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日本蒙昧前史 の商品レビュー

3.8

14件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

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2024/08/01

面白かったし,この話のモデルはこの人なのだな,という類想もできた。でも文章がいかにも日本の古いタイプの男性としてのステレオタイプで、あまり好きにはなれなかった。

Posted byブクログ

2023/09/18

まさに帯分通り「語りの魔術」 昭和の時代に実際に起きた出来事が神の視点で語られていく。 タイトルも改行の少なさもあって苦戦するだろうと思っていたが、語り手さんの話を聞くような感覚でするすると読めてしまった。 実際にその時代のことはあまり知らないのでどこまでがフィクションなのかは...

まさに帯分通り「語りの魔術」 昭和の時代に実際に起きた出来事が神の視点で語られていく。 タイトルも改行の少なさもあって苦戦するだろうと思っていたが、語り手さんの話を聞くような感覚でするすると読めてしまった。 実際にその時代のことはあまり知らないのでどこまでがフィクションなのかはわからないが、当時を知らない人の方が面白く読めるのかもしれない。 確か、文學界で続編が掲載されていた気がするので そちらも単行本化することを期待。 あと梨ちゃんが言っていた通り、カバーの手触りが最高。

Posted byブクログ

2023/08/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

グリコ森永事件、角福戦争、横井庄一さんの帰国、五つ子誕生・・・。今となっては歴史上のできごとのように遠い昔になってしまったようにも思えるが、虚構を交えながら細部を書き込んだこの本を読んで、当時の大騒ぎの様子や世間の雰囲気がくっきりと思い返された。さすがに唖然としたのは、国、大阪府、財界で費用負担や責任の所在などを醜く押しつけ合った末に何とか開催したものの、実際には外国人来場者がほとんどなかったという大阪万博のこと。「人類の進歩と調和」を表向きの理念としたが、誘致の動機は単に経済効果(大阪府の金儲けの手段)だけだったという。歴史は繰り返される。愚かに。

Posted byブクログ

2022/05/29

ルポルタージュ的にエピソードをつなぎ合わせ、時代をあぶり出す意図か。下手な伏線の回収など期待するほうが愚昧。

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2022/01/11

事前に設計図をつくらず、冒頭の一文を決めて「場当たり的に書き進める」、著者の磯崎健一郎さんのインタビュー記事を読んで知った、磯崎憲一郎さん独自の創作手法。 その技術の凄さに圧倒されたし、こういった歴史的な出来事を題材とした小説をあまり読んでこなかったにも関わらず、こんなにも勢いよ...

事前に設計図をつくらず、冒頭の一文を決めて「場当たり的に書き進める」、著者の磯崎健一郎さんのインタビュー記事を読んで知った、磯崎憲一郎さん独自の創作手法。 その技術の凄さに圧倒されたし、こういった歴史的な出来事を題材とした小説をあまり読んでこなかったにも関わらず、こんなにも勢いよく滑るように読めてしまったのは、その滑らかな文章技術にあるのだろう。 冒頭のグリコ・森永事件から、日航ジャンボ機墜落事故、大阪万博開幕から太陽の塔の目玉男事件、日本初の五つ子誕生、ロッキード事件、グアム島の密林に二十八年間身を潜めた元日本兵等、昭和の20年間を虚構を交えて綴られた小説。 神の視点で、語り手を自在に換えつつ、固有名を伏せた状態で語られている。改行も殆どなく、本来ならば句点がくるであろう部分に読点が用いられ、流れるように話が進んでいく。 この小説の中には、心にグッときて、読んだ後も頭の中でぐるぐるしている言葉が多くあるので、いくつか引用して残しておこうと思う。 「我々はじゅうぶんに無知で、蒙昧ではあったが、自分たちの理解を超える事象に対してまで恥ずかし気もなく知ったか振りをするほどは、傲慢ではなかったということなのか?」(P,169) 「金という権威に負けて、服従させられている!本来的には延々と続く労働から人間を解放する機能を担っていたはずの貨幣が、逆に人間を束縛している!これはまったく信じ難い事態だった。」(P,230) 「私がどうしても受け容れることができないのは、世の中のありとあらゆる価値が、金額で、数の多少で推し量られるようになってしまったという愚かさ、馬鹿さ加減、ただその一点であります」(P,234) 「世の中の興味関心が薄れ、忘れ去られた後でも、虚構ではない現実の人生は途切れることなく続いている、この日の出来事はその証明に他ならなかった。」(P,244) 等々、挙げたらきりがない! 特に、「幸福の只中にいる人間がけっしてそのことに気づかないのと同様、一国の歴史の中で、その国民がもっとも果報に恵まれていた時代も、知らぬ間に過ぎ去っている」という言葉は、読む前と読んだ後では心にくるものが違った。 主題とは関係ないが、とにかく活字不足で活字が読みたい!というときについ手に取ってしまうような、改めて文章を読む楽しさを味わえた一冊でもあった。 第2部が載っている文學界の10月号、買っておけばよかった〜( ; ; )

