生きるはたらくつくる の商品レビュー
兵庫県立美術館で開催されている「つづく」展に感化され、購入した本。 前々からミナには興味があったし、服はなかなかお高いのでほぼ日手帳のカバーをミナペルホネンにして愛用したりとか、それくらいの関わり合いでしかなかったブランドの展示を観に行ったのだが、ただ「可愛いデザインとテキスタイ...
兵庫県立美術館で開催されている「つづく」展に感化され、購入した本。 前々からミナには興味があったし、服はなかなかお高いのでほぼ日手帳のカバーをミナペルホネンにして愛用したりとか、それくらいの関わり合いでしかなかったブランドの展示を観に行ったのだが、ただ「可愛いデザインとテキスタイルを生み出しているブランド」という印象がガラリと変わった。 そのブランドのコンセプトをいいなあと思って、そのブランドを作り上げた皆川明さんのことが気になって(正直地味なおじさんがなぜこんな可愛いデザインを? くらいにしか思っていなかった。すみません) 皆川さんの本はたくさん出ていて、今まで読む機会がなかったのだけれど、今回選んだこの一冊は皆川明氏の自伝的な要素が強い。 彼がどうして皆を作ったのか? 一番興味深かったのはやはり 「陸上(長距離)に打ち込んでいた彼が、なぜアパレルブランドを作ったのか?」 という始まりの話。 留学先でたまたまパリコレの手伝いをして……なんて、そんなこと、やはり普通の人とは違う。 そこから試行錯誤しながらブランドを確立していく様は、読んでいてとてもワクワクしたし、単純だけれども「せめて100年はつづく企業にしよう」という思いや、日本産にこだわる、そしてどうしても高くなってしまう理由などを読んでいくと、ミナのファンになるしかなかった。 自分が仕事に迷った時も原点に帰るために繰り返し読んでいきたい本の一つになったし、いつかミナの服も買いたいなあと思わせてくれる本だった。
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1985年 高校卒業後、フランスへ。 同じ語学学校でコシノジュンコのオフィスで働く女性の誘いでアルバイト。 毎日のようにルーブル美術館に通う。エジプトに興味。 1986年帰国後、パターンなーのチーフにすすめられたまま文化服装学園の夜間へ。 デザイナーになるつもりはなかった。ありえない。 不器用で満足に縫うこともできないが「絶対にやめない」 昼は縫製工場で働く。高級プレタポルテ。 フィンランドとスウェーデンに旅。2月。 祖父母の輸入家具店がmarimekkoのテキスタイルを扱っていた。 石本藤雄さんの布を買う。デザイナーの名前とデザイン年が記されている アルヴァア アルトデザインの図書館、スツール 文化には3年通うが、2年に進んだだけ。 西麻布のタカモトで毛皮の縫製の仕事 1995年西八王子で独立、結婚 mina:フィンランド語で私 利益が出ず、染料を計るときの新聞から水産会社の仕事 18歳で買た中古のシトロエン2CVで行商するが門前払い 利益でず、唯一の社員無給 設立4年 UAや伊勢丹の受注数増加 UAだけで1000万 2000年10月10日 白金に直営店舗 給料、自身に20万、長江青に15万 セールはしない、生地を使い切りが余るときは小物を作る 魚のように 生命線は生地のクオリティ メートル1万のものも 手を抜かずしっかり作る 「せめて100年つづく」 社員110人(2020年4月) 2003年 ミナ ペルホネンに:フィンランド語で蝶 服にグラフィック ひらひらと遠くまで飛ぶ 2007年 京都店 2013年 松本店 元薬局、2017年 金沢店 古民家 表参道spiralのcallは雇用に年齢制限なし
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ミナペルホネンを設立したデザイナーの皆川明さんの自伝(インタビューの書きおこし)。ブランドを立ち上げてこれまで維持されてきた経緯、作品やブランドに込められた想い、仕事をする上での信念など。陸上をされていた学生時代や魚市場でのアルバイトをしながらブランドをなんとか維持されていた過去...
ミナペルホネンを設立したデザイナーの皆川明さんの自伝(インタビューの書きおこし)。ブランドを立ち上げてこれまで維持されてきた経緯、作品やブランドに込められた想い、仕事をする上での信念など。陸上をされていた学生時代や魚市場でのアルバイトをしながらブランドをなんとか維持されていた過去、ブランド立ち上げ時から今までの数々の試み、ご自身や周囲に対する深い洞察など、ものすごく読み応えがあり面白く、感動しました。「よい記憶」のきっかけになるための服やテキスタイルをつくられているというのが印象的でした。
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このアンダーコロナのもと、8月2日NHKEテレの日曜美術館で1月12日に放映された「デザイナー 皆川明 100年つづく 人生(デザイン)のために」が再放送されました。最初の放送は東京都現代美術館で開催されていた彼のデザイナー生活25周年を記念した展覧会「ミナ ペルホネン/皆川明 ...
このアンダーコロナのもと、8月2日NHKEテレの日曜美術館で1月12日に放映された「デザイナー 皆川明 100年つづく 人生(デザイン)のために」が再放送されました。最初の放送は東京都現代美術館で開催されていた彼のデザイナー生活25周年を記念した展覧会「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」に併せての放映で、再放送も会場を兵庫県立美術館に巡回したことに併せてだとは思いますが、まるで今回の状況でその内容がさらに深く心に浸み込み、皆川明に興味を持ち本書を手に取ることにしました。彼の人生と彼のデザインと彼のブランドについての振り返りですが、それは彼にとって仕事とはなにか、ということを自分自身で整理しながら、次の世代に渡していくためのバトンのような本でした。その真髄が「生きる はたらく つくる」という書名に使われた三つの言葉の融合にあると思います。『働くよろこびは、自分の外側にあらかじめ用意されたものではなく、内側に生まれるものだ。』(P195)『生きることも、はたらくことも、じつはほとんどコントロールできないのかもしれない、と思うようになった。完全にコントロールできないなかで、手を動かしつづけること。ここから生まれるものが「つくること」なのだ。』(P221)…メモしきれないほどののシンプルで深い言葉、ミナ ペルホネンの服は手にしたことはないけど、きっと彼の言葉のような「良さ」を感覚として感じる服なんでしょうね。自分のクリエーションという100年持てばいい仕事から、「せめて100年続く」ブランドという自分の人生を超えたクリエーションを見つけ出したデザイナーの、いや人間の貴重な仕事の記録です。この奇禍の元、ファッション業界はショーをやめ、セールスをやめ、老舗のブランド、デパートが倒産し変革に直面していますが、コロナがあろうとなかろうとサスティナブル=「つづく」に価値を置いていた皆川明の軌跡は気づきが満載でした。いや。ファッション業界に限らず「はたらく」すべての人に光を与える本です。「働くわたし」「仕事本」に続く、この夏の「はたらく」ことについて考える課題図書第三弾になりました。
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