対話力 の商品レビュー
学習科学の知見と、それに基づく授業づくり、教師の授業力の向上のプロセスを解説してくれる概説書。当然、入門も入門でもっと色んな知見があるのだろうとは思うけれども、学習科学についてちょっと知ったかぶりできるくらいのことがわかって、いい本だった。 まず、子どもが新しいことを学ぶ仕組み...
学習科学の知見と、それに基づく授業づくり、教師の授業力の向上のプロセスを解説してくれる概説書。当然、入門も入門でもっと色んな知見があるのだろうとは思うけれども、学習科学についてちょっと知ったかぶりできるくらいのことがわかって、いい本だった。 まず、子どもが新しいことを学ぶ仕組みを、「内外相互作用」と「建設的相互作用」という二つの原理から説明している。「内外相互作用」というのは、五感を通して外界から得た情報を、言葉という別の形で外化することで、情報の捉え方や自分の認識をやり直すことをいう。そして、「建設的相互作用」というのは、そういった言語化を、する側(課題遂行者)、見る側(モニター)と役割を入れ替えながら他者とやりとりすることを通して、認識を深めていく作用をいう。 こうした学習の仕組みを教室での学習に持ち込もうとして紹介されるのが、「知識構成型ジグソー法」である。大雑把にまとめると、グループごとにバラバラの資料を読んだのち、別の資料を読んだ人同士でグループを組み直し話し合いを重ねることで、大きな課題を解決していく授業展開ということになる。 正直、ここらへんのことは知っていたので、特に目新しいことはなかったのだが、こうした授業の型を共有することによって授業改善をした自治体での取り組みについては初めて知ったので、へえ、という感じだった。実際の先生たちの話を聞いてみたいと思った。 いまいちよく分からなかったのは、どうして上のような学習の仕組みが、「知識構成型ジグソー法」という授業の型に行き着くのかはよく分からなかった。この本の中でも、学習科学的知見に基づく授業は、「ジグソー法」に限らないこと、目的に応じて講義型の授業など並行していくことが大切という現場のベテラン教員のアドバイスなどが取り上げられているが、全体として、「ジグソー法」の推しが強い。これまでにやられてきた実践の中でも、「優れた」実践が、ここで紹介されている原理からどう説明されるのかについては、自分なりに考える必要があると思った。 もう一つは、結局のところ、課題の焦点化自体は教師がするわけなので、授業の教育的な価値については、教師の教材研究と教育観によるところが大きい。学びのプロセスを省察するには、この本で言われている知見が使えると思うけれども、その目的の省察には、哲学的な考察が必要になってくるのだと思う。このあたり、この本の中では取り上げられていないので、別途、自分で考える必要があるなと思った。 賛否両論ありそうで、いろいろと考えさせられる本。いずれにせよ、「知識構成型ジグソー法」を推す人たちの考え方や、そのバックグラウンドがよく分かるので、そのあたりを知れて、よい本だった。
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対話の仕組みを授業で実現する手段の一つである知識構成型ジグソー法は、面白そう。だが、その授業づくりは難しい。その手立てや実践例がもっと知りたかった。
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教員向け「知識構成型ジグソー」の紹介,実践例。教員同士の対話的学びにも注目し,そのやりとりを紹介。学びにおける対話の機能。学習課題の設定がポイント。
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VUCAな社会では、課題に対する部分回しか存在しないことが多いのです。そのため、既存の知識を組み合わせて解を出し、ゴールに近づいたらゴール自体を見直して前進する21世紀型スキルと呼ばれる資質、能力の育成と強化が求められている。しかし、これらの資質能力の評価はゴールが可変で変わり続...
VUCAな社会では、課題に対する部分回しか存在しないことが多いのです。そのため、既存の知識を組み合わせて解を出し、ゴールに近づいたらゴール自体を見直して前進する21世紀型スキルと呼ばれる資質、能力の育成と強化が求められている。しかし、これらの資質能力の評価はゴールが可変で変わり続ける者を対象にするため、総括的評価があまり意味をなさない。それ故、世界を出して終わりになる後ろ向きな学びのゴールと総括的評価による序列か、と言う学習評価間から、正解の先を問うなど到達が次のゴールを生む「前向きな学びのゴールと形成的評価による教育改善」と言う各種評価間への刷新と支援が求められている。 p268 知識、技能、思考力 これらを三要素に分割して捉え、まずは知識、技能が身に付いてから思考力等育成できると考える学習館や、思考力すらも分割しトレーニングできると考えを書く習慣が根強い点が問題。 思考を必要とし助長し、試すような状況に中心を置くことが必要。 目標小分けによって、一つ一つ征服していくと言う問題解決のアプローチと、学びに対する表層的イメージが合体すると、どうしてもこうした教え方になってしまう。後ろ向きな学習館はどこにでも姿を変えて現れる。 教育現場の根本的な課題は、学習者間、学習観を開きっていないと言う点にある。 —- 授業改善を行う際は、具体的な子供の発言などどのような学びが起きそうかを予想する。 事後協議では、実際に見えた子供の学びと想定とのズレを報告しあいそれに基づいて支援を検討する。 できる子できない子と言うのは授業をする立場が決めていること。 抽象的な能力を育てたい時でも、抽象論にせずに、子供の姿としてどう実現されそうかを想定する。 評価観が今ひとつ腹落ちしないのでもう一回読みたい。
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