湖の男 の商品レビュー
一見救いようのない世界 それでも「生きる」ということ…… 珍しく冷戦時の社会を背景としており、他の北欧ミステリーのよう。 「フォード ファルコン」1960年代北米フォードの自由の象徴。この車とソ連製の盗聴機の組み合わせが、冷戦時代のアイスランドの混迷を匂わす。 湖の水位が下が...
一見救いようのない世界 それでも「生きる」ということ…… 珍しく冷戦時の社会を背景としており、他の北欧ミステリーのよう。 「フォード ファルコン」1960年代北米フォードの自由の象徴。この車とソ連製の盗聴機の組み合わせが、冷戦時代のアイスランドの混迷を匂わす。 湖の水位が下がったことで見つかった白骨死体のなぞ。 冷戦時の東ドイツへ留学した若き社会主義者達日常。 二つの物語が交錯しながら進む。 湖の底に隠れた過去の出来事は、決して消え去ったわけではなかった。 ダム湖が干上がって底に過去の生活の痕跡があらわになること、また、見つからないと思って投げ込んだ過去の負の出来事がヘドロのなかから顔を出す時、人間の業の深さを感じることになる。 それでも人は過去を背負って生きる。 それにしてもエーレンデュルの二人の子供との関係は、本筋より深刻。
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ロード・オブ・ザ・リング最終巻を差し置いて、爆読中〜2024.3.15読了。1週間で。 とてもおもしろい社会派サスペンス。 王道ではないヨーロッパの歴史や国のことを感じながら読んでいます。そして!アイスランドに行ってみたい〜!とまたまた思わせられています。 主人公エーレンデュ...
ロード・オブ・ザ・リング最終巻を差し置いて、爆読中〜2024.3.15読了。1週間で。 とてもおもしろい社会派サスペンス。 王道ではないヨーロッパの歴史や国のことを感じながら読んでいます。そして!アイスランドに行ってみたい〜!とまたまた思わせられています。 主人公エーレンデュルがよれよれの中年男のように描かれていますが、恋人ができたみたい… そして、若手のシグルデュル=オーリがわりとシュッとしたイケメンで、アメリカ留学経験あり…みたいな事実がわかる…私生活ではある悩みが深刻に進行中… エリンボルクは警察官なのに、料理本を出し、ヒット… マリオン・ブリームは、病の床… 事件を差し置いて、レギュラーの私生活が気になるという…ある警察小説を2つくらい思い出しますが(笑)、テイストが全く違う…アイスランドを取り巻くさまざまな事象や事件が盛り込まれているから? その側面からはやっぱり松本清張を思い出します。 肝腎の事件は、冷戦下の東ドイツがらみ。 ツイストは一回くらい。 行方不明になったイローナのことを痛ましく思います。そして、自分の大義のために敵の懐に入り込むには、味方を犠牲にすることがある…でなければ自分の死が待つ…その選択は、なかなかできないです… そして、本書で一番心を掴まれたのは、社会主義に対する記述。 P401でハンネスに語らせているくだり。 「社会主義は死んでいないと思う」 「いまでも着実に活動していると思う。ただ我々が想像していたのとは違う形で生き残っているのだ。社会主義があるから我々は資本主義の社会でなんとか生き延びていられるのだ」 「(略)社会主義はスターリンが制度化した唾棄すべき悪とか、東ヨーロッパに蔓延した恐ろしく独裁制とは本来全く関係ないのだ」 今でも相互監視、密告、反対が許されない絶対的体制で停滞してしまういろいろな組織のことを考えてしまいました…その側面からも、アーナルデュルを読み続けてしまうのです。 購入から3年漬け込んだのですが、前作「声」の読了で勢いが。 既訳を早く読みたい!(今さら)今年中に文庫2冊は買おう!と決心。 そして、訳者の柳沢由実子さんのご苦労を思いながら、ご健康も祈念するワガママ読者なのでした。 投稿したつもりで忘れてました。
