クロス の商品レビュー
男として生きたいのか、女として生きたいのか、自分の性別が曖昧なまま生きることの不自由さを感じた。おふざけから始まった女装にのめり込み、最初は、かわいいかわいいと褒めて貰えたものの、ゆうじの女装技術が上がっていく度に、周囲の人々は気持ち悪がり、元に戻って!!とせがむ。どこまでが許容...
男として生きたいのか、女として生きたいのか、自分の性別が曖昧なまま生きることの不自由さを感じた。おふざけから始まった女装にのめり込み、最初は、かわいいかわいいと褒めて貰えたものの、ゆうじの女装技術が上がっていく度に、周囲の人々は気持ち悪がり、元に戻って!!とせがむ。どこまでが許容範囲なのか、どのくらいであれば、自分を受け入れて貰えるのか、その境界線が崩れてしまうと、一気に周りの人との距離ができ、最後には1人になった。愛未やタケオの仕打ちが酷すぎて、人間不信になってしまう。結婚した男性が女装にのめり込み、妻である自分を受け入れてくれないと分かった妻の立場に立つと、何とも言えない気持ちになった。自分は誰を愛していたのだろう、とその人自身と自分を疑ってしまうと思う。ジェンダーの理解も進み、自分の性別を自由に選択出来るようにはなってきたが、やはり、自由に選択できるからといって、自分の好きなように選択し、生きていくのは難しいのだろうか。1番理解してもらいたい人に理解されず、結局、見捨てられる。寂しくもあり、誰にも縛られず自由になったとも言える。ゆうじはこれから、どう生きていくのだろうか。周りの人との関係が絶たれた今、ゆうじに残っているのは女装した自分だろう。女装で1人になり、女装に助けられている。ゆうじは、タケオの望む人間になりたいと依存体質で、粘着質で、自分の意思がないような人間に見えるが、実際は、周りから拒絶されても女装を続けるといった、芯の強い人間なのかもしれない。 どこまでも歪で、不快で不愉快で、気持ち悪くて、でも共感出来て、その全てが詰まっている作品だった。
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女装趣味の妻帯者が、女装している自分を好きだという男と不倫して、あまつさえ嫁に女装バレを自分からしていき……。 男でも女でもない、本当の自分を愛してもらいたいという欲望は、止められない。
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ちょっとしたおふざけがキッカケで女装に目覚めた男。妻帯者でありながら割り切れる相手と浮気もし、女装の姿では男と本気の恋をする。自分の性は女なのか男なのか?女装はやめられない。 そして妻は、変身中の男を見て、、、、、。 男は何を望み、どこへむかうのか?
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主人公は色々な物を壊していた。 女装に目覚める前も、マナになってからも。 不倫相手も、マナとして主人公を愛してくれているように見えるタケオも、振る舞いが自然に残酷だった。 これからどうなっていくんだろう。
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若くして結婚した主人公は、「男っぽい関係」に所属することで「男である自分」を確かめていた。 そんな彼に青天の霹靂をもたらしたのは、不倫相手。生活にも性にもだらしない彼女が、酔った勢いで彼に化粧を施した。 新たに、「かわいい」という評価軸が彼に与えられる。 主人公は女装に依存していき、やがて"本当の自分"を理解してくれると思えるような男と出会う。 そうして今度は、男から下される評価に依存するようになる。 自分が何者であるのか。迷子になった彼が選んだ道は、たとえ妻との関係が冷え込もうと、男に手酷く捨てられようと、女装を止めないことだった・・・。 彼はまとう。服を、自分を。
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空虚な小説だと思った。 登場人物全員勝ち組で、キレイだけど中身が空っぽのキャラクターばかりだった。 そんな中でも主人公の「女装」という趣味だけが実存なんだと思った。 自分は女装子に対して未だに「気持ち悪い」と感じてしまう所がある。ポリティカルな部分では差別しないように気をつけているが、個人的にはやっぱり「キモい」と感じてしまう。 この小説だと、主人公が社会面でも容姿面でも恵まれているところが更に嫌悪感を掻き立てた。 なので後半、社会的に落ちぶれていくシーンは「いい気味だ!」と思いながら読んでたが、個人的にはもっと落ちぶれて欲しかった。 妻から離婚され、会社はクビになり、実家からも縁を切られる…、みたいにどんどん破滅していく姿を期待しながら読んでいたんですけど、流石にそこまでいく展開にならかったのが残念だ。 この小説は松浦理恵子のようなフェミニズム小説なのかな?と思った。(…といいつつ松浦理恵子を読んだ事がない私。) 仮にフェミニズム小説であるとしたら、全然埒外の自分が読んでも、そこそこ楽しめた。 という事は、面白い小説なのかもしれない。
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