024/03/01

大局観を身につける  短い本。  生物学の生態学を紹介してゐて、生物の教科書と重なる内容も多い。要するに、生態学的思考とは大局観のことである。だが、みな局所局所にしか目が行かず、全体の体系を知らうとする者はすくない。  わたしも小説の書きかたについてずっと模索してきて、どうやら...

大局観を身につける  短い本。  生物学の生態学を紹介してゐて、生物の教科書と重なる内容も多い。要するに、生態学的思考とは大局観のことである。だが、みな局所局所にしか目が行かず、全体の体系を知らうとする者はすくない。  わたしも小説の書きかたについてずっと模索してきて、どうやら闇雲や好きな小説、自己中心ばかりではなく、大局的な見方をしたほうが理解が深まると、さいきん気がついた。だから、なるべくいろんな本を読まうとしてゐる。  以前読んだ富永健一の社会学も、一種の生態学だなとおもった。

Posted byブクログ

2023/11/15

1971年に出版された本とは思えない。人類の進むであろう道を生態学の観点からものの見事に言い当てている。立花隆、恐るべし。いよいよ地球環境が異常になっている昨今において、一人ひとりが地球規模で物事を考えることができるかどうか、全員は無理だろうが、自分自身はそうありたい。

Posted byブクログ

2023/01/04

自然ほど複雑なシステムはない。 何かを食べる時はその10倍の下位層のものを食べている感覚で。 環世界で見る。

Posted byブクログ

2022/12/01

知の巨人 立花氏の事実上の処女作とある その結論は、「自然をもっと恐れよ、畏怖すべきものとして」である 気になった点は以下です。 ・生態学の極意は、自然に従って、自然の組織を利用して料理すること。人類はその極意に従っていない。 ・生態学的思考に反する行動は必ず失敗する ・...

知の巨人 立花氏の事実上の処女作とある その結論は、「自然をもっと恐れよ、畏怖すべきものとして」である 気になった点は以下です。 ・生態学の極意は、自然に従って、自然の組織を利用して料理すること。人類はその極意に従っていない。 ・生態学的思考に反する行動は必ず失敗する ・工業社会とポスト工業社会(=生態学的社会)の間には埋められない溝がある。それを埋めるにはその溝を飛び越えるしかない。 ・生態学とは、生物学の一分野であり、「生物と環境および共に生活するものとの関係を論ずる科学である」 ・生物学も科学である。科学とは、①論理的である、②客観性を有する、③実証的である を満たせばよい。 ・生物学の一極を分子生物学とすれば、生態学は、もう一つの極にある。 ・実際の生態系はあまりにも複雑であって、人間が生存するために最低必要な環境条件が何であるのかは、いまだにわかっていない。 ・現在の生態学には理論体系はない ・自然があまりにも複雑な、複合システムであるため、その解明のためには、サブシステムをとらえて論じるが、サブシステム内では有効に働く技術が、トータルシステムでは弊害をもたらしている。 ・システムには、閉鎖システムと、解放システムとがある。いかなるシステムにおいても、インプットよりも大きなアウトプットを取り出すことはできない。これが自然の大原則である。 ・自然界は、つねにエントロピー(複雑度)が増大ので、エントロピーを押さえるためには、エネルギーが必要である。 ・人間が人工的に作り出したシステムに関する限り、人間はそれが管理されなければ円滑に働かないことを知っていた。 ・エコシステムは、4つの要素からなる。①非生物的環境(物質)、②生産者(植物)、③消費者(動物)、④還元者(バクテリア)。この4つが複雑なサイクルを形成する閉鎖系である。 ・人間の文明が、土中の微生物を殺して、サイクルを破壊している。プラスチックがそのいい例である。 ・人間は、エコシステムを破壊しない程度に、人工的なサブシステム改良にとどめるのが、良い選択である。エコシステムの破壊は、人間にとって命取りであるから。 ・生命の根源は、水である。無機物を溶かして、生物間を媒体させるのが水である。水なしには、生物は生きられない。 ・蛋白質を形成する窒素についても、生物が媒体となって循環している。 ・炭素も生物にはなくてはならない物質。炭酸ガスと酸素のバランスについて、光合成や、二酸化炭素の海中での融解などに密接に関係している。 ・気候変動、温暖化とともに、空気中を浮遊する塵が、アルベトという太陽光の反射率を押し上げて、逆に地球を寒冷化に導いている。でも、現在は温暖化の割合が大きい。 ・生態系を形作っている、食物連鎖の1つの生物がいなくなると何がおきるかわからない。 ・フィードバック機構をつくれ、フィードバックとは、アウトプットの一部をインプットに戻してやって、インプットの調整をはかる仕組みである。 ・生態学の重要な概念に遷移がある。植物でいえば、地衣類⇒コケー>種子植物⇒針葉樹 遷移の進行とは、優占種の交代と同意語である。 ・マルクスは遷移の考えを使って 封建主義⇒絶対主義⇒市民社会⇒社会主義⇒共産主義 という遷移を考えた ・デッドセンター:大繁殖した生命について、中心部は死滅するが、周囲が生き残って生存するという考え。文明論にも当てはまる。 ・エコロジーの特徴、寄生と共生 ・ガウゼの仮説:似通った二種の生物は、同じ場所に住めない ・過密がいけないのは食料不足に陥るから、個体間のストレスを増加させるから、かといって、過疎もいけない、集団のみにつけるべき学習の欠如、攻撃からの防御が弱い ・動物社会の秩序の維持は、①なわばりをもつ、②順位をもつ、③あるいは両方、人間もまさになわばりにうるさい。だから味方につけるなら、ある程度のなわばりを与えておいてその中で対応してもらえればよい。 ・人類の進歩についても、生態学的な考えを取り込んでもう一度考え直さなければならない。それを、「思考の技術」と呼んでいる。 目次 はしがき プロローグ 思考法としてのエコロジー Ⅰ 人類の危機とエコロジー  1章 エコロジーの登場  2章 閉ざされた地球  3章 生命と環境  4章 文明と自然は調和しうるか? Ⅱ エコロジーは何を教えるか  5章 システムのエコロジー  6章 適応のエコロジー  7章 倫理のエコロジー  8章 生存のエコロジー エピローグ 自然を恐れよ 文庫版あとがき 解説 エコロジー的思考で捉える人間社会の現実 佐藤優

Posted byブクログ

2024/10/28

よく耳にする言葉だが、「生態学」とは何か、「生態学的」物の見方とはどういうことか、この辺を平易な解説と豊富な実例をベースに展開した好著である。 自然や社会現象を帰納的に、細分化してみるのではなく、広角的、俯瞰的に捉える思考法の重要性をあらためて再認識した次第である。 公祥

Posted byブクログ