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パチンコ(下) の商品レビュー

4.4

109件のお客様レビュー

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2023/09/22

小学生の頃西陽を浴びて夕食が迫るのも忘れて一心不乱に漫画を読み耽った光景が今でも鮮烈に残っている。『赤胴鈴之助』『怪傑ハリマオ』‥‥、その後も『明日のジョー』『ゴルゴ13』『火の鳥』など、手当たり次第読んだ。多くの識者が小さい頃から『世界文学全集』を読んだ話はよく耳にするが、自分...

小学生の頃西陽を浴びて夕食が迫るのも忘れて一心不乱に漫画を読み耽った光景が今でも鮮烈に残っている。『赤胴鈴之助』『怪傑ハリマオ』‥‥、その後も『明日のジョー』『ゴルゴ13』『火の鳥』など、手当たり次第読んだ。多くの識者が小さい頃から『世界文学全集』を読んだ話はよく耳にするが、自分は漫画に浸りきった。 あの時の、想像を超える世界に引き込まれる快感、それがこの小説を読みながらデジャブのように甦ってきた。その後の人生経験が想像空間をより現実的なものにして擬似体験をさせてくれる。 ・20世紀前半  在日コリアン家族4世代にわたる生き様 ・根深い日本社会の在日差別 ・アメリカの自由と明るさ ・深い母の子への愛情 ・父親の子への愛の形 ・学問の渇望、浪人後の早稲田入学と退学 ・死 墓参り 供養  ・共産主義の欺瞞性 ・・・ 作者はこの小説を2017年52歳で脱稿、全米図書賞の最終候補に、在日への強い問題意識で描き始めたが学生時代の初稿を全部破棄し、日本在住も含む30年の調査・研究をふまえて完成。英語で在日コリア系コミュニティの世界を書いた初めての小説。 パチンコは在日の多くが経営する産業であり、彼らと深い関わりのある職業になるのは何故かという疑問を自分は常々持っていた。 「人生を象徴するゲーム」であるとも思う。 左下から弾き出された玉がクギで弾かれたりチューリップに入って多量の玉になろうが、最終的には皆下の穴に吸い込まれていく。国籍・貧富の差なく人は皆最後は等しく死んでいく。 賭博性と依存性の遊興であり、快感と苦痛・天国と地獄が綾をなす、それは建前と本音という人間の習性である「差別感情」と重なる。 自分なりに解釈すれば、差別をする日本社会のその弱者から吸血するパチンコ産業、これが差別される宿命の在日コリアンに敗戦国日本が提供した生業であった。 植民地支配の残滓として、在日の生存確保のためにパチンコが国家権力(警察)による管理(規制と保護)と癒着によりヤクザや同和の補完で作られてきた。 夥しい依存症弱者の犠牲のもとに20兆円規模の巨大産業になる、韓国では既に廃止されている。 釜山影島でヤンジンが兎唇で足の悪いフニを夫に迎える場面からこの物語は始まる。娘ソンジャ以下在日コリアン家族の4世代にわたる波瀾万丈の顛末である。 偶々、パール・バックの『大地』を読んだところなので殊更国の運命に翻弄される民衆や家族の現実が痛切に迫ってくる。祖国を離れて尚民族の誇りを貫く意思と生きる糧としてのパチンコ業への就職がまるでパチンコ玉のようだ。 作者の情熱による骨太のストーリーと丁寧・誠実な描写で翻訳もよく傑出した作品となる。 読みながらいろいろなことを考えさせられた。 面白かった。

Posted byブクログ

2023/05/23

日本はひでえなと悲しくなる。いまだに鎖国を続けてるようなもんだ。日本の土地で暮らして税金はらえば日本人でいいではないか。さっさと方向転換しないと、わー国の未来は暗黒しか…

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2023/05/08

大作ではあるが、思ったほど気持ちが入っていかなかった。 何でだろうか? 在日の人が日本で苦労した話なのだが、差別的な事は日本人同士でもある事だし、他の国で日本人が差別される事があるはず。 どの国にも良い人、悪い人がいる。 最後の終わり方が私にはしっくり来なかった。 タイトルのパチ...

大作ではあるが、思ったほど気持ちが入っていかなかった。 何でだろうか? 在日の人が日本で苦労した話なのだが、差別的な事は日本人同士でもある事だし、他の国で日本人が差別される事があるはず。 どの国にも良い人、悪い人がいる。 最後の終わり方が私にはしっくり来なかった。 タイトルのパチンコは、在日の運命をパチンコに例えたのだろうか? 在日に限らず、人の人生なんてパチンコみたいなものだ。

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2023/04/09

のめり込んだ。 登場人物に感情移入してしまう。 在日コリアンの苦悩、十把一絡げではなく親切な人間、裏切る人間、見失うアイデンティティ。 全てが在日コリアンだけが抱える苦悩ではない、よい生き方を考えさせられる。

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2023/03/06

人種とは、民族とは、国家とはいったい何なのか……。 「“内に居ながら別”である“在日コリアン”の人々」の視点で語る、日本現代史。 そこには歴史上の有名人はなく、ひたすら時代ごとの主人公たちの庶民生活が描かれていくが、読み終わると歴史の一部を体感したような「大河ドラマ」になる。 ...

