漣のゆくえ の商品レビュー
感情の内部の表現というのだろうか、モノローグ的な文章がなく、行動と風景の描写でストーリーが進む。淡々とした印象。 しかしながら十分に感情は伝わる。表現力が大変に上手いなあと思う。 人の死と遺された人の気持ちの折り合い。 葬いはそういうもの。 今回も多種多様な葬いが描かれている。...
感情の内部の表現というのだろうか、モノローグ的な文章がなく、行動と風景の描写でストーリーが進む。淡々とした印象。 しかしながら十分に感情は伝わる。表現力が大変に上手いなあと思う。 人の死と遺された人の気持ちの折り合い。 葬いはそういうもの。 今回も多種多様な葬いが描かれている。 人情ものにもなり、ミステリーにもなる、秀逸な題材だなと、葬い屋を主役に据えたことの巧みさに感心する。 おちえの気持ちに一つの区切りがついただろうか。まあまあ割り切れないが、少しだけ救いのある内容で良かった。
Posted by
『とむらい屋颯太』続編。 颯太を主とした葬儀屋“とむらい屋”の面々が様々な死と関わっていく、連作六編が収録されています。 個人的に、今回は“女性の業”がテーマのような印象を受けました。 第三章「冷たい手」に登場した、母親に自殺されて人生諦めモードになっていたお吉が、“とむらい...
『とむらい屋颯太』続編。 颯太を主とした葬儀屋“とむらい屋”の面々が様々な死と関わっていく、連作六編が収録されています。 個人的に、今回は“女性の業”がテーマのような印象を受けました。 第三章「冷たい手」に登場した、母親に自殺されて人生諦めモードになっていたお吉が、“とむらい屋”メンバーに加わる展開になり、タイプは違いますがやはり母親を亡くしているおちえとのバランスが興味深いです。 そのおちえですが、第六章「漣の行方」で母を馬で蹴り飛ばして死なせた(ひき逃げみたいなものですね・・)武家と対峙することになり、謝罪されたことで完全にではないですがわだかまりが軽減できたのかな、と思います。 勝手に今後も続くと思っているのですが、この先新メンバー・お吉の心境や、皆の関係性に変化が訪れるのか見守りたいですね。
Posted by
シリーズものだが2作目から読んでしまった。 さらっと読める連作。 もうちょっと1話が長くてもいいかなーとおもうが。 江戸の弔いについていろいろ書いてあっておもしろい。
Posted by
100人、人がいれば100通りの人生があって、そして当たり前のように100通りの死がある。人は生をうけた時点で、早かれ遅かれ死ぬ。わかってはいても訪れてほしいものではないけど。 前作より"命"の重みを感じたものになっているなと思いました。 そして、1人の死に...
100人、人がいれば100通りの人生があって、そして当たり前のように100通りの死がある。人は生をうけた時点で、早かれ遅かれ死ぬ。わかってはいても訪れてほしいものではないけど。 前作より"命"の重みを感じたものになっているなと思いました。 そして、1人の死によってその人の生き様が明かされていくこの物語で、改めて、どの時代にも何通りもの生き方があり、それぞろに大切な人生があったのだと、これからも自分の人生について考えさせられる物語だなと、感じました。
Posted by
シリーズ第二作。 弔いに必要な道具の貸し出しから葬儀一切の取り仕切りまで、弔いに関することなら何でも取り扱う弔い屋を営む颯太が出会う、様々な弔いとそこに関わる人々の話。 前作でも感じたが、一話をもう少し長くして良いのでもう少し掘り下げて描いて欲しい。 中途半端だったり、ここぞと...
シリーズ第二作。 弔いに必要な道具の貸し出しから葬儀一切の取り仕切りまで、弔いに関することなら何でも取り扱う弔い屋を営む颯太が出会う、様々な弔いとそこに関わる人々の話。 前作でも感じたが、一話をもう少し長くして良いのでもう少し掘り下げて描いて欲しい。 中途半端だったり、ここぞというところをサラッと説明書きで流されたりというのが勿体ない。 ただ今回はおちえが長年抱えてきたわだかまりが少し晴れたようで良かった。その相手も同じくわだかまりとして抱えてきたことが分かって、だからと言って亡くなった人が甦るわけではないが、それでも少しは納得出来たのではないか。 そして今回から弔い屋メンバーに加わったお吉。彼女もまた幼い頃に母親が自殺するという辛い過去を負っている。 そのせいで自棄になって敢えて自分を貶めるような生き方をしてきた彼女だが、かつて母親の弔いを担った颯太に再会し新たな一歩を踏み出した。ここが新たな居場所になれば良いと思う。 今回は出合茶屋や、その手の店で亡くなった人の話が多かった。 自業自得とは言え、その弔いはぞんざいでかわいそうな気もする。しかしどこで死のうが、死人が金持ちだろうが貧乏人だろうが、周囲に愛された人だろうが孤独な人だろうが変わらず手を抜かない颯太の死人と仕事に対する姿勢が格好良い。 もちろん弔いの豪華さや慎ましさの違いはあるが、弔う側の人間が出来る範囲で最大限のことをする。 『お節介長屋』の話が良かった。自分が卑屈だと周囲まで歪んで見えるが、そこが逆になれば違う景色が見える。 相変わらず颯太に悪態を付く韮崎同心の、意外と優しい部分も見えて嬉しい。
Posted by
初出 2018〜19年「読楽」 シリーズ第2作 颯太が率いるとむらい屋ははぐれ者の集まりで、旦那寺を持たない長屋の住人や訳ありの葬儀を請け負うのだが、生者と死者の思いを大切にして丁寧な別れの儀式をする一方、訳ありのときは定町廻り同心の韮崎から手下のように使われることもある。 ...
初出 2018〜19年「読楽」 シリーズ第2作 颯太が率いるとむらい屋ははぐれ者の集まりで、旦那寺を持たない長屋の住人や訳ありの葬儀を請け負うのだが、生者と死者の思いを大切にして丁寧な別れの儀式をする一方、訳ありのときは定町廻り同心の韮崎から手下のように使われることもある。 階段から落ちて死んだとされる吉原の禿(見習いの幼女)の体には折檻のあとがあり、材木商の主人が心臓病で急逝して通夜に乗り込んできた吉原の常世太夫は、「身請けの約束が消えてしまった」と嘆いて見せたが、颯太たちに嘘泣きと折檻をたしなめられる。 小間物屋の内儀が、突然知らない男たちに、実の父親だと死体を置いて行かれて途方に暮れた。死体は事故死した植木屋で幼いころ養女に出していたとわかる。 隣で寝ていた母が首をくくって長屋にいられなくなったお吉は、子供屋(私娼窟)にいたが、古株の同僚が二階から落ちて死んだとこで、颯太に再会しとむらい屋に加わる。 酒問屋の隠居が長屋に移り住んで孤独死するつもりでいたが、長屋のお節介住人たちは放っておかない。颯太は「人は死んでゆく姿を見せなければならない」と諭す。 出会い茶屋で腹上死した商家の主を、得意先の帰りに病死したことにして遺体を運ぼうとすると、別の部屋で元結屋の主人が殺されていた。事件の究明は御白洲へ持ち込まれる。 船の上で他殺体となっていた茶屋の娘の傷を見て、颯太は心中だと見抜く。数日後の夜遺体のない次男の葬儀の依頼をしに来た武士が、おちえの母親を馬で死なせた旗本だと気づき、おちえは母のことを責める一方、自分が母親を忘れないように、心中した次男のことを忘れないでほしいと言う。表題作のこの章が出色。
Posted by
- 1