1,800円以上の注文で送料無料

見えない絶景 の商品レビュー

4.1

11件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    2

  3. 3つ

    2

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/06/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ブクログで応募し、(なぜか!)プレゼント当選していただいた本である。最新の本をいち早く読めたのはとてもありがたい。まずはお礼を申し上げます。 日頃、この手の本には関心はあるのだが、果して読んでも理解できるのかという不安が勝ってしまい、なかなか手にする機会がなかった。本書も、いただいたものの内容についていけるか半信半疑で読み始めた。 本書のかなりの部分を占める第一章は、バーチャルな潜水艇で世界中の深海の光景を観察しながら、世界一周をするという形式で書かれている。実際に深海調査も行っている著者が執筆しているためか、記述された内容は臨場感にあふれ、なおかつ微に入り細にうがったものになっている。読み始めたときに感じた不安は、杞憂に終わった。 深海について語ることは、すなわち地球の成り立ちを探ることだということがわかる。人類の営みを説く歴史は、せいぜい数千年間の時間軸での出来事である。一方、地球の歴史は、数十億年というスケールだ。 地球の歴史という時間軸で見ると、人類はついさっき誕生したようなものである。大きさにせよ時間的な長さにせよ、地球そのものを対象とすると、とたんにスケールが桁外れに大きくなる。気の遠くなるような時間の経過の中で、地球は隕石の爆撃衝突に出会い、その結果、灼熱のマグマに覆われた星と化す。それがもとで海と大陸ができ、生命体が誕生する。さらには唯一の衛星である「月」も生まれる。 これらの出来事は、あまねく偶然の産物だろう。そして、一連の偶発事象が、正しくこの順番で発生したことで、地球は稀なる確率によって生命体を有する星となった。しばしば地球以外に、宇宙に生命体の棲む星はあるのかということが取り沙汰されるが、本書を読めば「ない」とは言えないことが分かるだろう。しかし、同時に、その可能性は極めて低い奇蹟的な蓋然性によるものであることも解る。蓋然性に乏しい事柄は、一般に「夢」や「ロマン」といった言葉で表現される。ゆえに、宇宙に想いを巡らすことは、ロマンあふれる行為たりえるのだろう。 ともあれロマンなどといつまでも白昼夢に浸っているわけにもいかない。なぜなら今も地球は活動を続けている。日々、とてつもないスケールで地球は少しずつ変化しているのである。「見えない」海底では絶えず巨大なプレートが移動している。この活動があればこそ、我々は地球上に生命体として存在しうるわけだが、同時に一たび何かしらの契機が訪れれば、人類はあっという間に滅亡させられる可能性もあるのだ。例えば地震――2011年3月11日、東日本大震災は記憶に新しい。この未曾有の震災に、我々はなすすべなく、ただ立ちすくんで、おのが無力さを痛感することしかできなかったが、地球はこの程度のことはいとも簡単にやってのける。 本書によって、地球のもつ素晴らしさと恐ろしさの二面性を理解することができる。これを機に自然災害への備えを見直す機会にすることも有用かもしれない。しかし、備えにも限界はある。地球の上に乗っかって生かされている我々は、地球が牙を剝けばひとたまりもない。それでも本書を読んだ後には、やはりロマンが残っている。

Posted byブクログ