失われたいくつかの物の目録 の商品レビュー
題名で読むことを決めたので、どういう内容かは全く把握しないまま読み始めた。 失われてしまったもの12個に関する話を短編小説のような形で書いたもので、翻訳ということもあって正直読み進めにくかった。 お気に入りは、森の百科事典と共和国宮殿。
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※このレビューにはネタバレを含みます
緒言 p13 たとえばゾウは、臨終を迎える仲間の周りに集まり、鼻でその個体に何時間も触れながら、興奮して鳴いたり、死んでぐったりした体をもう一度起こそうとしたりする。そして最後に亡骸に土や枝をかけてやる。仲間が死んだ場所を、何年も後まで繰り返し訪れたりもする。これには疑いなく高い記憶力と、ことによるとある種の来世のイメージを要すると思われるが、それが私たちの持つ来世のイメージより見劣りするものと考えてはならないし、そもそも双方とも検証のしようがない。 p17-18 未来を支配しようと望む者は、過去を廃さなければならない。あらゆる真実の源を名乗る者は、先駆者たちの記憶を抹消し、いかなる批判的思想をも禁じなければならない。 p19 廃墟は過去と未来が一つになるユートピア的な場所だ。 ツアナキ島 p41 私は地球の内部の力に思いを馳せずにいられなかった。その力が作用している所では、隆起と沈降、興隆と衰退という太古の循環が短縮される。 カスピトラ p52-53 ライオンの勇気を称えることわざは正しい。恐怖が彼を襲うことはない。 ゲーリケの一角獣 p74 すべての限界は越えられるためだけにある。 詩的で濃厚、不思議な読後感。 ちまちま読み進め、ようやく読了。 厚さはそうでもないけど、かなり読み応えがありました。現代文学のようなするする読むことに慣れた読者は嫌いそう。 執拗なまでの名詞の記述、くどい表現とユーモア豊かな言い回しが楽しい。これは長い詩。読み終わったあと、あるいは読み進めている最中、自分は何を読んでいるのだろうかという問い、というか忘却。まるで、ここではないどこかに連れ去られたような感覚。少なくとも私にとっての読書の楽しみを本書は体現していたとも言える。まあ読みやすくはないので、それでも短編集だから飽きたら他を読む。で、戻ってくる。 無駄でいい。でもその中に誰にも言えないような(あるいは言わなくてもいいような)気づきがあれば、それはすごい有意義なこと。 国内でバズることはないけど好き。翻訳面倒くさそうだなと思っていたら、訳者あとがきで想像以上にシステマチックに翻訳作業を進めていて興味深い。限りなく黒に近い紺色の用紙に黒で印刷したイメージも素敵。本の装丁もちゃんとデザインされている。
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私の好みに全く合わない文章で、たいへん読みにくい。欧米人の書く文章によくある、従属節や形容詞のやたらに付いた、説明・装飾過多の長〜〜〜い一文が続いて、著者の言いたいことの核がわからなくなってしまう(意外とたいしたことは言っていないかも)。著者の思い入れや自意識、自己陶酔感が強すぎ...
私の好みに全く合わない文章で、たいへん読みにくい。欧米人の書く文章によくある、従属節や形容詞のやたらに付いた、説明・装飾過多の長〜〜〜い一文が続いて、著者の言いたいことの核がわからなくなってしまう(意外とたいしたことは言っていないかも)。著者の思い入れや自意識、自己陶酔感が強すぎて、辟易してしまう。 内容は今は世界から消えてしまったものごとについてで、面白そうではあるのだけれど、文章が無理すぎて…断念。 翻訳も、個人的には日本語の文章としてわかりやすく簡潔に直してもらった方がおそらく読みやすくなるのだけれど、原文とあまりに離れてしまう翻訳もできないだろうし… 難しいですね。
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目録となっているが、12篇の短篇集のようでもある。 今はない物への偏愛、憧憬と幻視による物へのオマージュ。論文調だったり、小説のようだったり、日記のようなものまであって一つ一つが面白い。 カスピトラがローマの見世物になったりフリードリヒのグライスヴァルト港の絵がリク川の源泉を辿る...
目録となっているが、12篇の短篇集のようでもある。 今はない物への偏愛、憧憬と幻視による物へのオマージュ。論文調だったり、小説のようだったり、日記のようなものまであって一つ一つが面白い。 カスピトラがローマの見世物になったりフリードリヒのグライスヴァルト港の絵がリク川の源泉を辿る旅仕立てになったりして想像の行くところがいい。 そして何より本としての佇まい、章ごとの仕切りの美しさ、ため息が出ました。
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序文が素晴らしい。閉じられた一冊の本は一個の完成された世界であり、それは過去と未来が一つとなる廃墟の世界なのだ。
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文学ラジオ空飛び猫たち第39回紹介本。 「もっとも美しいドイツの本」に選ばれた本書。装丁も作家でありブックデザイナーでもある著者によるもの。まずは「はじめに」と「緒言」だけでも読んでもらえたら。本こそ完璧なメディアという筆者の考察が本に備わる可能性を大きく膨らませてくれると思いま...
