〈正義〉の生物学 の商品レビュー
生物学の本のようで、歴史や倫理や哲学の本。 答えがあるわけではなく、この本読んで自分で考える事が大事かと。 言葉の定義や仮説検証の仕方に、筆者の研究者としての真摯な態度が見えて良い。
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答えの出ない問題という印象。著者の意見に納得できる部分もあれば、できない部分もあり、自分で考えることが大事なのかなと。
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①生き物の保全はおこなうべきことなのだろうか?、②もしおこなうべきだとするならば、その理由はどこにあるのだろうか?という問いについて、保全不要論や弱肉強食論、役に立つから守る論などを論駁しながら考察し、どの生き物の命も尊重すべきであり、生き物を保全するのは正義に適うので、生き物の...
①生き物の保全はおこなうべきことなのだろうか?、②もしおこなうべきだとするならば、その理由はどこにあるのだろうか?という問いについて、保全不要論や弱肉強食論、役に立つから守る論などを論駁しながら考察し、どの生き物の命も尊重すべきであり、生き物を保全するのは正義に適うので、生き物の保全をおこなうべきと結論づける。 生物の保全はなぜ必要なのかについてじっくり考えるきっかけにはなったが、著者の論の進め方には、詭弁のように感じるところも多く、かなり違和感を覚えた。特に、後半の社会生物学論争の部分で、戦争を好むのは生存競争に有利だから致し方ないという説は論理的飛躍があると否定しておきながら、自身の生物保全=正義説の根拠として、正義にしたがって行動するのは適応的であり、生存競争において有利に働く可能性があるということを挙げているのは御都合主義と言わざるを得ないと感じた。また、人間中心主義を否定しておきながら、結局、結論部分で人間中心主義に近いこと(生物多様性はヒトの生存にとって必要)を言っているのも一貫性がないように思った。さらに、生命中心主義の射程は動物に限られ、植物はふつう対象から外れるというのを特段の理由の説明なくさも当然のように書いていたのも疑問符だらけだった。 生き物を保全することは確かに必要だと思うが、それはとどのつまり、人間中心主義からしか導かれないのだと思う。「全ての生き物の命は尊いから」というのも、それはそういう人間の気持ちを満たすために生き物を保全すべきということになるのではないか。基本的には、具体的な生物多様性のサービス機能を含め、生物多様性(あるいは生態系)は人間の生存にとって必要だからというところに落ち着くのではないかと思う(その点で、論の運びや「正義」を持ち出すところは別にして、著者の結論に大きな異論があるわけではない)。 本論とは別に、本書で紹介されている、過去の生物の絶滅の歴史やヒトの進化などの様々な生物学や生命倫理学等の知見は興味深いものが多く、勉強になった。
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「トキやパンダを絶滅から守るべきか」を念頭に、これでもかこれでもかと、仮説を説いていく内容だ。途中、苦しくなってくるが、読み終わった時には、納得感で満たされることになる。
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「四度目の大量絶滅」の話には驚き、焦りを感じた。 「生存競争だから仕方ない」とかの主張に対して、1つ1つ使われてる言葉の再確認から始まるので分かりやすく、考え直す切っ掛けとなったのが良かった。その代わり既知の情報ばかりで、新しく得られた知識は「四度目の大量絶滅」だけだったけど…...