Posted byブクログ

2021/02/26

いやはや凄い著述。1970年、80年代の出来事(登場順に、グリコ森永事件・豊田商事会長殺傷・日航機墜落事故・角福戦争・五つ子騒動・大阪万博土地収容問題・太陽の塔占拠目玉男・三島由紀夫自決・浅間山荘事件・横井さん帰還等)について、まるでその場に居合せたかの様な詳細な記述が延々と続く...

いやはや凄い著述。1970年、80年代の出来事(登場順に、グリコ森永事件・豊田商事会長殺傷・日航機墜落事故・角福戦争・五つ子騒動・大阪万博土地収容問題・太陽の塔占拠目玉男・三島由紀夫自決・浅間山荘事件・横井さん帰還等)について、まるでその場に居合せたかの様な詳細な記述が延々と続く。それも「…であった、…していた、…した、…だった、…」と、普通なら句点で切るところを読点で延々繋いでいくという独特な語り口。最初は戸惑うも、次第にそれを良い勢いに感じる様になって読み進みました。 あの当時は「我々はじゅうぶんに無知で、蒙昧ではあったが、自分たちの理解を超える事象に対してまで恥ずかし気もなく知ったか振りをするほどは、傲慢ではなかった」「当時の世の中はまだまともだった」という気は確かにする。

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2022/12/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