文学ラジオ空飛び猫たち第39回紹介本。 「もっとも美しいドイツの本」に選ばれた本書。装丁も作家でありブックデザイナーでもある著者によるもの。まずは「はじめに」と「緒言」だけでも読んでもらえたら。本こそ完璧なメディアという筆者の考察が本に備わる可能性を大きく膨らませてくれると思います。見た目も文章も美しく本好きには魅力的な一冊。筆者が描き出すイメージに触れるのは豊かな体験になると思います。 ラジオはこちらから→https://anchor.fm/lajv6cf1ikg/episodes/39-e102vcl
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「失われたいくつかの物の目録」https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309207940/ めっちゃよかった!素晴らしい読書体験!とても美しい。構成もいいし文章もいい。装丁もいい(装丁家の作者が手がけた原書も見てみたい。訳版と同じなのかなあ?)...
「失われたいくつかの物の目録」https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309207940/ めっちゃよかった!素晴らしい読書体験!とても美しい。構成もいいし文章もいい。装丁もいい(装丁家の作者が手がけた原書も見てみたい。訳版と同じなのかなあ?)本という媒体への愛情を感じつつ、1冊の本の中に広がる世界に没頭できる(おわり
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地図から消えた島、絶滅した生きもの、散佚した古代の詩、燃やされた聖典……。歴史上たしかに存在していながら今は消えてしまった、あるいは存在しないことが明らかになってしまったゆえに忘れ去られてしまった物たちに捧げる、黒と金のレクイエム。 墓石、それともモノリスのような佇まいのハー...
地図から消えた島、絶滅した生きもの、散佚した古代の詩、燃やされた聖典……。歴史上たしかに存在していながら今は消えてしまった、あるいは存在しないことが明らかになってしまったゆえに忘れ去られてしまった物たちに捧げる、黒と金のレクイエム。 墓石、それともモノリスのような佇まいのハードカバーを開くと、各章ごとが濃い藍色のページで区切られ、そこに鈍金色で刷られた章のモチーフがうっすらと浮かびあがる。それは今はない島が載った海図だったり、一角獣の骨格だったり、廃墟と化した貴族の屋敷の在りし日の姿だったりする。 ドイツでブックデザインの賞を獲ったというのが納得の、一目で惹かれる存在感。中身はまた私好みのエッセイと創作のあいだを行き来する作風で、澁澤の『唐草物語』『ドラコニア綺譚集』からユーモアを引いて、山尾悠子『歪み真珠』のマテリアリズムを与えたような感触。 コロッセオでライオンと闘うことになったトラ視点の「カスピトラ」、ピラネージとユベール・ロベールの邂逅を幻視した「サケッティ邸」、サッフォーをめぐる虚実入り混じる「サッフォーの恋愛歌」、忘却物の保管庫になった月にすむ男のモノローグ「キナウの月面図」などが印象に残った。文体も章ごとに変わり、「マニの七経典」はボルヘス風、「グライフスヴァルト港」は動植物の名前がたくさんでてきて梨木香歩みたい。 モチーフと物語のあいだにあまり飛躍がなく、創作ベースのものはありきたりな感じもした。その分、文章はとても端正で、装丁の佇まいに惹かれて読んだ期待は裏切られない。
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緒言を読むのから、結構な気力・知力を要求される。 地図と、辞書またはスマホを側に置きながら読み進めないと、文字だけが頭を流れて、イメージが浮かばず、世界が形作られない。 様々な文体、対象について描かれていて、この本の読書を通じて、この本に慣れることはなく、常に挑むような感覚。...
緒言を読むのから、結構な気力・知力を要求される。 地図と、辞書またはスマホを側に置きながら読み進めないと、文字だけが頭を流れて、イメージが浮かばず、世界が形作られない。 様々な文体、対象について描かれていて、この本の読書を通じて、この本に慣れることはなく、常に挑むような感覚。 一読だけでは内容を掴みきれない。時間を置いて、もう一度読み、咀嚼したくなる。
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読者を選ぶ本。博物学や、内容紹介で挙げられているモチーフに惹かれた人には面白いかもしれない。でも文体も話ごとにバラバラでどうしても苦手な文体もあったし、基本的に教養が高い人じゃないと単語がいちいちわからず調べたりするはめになる。きりがないのでわからないまま読み飛ばしたりしたけれど...
読者を選ぶ本。博物学や、内容紹介で挙げられているモチーフに惹かれた人には面白いかもしれない。でも文体も話ごとにバラバラでどうしても苦手な文体もあったし、基本的に教養が高い人じゃないと単語がいちいちわからず調べたりするはめになる。きりがないのでわからないまま読み飛ばしたりしたけれど、本当は全部わかっていないと話の奥深さが理解できないんだろうなあ、と思う。わかるものについては、知的好奇心を刺激されてすごく面白かった。著者の博学と美意識の高さに感嘆した。
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