陸海の交錯 明朝の興亡 の商品レビュー
明という時代の重みが伝わるコンパクトだが考えさせられる良書。 明が何を背景に生まれ、何を重荷として滅亡に至るのかを考える重要性を学んだ。
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岩波新書の「シリーズ中国の歴史④」は、「陸海の交錯ー明朝の興亡」と題された1冊。これまでの3冊とは異なり、単一の明朝300年の歴史叙述にフォーカスされる。 ①中華と夷狄の抗争、②華北と江南の南北の対立、③草原を含む大陸中国と東南沿海の海洋中国との相克、以上の3つの対抗軸が「明初...
岩波新書の「シリーズ中国の歴史④」は、「陸海の交錯ー明朝の興亡」と題された1冊。これまでの3冊とは異なり、単一の明朝300年の歴史叙述にフォーカスされる。 ①中華と夷狄の抗争、②華北と江南の南北の対立、③草原を含む大陸中国と東南沿海の海洋中国との相克、以上の3つの対抗軸が「明初体制」によっていったんは一元化・画一化される。 この明初の「絶対帝制」は、儒教の論理に裏打ちされていた(本書でしばしば参照されるp.34の図8)。国家の側からの「支配の論理」と社会の側からの「被支配の論理」が、儒教の理想世界と現実世界への適用、これが明初に厳格な体制として確立し、海外を含む「中華世界システム」も朝貢一元体制として成立した。著者は近代世界システムが誕生する以前に「東アジアにはまったく異質で完璧なまでの世界システムが存在した意味は限りなく重い」(p.222)と述べる。 明朝300年の歴史はこの「明初体制」が現実の社会の変化(銀の流入、商業の発展などなど)に揺さぶられ、弛緩していく「固い体制」から「柔らかい体制」への移行期であり、その流れは清朝にも引き継がれていく。
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明というのは混迷を窮めた時代であったことが痛切に描かれている。 特に、時の権力者たちについては手厳しい論評が目立つ。 経済の発展、社会階層の融和。現代の感覚でいうと是であるこれらの要素が国家衰亡の一因であるというのには不思議な感覚をおぼえるが、こと民主的な社会においては治世の巧...
明というのは混迷を窮めた時代であったことが痛切に描かれている。 特に、時の権力者たちについては手厳しい論評が目立つ。 経済の発展、社会階層の融和。現代の感覚でいうと是であるこれらの要素が国家衰亡の一因であるというのには不思議な感覚をおぼえるが、こと民主的な社会においては治世の巧拙が命綱ということなのだろう。 儒教思想により中華世界を描き出そうとしつつ、時の権力者たちは私利私欲にまみれ、結果として失脚と破局を招く。なんと因果なことであろうか。
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