日本蒙昧前史 著者:磯崎憲一郎 発行:2020年6月25日 文藝春秋 こんな小説があるのか!という驚異の作品だった。たぶん、これは傑作なんだろうと思う。 会話がほとんどない。少し出てくるが、普通は改行して「」に挟んで会話文を作るが、改行は一切なし、「」はあるが地の文の中に閉じ込めて間接話法に近いような言い回しで表現している。 段落替えも少ない。つまり、1段落が非常に長い。 信じられないほどの長文ばかり。野坂昭如のように、通常なら「。」で区切る文も「、」で済ませてつないでいく。例えば、「○○○した」という文も「、」でつなぐ。そこに接続詞もない。 240ページ余、ずっとこの調子。240ページだと、通常は250枚、10万字ぐらいだろうけど、同じ250枚としても文字数は1万字よりだいぶ多いのではないだろうか。 とにかく地の文で一気にまくし立てるように進めていく。語っていく。「グリコ森永事件」と思われる事件でマスコミ放送された子供の声による「場所指定」の言葉から始まり、グリコ社長と思われる男の話になり、日航機墜落の話から、なぜか総理になる前(田中角栄に敗れたばかり)の福田赳夫と思われる政治家の高級キャバレー通いの話へと進み、その話が中心となり、NHKの山下記者と思われる五つ子ちゃん誕生の話がチラリと出てきて、最初の区切りが終わる。 次は五つ子ちゃんの話が中心となる。NHK山下記者を思わせる人の人生について語る。高校生の時に奥さんになる女性と知り合い、結婚し、子供が生まれ、マスコミの取材攻勢に悩まされ・・・ 次は、1970年の大阪万博で太陽の塔の〝アイジャック〟をした男の話。北海道旭川での幼少期から北大へと進学し、事件を起こすまで。そして、ジャックしていた1週間余に読んだのは「葉隠入門」だったこと、そして、その作者(三島由紀夫のことだろう)が割腹自殺したことで締めくくり。 最後の話は、その万博開会式に貴賓席に来ていたノーベル賞作家(川端康成のことだろう)の自殺から始まり、グアムから帰還した元日本兵(横井庄一さんのほかない)の話となり、彼が見合い結婚し、選挙に出て落選する話、その後に夫婦で真に平穏な人生を送る。 固有名詞は、NHKと日航ぐらいで、個人については一切出していないが、あきらかにすべて特定できる書きぶり。 1960年代半ばから1970年代半ばまでのクロニクルを、それこそ半藤一利風に語っていく史実ものかと勘違いしたくなるが、我々がテレビや新聞で眺めてきたのはそれらの出来事の外観に過ぎず、その当事者になったフリをして著者の創作で語っていった〝嘘〟の塊がこの小説。史実と違うことも多い。例えば、大阪万博の会場が千里丘陵に選ばれた理由の一つに中国縦貫道により中国や九州からの交通の確保とされているが、当時、まだ中国縦貫道はなかった。千里丘陵の前は生駒山麓が有力候補地だと書かれているが、それもデタラメで本当は大阪市内の南港というのが真実だ。 しかし、そうした〝嘘〟があたかも真実でノンフクションのように響き、読者である我々が妙に納得し、共感してしまう理由。歴史の真実を知ってしまったかのような錯覚。これはなんだろう。陰謀論がはびこる昨今に対する警鐘ととれないこともない。 磯崎憲一郎という芥川賞作家の作品は、たぶんこれまで読んでいないようにも思うが、受賞作ぐらいは読んでおかないと話にならないというぐらい、すごい作品だった。 なお、「日本蒙昧前史」のタイトルの解釈についてだが、小説全般に蒙昧な時代の有様が描かれているので、蒙昧な時代の前半史という意味に取れるが、ところが、太陽の塔事件に絡んで、「人に語って聞かせたくなるような事件がじっさいに起こったぶんだけ、やはり当時の世の中はまだまともだった、そう思いたくもなってしまう、核エネルギーの平和利用は可能であると主張し・・・」というような下りがあるのを見ると、蒙昧な時代になる前の歴史、という意味にも取れる。

Posted byブクログ

2021/01/20

この本すごい。好き。私的に今年No.1の本。知性にも感性にも響く。20世紀後半のこんな語り方があるなんて。  最初に読んだ磯崎さんの作品が『終の住処』だったのですが、これが読んだ当時の私にはあんまり合わなかったので、以後、手に取る機会がなかったのだけれど、改めて他の作品も読んでみ...

この本すごい。好き。私的に今年No.1の本。知性にも感性にも響く。20世紀後半のこんな語り方があるなんて。  最初に読んだ磯崎さんの作品が『終の住処』だったのですが、これが読んだ当時の私にはあんまり合わなかったので、以後、手に取る機会がなかったのだけれど、改めて他の作品も読んでみます!

Posted byブクログ

2021/01/06

鶯茶色のすっきりした表紙がしっくりくるような内容で,読むほどに面白く他にもいろんなニュースがあったはずだが,選ばれたニュースで時代の雰囲気とか実は知らなかったこととか,忘れていたことを思い出したりした.そして今現在に続く例えばマスコミのあり方や人々の節操のなさ,交通事故の多さに注...

鶯茶色のすっきりした表紙がしっくりくるような内容で,読むほどに面白く他にもいろんなニュースがあったはずだが,選ばれたニュースで時代の雰囲気とか実は知らなかったこととか,忘れていたことを思い出したりした.そして今現在に続く例えばマスコミのあり方や人々の節操のなさ,交通事故の多さに注目しているのも我が意を得たりという気がした.たくさんの人に読んで欲しい本です.

Posted byブクログ

2021/01/04

フィクションといわれても、同時代人にとっては、あぁーあれね、あの人ね、てな感じで記憶をくすぐられる。面白くて一気に読んでしまった。

Posted byブクログ