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エーレンデュル捜査官シリーズの第四弾。 水位の下がった湖から遺体が発見される。 ロシア製の機械にくくりつけられていた遺体は、 婚約者の前から姿を消した農業機械のセールスマンなのか。 冷戦時代に東ドイツに留学した男のモノローグが重ねられていく。 国土は日本の三分の一ぐらい、人口は約35万人 日本のはるか北に位置するアイスランドがどういう国なのか 今一つ掴めていないが、 スパイ活動がありましたか、と聞いて回るとはどういうことなのだろうか。 みんながみんなを知っている国、と解説にあったが、 知り合いばかりの小さな国では、 裏切り者はいないということなのか。 ライプツィヒへの留学生たちに起こった出来事、 さらにそのあとにアイスランドで起こった事件は、 あまりにも予想通りで、逆にびっくりしたぐらい。 エーレンデュルの娘は、彼の同僚にけがを負わせ麻薬中毒治療施設に入っており、 今度は息子が登場した。 前作で知り合った検査技師の女性は、夫と離婚することにしたらしく、 エーレンデュルとの関係は進展した。 女性の同僚は料理本を出版し、男性の同僚はパートナーが流産したらしい。 元上司は病気ながらまだ生きているし、 男性の同僚にまとわりついている、妻子を車の事故で亡くした男も謎。
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エーレンデュル捜査官シリーズ4作目。 これまでの作品にも共通することですが、 ながい歳月が経過して、 忘れ去られていた事実を 少しずつ掘り起こしていく地道な捜査、 そして主人公である捜査官の 過去と現在の私生活、孤独感が 同時進行で語られます。 今回の事件の背景には 東西冷戦時...
エーレンデュル捜査官シリーズ4作目。 これまでの作品にも共通することですが、 ながい歳月が経過して、 忘れ去られていた事実を 少しずつ掘り起こしていく地道な捜査、 そして主人公である捜査官の 過去と現在の私生活、孤独感が 同時進行で語られます。 今回の事件の背景には 東西冷戦時代の出来事があります。 まぼろしの理想を追って 人々が失った時間、 重荷を背負って生きてきた時間が、 しみじみと描かれています。 失ったものを取り戻すことはできません。 これは主人公の人生にも、 私たちにもあてはまることですね。 東西の冷戦は、 いまや加熱状態にあります。 そしてまた悲劇が繰り返されています。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え” http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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続けて読みどっぷりアイスランドに嵌まった。アーナルデュル・インドリダソンの三冊目。この本のテーマは社会主義国とそこの若者達という感じ。旧ソ連の影が色濃く差す東ドイツに留学した学生たちの重い青春記とも。 東ドイツのライプツィヒ、ベルリンの壁崩壊以前の大学生たちの若さが痛々しく、先頃発見された殺害されたが遺骨の捜査と交互してストーリーは展開してゆく。 お馴染みになった刑事たち、二作目からここまでまた月日が経ったようでそれぞれの身辺少しずつ変化している。 情けないオヤジのエーレンデュルは相変わらず娘、息子と関係は築けてない…。 翻訳者の解説によると、北欧ではこのシリーズ15作目まで出版されてるとのこと! 先月発刊された文庫、早速本屋さんへ予約しに走った!
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344/481pで痛恨の挫折。おもしろくなりそうなのだが、とにかく話が進まない…。堂場瞬一先生が絶賛していたので読了したかったが、この後にアメリカものが控えているので、そっちを優先した。
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アイスランドのレイキャビク警察犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ第4段(邦訳)です。 事件は、干上がった湖の底から陥没骨折した頭蓋骨が見つかった。骨は古い無線機を重しとして括り付けられ沈められていた。30年以上も前にも同様の無線機が複数見つかっておりロシア製の無線傍受機で今回...