人種とは、民族とは、国家とはいったい何なのか……。 「“内に居ながら別”である“在日コリアン”の人々」の視点で語る、日本現代史。 そこには歴史上の有名人はなく、ひたすら時代ごとの主人公たちの庶民生活が描かれていくが、読み終わると歴史の一部を体感したような「大河ドラマ」になる。 今思えば信じられないが、昭和生まれの私にはチマチョゴリとブレザー姿の同世代の高校生たちを前にしたときの畏怖と嫌悪の感情が、当時、当たり前に存在していた。 それを振り払ってくれたのが「韓流」や「韓国グルメ」などの文化の力であることは、大きな意味がある。 物語自体は、政治や思想的背景が極力除かれた文章で、主人公キム・ソンジャとその家族がそれぞれの時代をどう生きたかをコンパクトに読みやすくまとめて書かれている。 そのため、多くの日本人がすんなりと物語の世界に入り込むことができ、登場人物たちに感情移入できる、ベストセラーが納得できる本。 少し「いい人」ぶりが目につくのが、作者が「アメリカ人」である証しかもしれない。 迫害や犠牲的感情など、キリスト教的な香りもまた、その一つなのか。 もっとドロドロとした感情があったに違いない。 いずれにしても、欧米の文学作品である以上キリスト教を抜いて描くことはないので、それほど読むのに邪魔することでもない。 徴用工や慰安婦問題などいまだ後を引いている太平洋戦争での出来事ではなく、今でも現実に存在する“在日”という問題、日本人はこれを解決しない限り「多様性」を論じる資格すらないような気がする。 そのことは、この本を読んだ以上日本人として、ただ「面白かった」ではなく心にとどめておきたい。

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2023/02/27

大河ドラマを観ているようで、物語に惹き込まれて上下巻という長さを感じなかった。 特に上巻の初めの方の、ソンジャが赤ちゃんを身籠り、イサクと出会い結婚して日本にやって来るあたりが、追い込まれた女性が必死に生き抜く強さを感じ、続きが気になってどんどん読み進めてしまった。 ソンジャやヤ...

大河ドラマを観ているようで、物語に惹き込まれて上下巻という長さを感じなかった。 特に上巻の初めの方の、ソンジャが赤ちゃんを身籠り、イサクと出会い結婚して日本にやって来るあたりが、追い込まれた女性が必死に生き抜く強さを感じ、続きが気になってどんどん読み進めてしまった。 ソンジャやヤンジンやキョンヒが作る料理が美味しそうだし、貧しいながらも食材を無駄にせず工夫をこらして丁寧に調理する描写が好きです! 在日コリアンの差別や偏見といった歴史の側面も描かれていますが、単純に1つの家族が困難や災難に遭いつつも強く逞しく生き抜く物語としての面白さの方が個人的には強かった。

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2023/02/14

戦前から戦後しばらくまでの在日コリアンのお話。全てが全てこの物語のような環境だったか、まだ勉強不足でわからないが、4世代を通して日本と韓国の歴史を知ることができた。

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2023/02/11

翻訳本をこんなにすらすら読んだのはいつぶりだろう。上下合わせて700ページ、手を止められなかった。 AppleTVでシーズン1も見たが、若き日のソンジャについては忠実に再現され、現代のソロモンについてはだいぶ脚色されていた。 日本人としてこの作品を知ることができ、そう遠くない...

翻訳本をこんなにすらすら読んだのはいつぶりだろう。上下合わせて700ページ、手を止められなかった。 AppleTVでシーズン1も見たが、若き日のソンジャについては忠実に再現され、現代のソロモンについてはだいぶ脚色されていた。 日本人としてこの作品を知ることができ、そう遠くない過去に母国で起きたことに無知だったことに気づくことができた。 祖先と同じ国で生まれ育ち、アイデンティティに疑問を持ったことがない自分にとっては未知の世界だったが、このような人たちの思いを忘れないでいたい。

Posted byブクログ

2023/01/04

めちゃくちゃ面白かった。朝ドラみたいな話、という感想を見たけど、心をグリグリとえぐられる場面が多々あって苦しい。

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2022/12/19

すごく久しぶりに読めた小説。最後の著者から日本の読者の手紙を読んで、また壮大な物語だとうなる。この物語は、1900年前半からの4世代の物語、日本で暮らす韓国人の話ではあるが、あらゆる差別が散りばめられてるなと思った。人の表面的な面だけ見るのではなく、お互い気持ちよく付き合える関係...

すごく久しぶりに読めた小説。最後の著者から日本の読者の手紙を読んで、また壮大な物語だとうなる。この物語は、1900年前半からの4世代の物語、日本で暮らす韓国人の話ではあるが、あらゆる差別が散りばめられてるなと思った。人の表面的な面だけ見るのではなく、お互い気持ちよく付き合える関係性をどこでも作りたいと思った。最後のソンゾャがお墓参りをする場面、静かに最後はあよかったのかなと救いがあった。前情報なく、題名のパチンコってなんのことだろう、最初のソンジャとハンスの会話で出てくるパチンコのことなのか、やっと世代が変わって出てきたパチンコ、今回の日本へ来た民族たちや、アメリカ移民が過去受けた特有の職業のイメージからの、差別。

Posted byブクログ