ホハレ峠 の商品レビュー
あれ?大西さんて『ぶたにく』の人じゃないですか。 ダムの是非という以上に、ゆきえさんという1人の女性の人生に、力強さ逞しさと共に、生きる悲しみそのものを思う。山村に生まれ、14歳で親元を離れて紡績工場で働き、写真で見た人と結婚して北海道へ渡って開拓の厳しい生活を生き、また生まれ...
あれ?大西さんて『ぶたにく』の人じゃないですか。 ダムの是非という以上に、ゆきえさんという1人の女性の人生に、力強さ逞しさと共に、生きる悲しみそのものを思う。山村に生まれ、14歳で親元を離れて紡績工場で働き、写真で見た人と結婚して北海道へ渡って開拓の厳しい生活を生き、また生まれた村に戻るとそこはダムになる…。 村の、現金はないけれど四季折々の収穫や自分のやるべき仕事のある豊かな生活と、移転した先でのスーパーで買い物する暮らし。たくさんの人のためにネギも作ってきた「農民のわしが」なんでスーパーで「買わなあかんのか」と言うところに、生きてきたプライドを見る思い。 そうなのだ、「壊すことは簡単」だけど、「積み上げてきた年月は途方もないもので、一度壊したら元に戻すことはできない。その重みは他人には到底わからない」日本各地のダムや公共事業、科学的にも本当に必要なのか、また関係する人たちの人生と計りにかけてそれでも必要なのか、問い直してほしい。
Posted by
ダムに沈む村。 本屋で手に取って気になってしまった。 岐阜県徳山村、かつて地図に存在した村は今は徳山ダムの湖の下に沈んでいる。 この村の最奥の門入集落に最後まで暮らしていた老婆、廣瀬ゆきえの生涯を追うノンフィクション。 門入集落は、村の中心地の本郷ではなく、ホハレ峠...
ダムに沈む村。 本屋で手に取って気になってしまった。 岐阜県徳山村、かつて地図に存在した村は今は徳山ダムの湖の下に沈んでいる。 この村の最奥の門入集落に最後まで暮らしていた老婆、廣瀬ゆきえの生涯を追うノンフィクション。 門入集落は、村の中心地の本郷ではなく、ホハレ峠を越えた隣村との交流が盛んだった。 東京オリンピックの年になっても村には電気は来ず、物流はボッカが担っていた。 冬は雪に閉ざされるこの村で、ゆきえは生まれた。 幼いころは畑仕事を手伝い、 14才になり彦根の紡績工場に冬の出稼ぎに行き、 24才で嫁いだ先は北海道真狩村だった。 北海道真狩村は、門入の入植者が開拓した村だ。 真狩村での取材から、門入の濃密な人間関係に気が付いていく。 2013年8月13日、廣瀬ゆきえ逝去。 「先代が守ってきた財産を、すっかりこと一代で食いつぶしてしまった。 金に変えたら全てが終わりやな」 村の記憶も、つながりも、ダムが全てを沈めてしまった。 読み終わったあと、持ってる中部北陸マップルのページを開いて場所を確認した。 2005年のマップルには、まだ徳山ダムはなく、集落の名前が全て印字されている。
Posted by
- 1
- 2