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赤ちゃんをわが子として育てる方を求む の商品レビュー

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25件のお客様レビュー

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2020/08/10

特別養子縁組を成立させた1人の医師の偉業。成し遂げたことは讃えられるべきで、物語も感動を与える。しかし、そこで思考は止められない。 養子は引き取られればそこで終わりではない。子供から大人への思春期。親の心が折れそうになる時。養父母も聖人ではない。かつて行った引き取るという選択。そ...

特別養子縁組を成立させた1人の医師の偉業。成し遂げたことは讃えられるべきで、物語も感動を与える。しかし、そこで思考は止められない。 養子は引き取られればそこで終わりではない。子供から大人への思春期。親の心が折れそうになる時。養父母も聖人ではない。かつて行った引き取るという選択。それ故に悩む。子供が事実を知る日。実親に会いたいという心を咎めることはできない。血縁が必ずしも優っているわけではない。ただ、実の関係にはない悩みが生じ得ることは認識しないといけない。 「殺人」というこれ以上にない大罪を構成員に強いていても変われなかった日母という組織。時代は進化している?結果的に主人公の告発が功を奏したが、ギリギリの駆け引きの末だった。メディアが正しく報じ、議員が支援したのはこの時代だったからではないか。もし、今なら?時代は退化している?人々がもう一度変わるしかない。

Posted byブクログ

2020/08/03

同じ作家のノンフィクションばかり読んでいたので、題名だけを見て「特別養子縁組」の実態がわかると思っていたが勘違い。読み終わってから小説だと気づいた。 さすが読ませるのが上手いので一気読み、史実に基づいているので「特別養子縁組」が法律で認められるようになった理由がわかる。

Posted byブクログ

2020/07/27

菊田医師による赤ちゃん斡旋裁判の話は聞いたことがあったけど、それに至った背景がよく見えるドキュメンタリーのような小説でした。遊郭で育ち堕胎で命を落とす遊女を目の当たりにし、そんな思いをする女性をなくしたい思いで産婦人科医になった医師が、目の前の命を救うために動いていくストーリーに...

菊田医師による赤ちゃん斡旋裁判の話は聞いたことがあったけど、それに至った背景がよく見えるドキュメンタリーのような小説でした。遊郭で育ち堕胎で命を落とす遊女を目の当たりにし、そんな思いをする女性をなくしたい思いで産婦人科医になった医師が、目の前の命を救うために動いていくストーリーに引き込まれて一気読みでした。

Posted byブクログ

2020/04/26

特別養子縁組には以前から興味があり、寄付での支援もしているので、タイトルに惹かれ手に取った。 様々な事情から妊娠後期なのに中絶を希望する人が後を絶たない一方で、心から我が子が欲しくて不妊治療を長年しているのに授からない人がいる。 そのどちらも救うため、それ以上に赤ちゃんの命を救い...

特別養子縁組には以前から興味があり、寄付での支援もしているので、タイトルに惹かれ手に取った。 様々な事情から妊娠後期なのに中絶を希望する人が後を絶たない一方で、心から我が子が欲しくて不妊治療を長年しているのに授からない人がいる。 そのどちらも救うため、それ以上に赤ちゃんの命を救いたいという信念を持ち続けた菊田医師。 本人ももちろんすごいが、この人を支えたまわりの人(家族や同僚や友人や同志)とのつながりに胸を打たれた。 特別養子縁組の制度が成立するまで、こんなにも大変な道のりだったのかと思うのと同時に、たくさんの命を、人生を救ってくれた菊田先生には感謝しかない。 わたしも微力ながら、今後もこの制度を支援していきたい。 悲しくてやるせなくて、はたまた感動して勇気をもらって、何度も泣けた一冊。

Posted byブクログ

2020/04/23

「子どもを産む」ということは親自身も喜び、周りからも祝福されることだと信じている。いや、信じたい。 望まれないまま生まれてきた子どもたちがいることは当然知っている。けれど、自分が子どもを産んだとき、「世界中が私たちを祝福してくれている」という絶対的な幸福感がその現実への認識を揺る...

「子どもを産む」ということは親自身も喜び、周りからも祝福されることだと信じている。いや、信じたい。 望まれないまま生まれてきた子どもたちがいることは当然知っている。けれど、自分が子どもを産んだとき、「世界中が私たちを祝福してくれている」という絶対的な幸福感がその現実への認識を揺るがしてしまう。 望まない、あるいは望まれない妊娠をしたとき、母親はどうするか。 人工妊娠中絶。現在は22週までの人工妊娠中絶は認められている。というか、逆に22週つまり7か月までしか認められていない。かつて8か月まで行われていた中絶が禁止された。その法律とそこから続く「特別養子縁組法案」の制定を勝ち取るまでの菊田昇医師の闘いがフィクションという形で描かれている。 この説明を読んだだけでは、その6週の違いで何がどう変わるのか、よくわからないと思う。 大人にとって見たら6週間なんてあっという間だ。けれど、胎児の成長にとってその6週間は「人」になるかどうか、という大きくて長い時間なのだ。28週で中絶された胎児は時に生きてこの世に生まれてくる。生きているということは「出産」されたということで、つまり戸籍にその存在が記されるということだ。 中絶する親は自分の戸籍を汚さないことを望む。では、生きて生まれてしまった胎児をどうするのか。 医者が、そっと、殺す、のだ。それが当たり前として行われていたのだ。 遊郭で育った菊田医師は身近に妊娠や堕胎、そしてそれによる死を身に染みて経験していたからこそ、そんな悲しい現実を変えたい、変えねばならない、という強い信念を持つ。 危険な堕胎を避け、生まれてきた子どもを子どもを欲しがる夫婦の実施としてあっせんする。その時に、必要な書類を偽造する。それは法律に違反することだ。罪に問われることになる。けれど、菊田医師の信念は様々な圧力に屈することなく、自分の信念を、信じた道をがむしゃらに進み続けた。 国を、組織を、変えるのは、簡単なことではない。一人の力ではかなわなかった、この偉業。 妻も、医院の看護師たちも、支えてくれた友人たちも、すべてが素晴らしい。 自分なら、できるだろうか。 信じることがあったとして。それが自分のためではなく、苦しく悲しい思いをする誰かのために、自分のすべてをかけて大きな力と闘うことができるだろうか。あるいは、身近にいるそういう人のために、全力で協力することができるだろうか。 泣きながら考えた。今も、考え続けている。

Posted byブクログ