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人工知能に未来を託せますか? の商品レビュー

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2020/07/29

現在、向き合うべき技術的な課題は、人工知能にある。巷に溢れる人工知能論は、あたかも万能なように言われている。人工知能が、人間の行為を代変えできるがごとく言われている。人工知能と人間の将棋や囲碁を見て、「人間は勝てない」そして「人間は人工知能に、仕事を奪われる」とさえ言われる。ある...

現在、向き合うべき技術的な課題は、人工知能にある。巷に溢れる人工知能論は、あたかも万能なように言われている。人工知能が、人間の行為を代変えできるがごとく言われている。人工知能と人間の将棋や囲碁を見て、「人間は勝てない」そして「人間は人工知能に、仕事を奪われる」とさえ言われる。ある小学生が「AIが仕事をやってくれるなら、私は勉強しなくても大丈夫だよね」とさええいうようになった。人工知能が全能の神になるようだ。 著者は、そのことを人工知能の歴史から解きほぐし、まず「創造的でない単純作業は人工知能に任せればいいというが、人間が行なって仕事は、簡単に人工知能に置き換えるほど単純ではない」という。 現在、人間の知能が十分明らかにされていない。また人間の持つ潜在的な能力について、十分にわかっていない。だから、知能をうわまることができると言えるのか?創造力を人工知能が持つには、結局 人間がなぜ創造力を持っているのかがわからなければ、人間を超えることができないのではないか? 人間の感覚は、身体を通じ、「その場」から得られる情報から作られる。その場において発想を膨らませ、自分自身の思いで行動していく。そのことで、人間は、創造性を発揮する。人間は身体を持ち、自分自身の人生という物語を生きている。この物語が自分自身が今、存在する場である。人間の認識は、意味を見出す行為であり、自分の人生を生きる。独自の物語を生きている。 身体感覚を持たない人工知能は、データを用いた確率的な表現に頼らざるを得ない。人工知能に創造性を発揮せよと指示しても、システムの範囲内でしかできない。人工知能は、創造することもできず、錯覚することもできず、自らの物語を作ることもできない。 アメリカのヴァネヴァーブッシュは、ハイパーメディアという概念を打ち出し、現在のパソコンの基礎を打ち出した。その時には「人とコンピュータの共生」を考えていた。 リックライダーは、「人は目標を定め、仮説を立て、尺度を決め、評価を決める。計算機械はルーチン化された仕事はするが、それは技術的かつ科学的思考の洞察や決定の材料に過ぎない」とした。 地球規模のコンピュータネットワークを構想した。アランケイは、パソコンを手のひらで扱えるような「ダイナブック構想」を打ち出し、ジョブスはそれを見て、マッキントッシュを開発した。 人工知能は、学習データを用いた創作、定式化された問題の解決はできるが、人間の創造性は、自分が何をやりたいかを思うことで、問題を設定できる。目的をも、自ら設定し、自らの物語による創造や問題の創造ができる。つまり、人工知能とは何か?人工知能によって、何を実現したいか?ということが明らかになっていないので、人工知能が何に使えるのかが見えてこない。 ピータードラッカーは、予期せぬ成功が、イノベーションを実現する上で最も注目すべきものといい、人間は予期せぬものを見出すことができる。「たとえ真実とは異なるものであっても、そこに意味を見出すことによって、私たちはそこには描かれていない物語を想像していくこともできる」 人工知能の登場と開発によって、人間の持つ創造力とは何かを突き詰めることができる。 「クレタ人は嘘つき」だとクレタ人が言った。という自己矛盾は、数学にも同様の構造が含まれ「不完全性定理」によって証明される。ある温度になると温度センサーが検知するが、温度センサーが壊れた場合に、温度センサーチェックがいる。無限に温度センサーチェックがいるようになる。 グーグルのジョン・ジャナンドレアは、「人工知能という言葉自体が間違っている。誇大宣伝を生む温床だ」とさえいう。今、正確に人工知能について、考えるときこの本は最適である。 フィルターバブル、限定環境、場の関係性など、新しい知見がたくさん得られ、書評に収まりきらないほど豊潤な人工知能の考察。素晴らしい! 人工知能に未来を託せますか?という問いかけに、託せるのは人間だと堂々と宣言しているのが、清々しい。

Posted byブクログ