「四度目の大量絶滅」の話には驚き、焦りを感じた。 「生存競争だから仕方ない」とかの主張に対して、1つ1つ使われてる言葉の再確認から始まるので分かりやすく、考え直す切っ掛けとなったのが良かった。その代わり既知の情報ばかりで、新しく得られた知識は「四度目の大量絶滅」だけだったけど……。 著者が言うように、最終的に主張が弱いのが残念。本を読んでも、考え直す切っ掛けとはなるけど、自分の主張が変わるほどの話はなかった。 252ページ『「正義に従い行動しなさい。さもなければ、あなた自身が生き残れないかもしれませんよ」というメッセージは、「正義に従い、ヒトだけでなくあらゆる生命を尊重しなさい。さもなければ、あなた自身が生き残れないかもしれませんよ」と読み変えることができるでしょう。』など、論理の飛躍としか言えない部分が時々ある。その次のバイオスフィアを先に持ってきたら良いのに。 でも、最終的に遺伝によるバイオスフィアと、絶滅の不可逆性によって保全を推すのも無理がある。バイオスフィアはそれこそ遺伝は自然淘汰や環境によって変わるものだから現代の価値観が変わってると考える方が自然だし、不可逆性については「竹林は負の遺産」と182ページから論じられてる通り。だから自分の価値観が変わるような本とはならなかったんだと思う。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
表紙裏の言葉には 過去の地球で起きた五度の “大量絶滅”をはるかに凌ぐ勢いで 生物多様性が失われつつあることがわかってきた。 この第六の大量絶滅期を生きる私たちは, 生き物の保全をおこなうべきだろうか? もしおこなうべきだとすれば, その理由はどこにあるのだろうか? と書かれている。本書には,この質問に対する著者の回答が書かれている。回答かだけ知りたければ,一番最後の章「〈正義〉の生物学」を読めばいい。 本書のおもしろさは,「今の生物多様性を守らなければいけない」という理由として挙げられている内容に対して,一つ一つ取り上げ,学問的,哲学的にいちゃもんをつけるところにある。「あなたのいいたいことはわかる…でもね~」という感じで論理は進められていく。一般的に広まっている「生物多様性を保全すべき理由」を一つ一つ吟味して,「それじゃあ不十分ですよ。」「それじゃあ,あまりに人間中心主義でしょ。」「あなたの倫理を突き進めると,こんな結論になっちゃいますよ」といわれると,「じゃあ,どう考えればいいのだよ」と著者の考えを知りたくなるという仕組みだ。 弱肉強食と生存競争とのちがいや,進化論,社会ダーウィニズムにも触れられている。最後は,〈正義〉を持ち出してくるのだが,それはエドワード・ウィルソンの理論とも深く関わっているようだ。わたしは,本書で,はじめてエドワード・ウィルソンという人を知ったのだが,なかなかおもしろい生物学者のようだ。考え方がそうとう極端みたい。 著者がどんな結論を出しているのかをここに書くのはよそう。以下の部分を紹介しておくにとどめる。 ウィルソンは,「生物種が絶滅へと向かうのを放置するのは,考えられるかぎり最悪のギャンブルである」と述べています。なぜならば,もしバイオフィリア仮説が正しければ,人類は自分たちの命を守るうえで途方もなく重要な生物多様性を、自ら手放していることになるのですから。(p.255) 人の〈正義〉は自然選択で定着したのか…なんて,今まで考えたこともなかった。 人への感染を根絶させた「天然痘ウイルス」まで,実験室の中ではしっかり管理し,培養しながら生きながらえさせている人間。 いやー,刺激的な本でした。
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生物学における倫理。倫理的に正しい直感が遺伝形質からくるのかもって話は面白かった。ITにおける倫理がちっぽけに思えるテーマだなあと思った。
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(三木敦朗先生(森林・環境共生学)おすすめ図書) ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆ http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB31275591 ★三木先生による紹介記事はこちら★ https:...
(三木敦朗先生(森林・環境共生学)おすすめ図書) ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆ http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB31275591 ★三木先生による紹介記事はこちら★ https://astatel.net/book/b029.html
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生物の絶滅を防ぐという一見当たり前のように思えることを、生物学だけでなく倫理学等含めて幅広く徹底的に検証しようとする姿勢が面白い。
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なんで生物が絶滅する事が悪いの? この疑問に対するひとつの解答を提示する本。 環境保全の理由としてよく挙げられるのが、「生物多様性を守るため」というもの。しかし、生物多様性を守る理由、すなわち「生物の絶滅は悪だ」と考える理由はあまり考えられていない。本書においては、この生物を...
なんで生物が絶滅する事が悪いの? この疑問に対するひとつの解答を提示する本。 環境保全の理由としてよく挙げられるのが、「生物多様性を守るため」というもの。しかし、生物多様性を守る理由、すなわち「生物の絶滅は悪だ」と考える理由はあまり考えられていない。本書においては、この生物を絶滅する理由を倫理的な視点を中心に、応用生物的な側面も含めて解説している。 他の多くの生態学的な本が述べてきた「人類の発展に資する」という理由の危うさから、「自然の摂理だから絶滅なんてしょうがない」論まで丁寧に検証している。 小難しくなりがちな環境倫理学を分かりやすく砕き伝えた名著だと思います。
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