アイスランドのレイキャビク警察犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ第4段(邦訳)です。 事件は、干上がった湖の底から陥没骨折した頭蓋骨が見つかった。骨は古い無線機を重しとして括り付けられ沈められていた。30年以上も前にも同様の無線機が複数見つかっておりロシア製の無線傍受機で今回の物も同じ物の様だ。 骨の身元は、30年以上も前の農業機械セールスの男か? 男は偽名で身元不詳だった。一方で戦後に社会主義を信じてドイツへ留学していたアイスランド人の若者達が居た。 今回は、戦後の混乱期東欧の社会思想と小国で最北の国の若者の人生。それとこのシリーズお決まりのエーレンデュルの出来損ないでドラッグ中毒の娘エヴァと父親を毛嫌いしている息子シンドリ、エーレンデュルの亡くなった弟との思い出や葛藤に悩まされる中年で冴えない刑事の人生が錯綜するが、愛情と嫌悪がない混ぜになって人を苦しめる。そんな人生が普通の人間なのかも知れない。
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図書館で。 なんかエヴァの話が飛んでるなぁと思ったら、1巻抜けて読んだみたい。まぁこの親子は相変わらず。 それにしてもノルウェー(だったかな)には時効って無いのかな、と前の白骨死体の調査の話を読んだ時も思いました。今回は世界大戦と社会主義とが入り乱れていて中々複雑でした。その国...
図書館で。 なんかエヴァの話が飛んでるなぁと思ったら、1巻抜けて読んだみたい。まぁこの親子は相変わらず。 それにしてもノルウェー(だったかな)には時効って無いのかな、と前の白骨死体の調査の話を読んだ時も思いました。今回は世界大戦と社会主義とが入り乱れていて中々複雑でした。その国の歴史的背景を知らないということもあると思うのですが、知らないことだらけだと頭に内容が中々入ってこなくて… 主人公と子供の関係もう~んという感じ。この主人公は多分、子供を持たない方が良かったタイプの人だとは思うけれども。それまで関わりをもたなかったのに一方的に責められてもね、と自分も思う。君たちは何を期待して何がしたいの?と言いたくなるというか。そりゃ、物心つく前から会ってなかったなら、いくら血のつながった家族とは言え他人と同じだし。 という訳で段々家族の話が鼻に付いてきたのでこのシリーズもそろそろ良いかなぁ。それにしても浮気したわけでもないのに奥さんも良くもまぁここまで離婚した元亭主を恨んでられるな、とは前作を読んだ時思いました。娘もね。日本人が薄情すぎるのかなぁ…
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犯罪捜査官エーレンデュルシリーズ、第四段。干上がった湖から発見された骸骨の正体を、丹念に紐解いていく。東欧社会主義体制時代の闇に翻弄された人々を描く。一気に読める大作。
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湖が干あがったために発見された一体の白骨。殺害されたことを示す頭蓋骨の穴と、体に結び付けられたソ連製の盗聴器。この死体は誰なのか、なぜ殺されたのか、姿を消した失踪者から辿ろうとエーレンデュルたちの捜査が始まる。 現在進行の捜査活動の叙述の間あいだに、アイスランドから社会主義の...
湖が干あがったために発見された一体の白骨。殺害されたことを示す頭蓋骨の穴と、体に結び付けられたソ連製の盗聴器。この死体は誰なのか、なぜ殺されたのか、姿を消した失踪者から辿ろうとエーレンデュルたちの捜査が始まる。 現在進行の捜査活動の叙述の間あいだに、アイスランドから社会主義の理想を信じて東ドイツ、ライプツィヒの大学に留学した学生の生活が挟み込まれる。時はハンガリー動乱直前。そのときの何がが、この白骨死体に関係しているのか。 本作は時代背景が重要なポイントとなっているが、冷戦時代のアイスランドの国際政治的な位置について、初めて知ることが多かった。 主筋のストーリー自体はもちろん、主人公エーレンデュルとその子供たちとの関係、好感情を抱いた女性との交際の深まりなど、シリーズならではの読みどころも多い。
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