流人道中記(上) の商品レビュー
久しぶりの時代もの。 浅田次郎は高校時代に「蒼穹の昴」を読んだっきり。 めちゃくちゃ面白かった。 まず、文章が美しいし、乙次郎と玄蕃の噛み合わなさが、後半にかけてすごくいい味を出してる。 数え年19歳、現代ならば高校三年生くらいの年齢。 そんな乙次郎が正しさを探して、霧の中を...
久しぶりの時代もの。 浅田次郎は高校時代に「蒼穹の昴」を読んだっきり。 めちゃくちゃ面白かった。 まず、文章が美しいし、乙次郎と玄蕃の噛み合わなさが、後半にかけてすごくいい味を出してる。 数え年19歳、現代ならば高校三年生くらいの年齢。 そんな乙次郎が正しさを探して、霧の中を必死に歩いている姿が、胸に刺さる。
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浅田次郎の、こういう道中記的なものが好きだ。 結構重たいバックボーンがありながら、軽妙に面白く笑わせてくれる。 けれどもその中に、武士の矜持がしっかりとおさまっていて、油断していると喝を入れられる。 主人公の石川乙次郎は、武士の中でも最下級の生まれで、しかも次男。 なんとか武芸...
浅田次郎の、こういう道中記的なものが好きだ。 結構重たいバックボーンがありながら、軽妙に面白く笑わせてくれる。 けれどもその中に、武士の矜持がしっかりとおさまっていて、油断していると喝を入れられる。 主人公の石川乙次郎は、武士の中でも最下級の生まれで、しかも次男。 なんとか武芸で身を立てて、少しでも良い家に養子に行かなければ、一生古びた臭い米と一日2匹のめざしをありがたがって食わせてもらわねばならない。 しかし何ということか、婿養子に迎え入れられた先は町方与力の家である。 格が違いすぎて気の休まらぬ日々を半年過ごしたころ、咎人を陸奥の三厩へ送り届けろとの命が下る。 咎人は大身の旗本で、本来なら切腹のところ「痛えからいやだ」と駄々をこねるような男。 しかし武士の対面から打ち首等はできず、苦肉の策で流罪とされた。 身分も年齢も上のその男・青山玄蕃と旅をしながら、乙次郎は世間を知ってゆく。 この青山玄蕃という男が、ただの弱腰なへなちょこ侍なら何の問題もないのだけれど、旗本という身分から、押し出しもよく、所作もこなれていて、人の心の機微を見据える目も確かで、犯罪者とは思えない。 ときは幕末。 桜田門外の変直後のあわただしい世の中で、もしかしたら何か裏の目的をもって陸奥に向かっているのか?と勘ぐっているのだけれど、果たしてどうかな?
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視点が頻繁に入れ替わり、用語も難しく、読みにくいところが多々あった。乙次郎と玄蕃の二人の視点だけででいい気がする。とはいえ、内容は武士の矛盾を描いた悲しい話。最後は、あそこで、終わってほしくなかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
姦通の罪を犯したとされ切腹を言い渡されるも拒否し、代わりに蝦夷松前藩への流罪判決が下った旗本・青山玄蕃。彼の押送人に選ばれた19歳の見習与力・石川乙次郎。口と態度は悪いが世慣れている流人と、文武に秀でているが世間知らずで杓子定規な押送人の道中のうち、上巻は江戸出立から仙台までを描く。 物語のうち玄蕃と乙次郎の2人だけの場面は息が詰まり苦手。だが道中で出会う人々--夫を亡くし一人で旅籠を営む女将、按摩、盗賊と飯盛女と賞金稼ぎ、髪結、敵討ち等--それぞれの身の上に2人が関わり展開する場面は好き。一気にドラマ性が増しておもしろくなる。全篇を好きになれるかどうかは下巻次第か。
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新聞連載途中まで読んでいました。最初は堅苦しくて馴染みない人物名やら漢字やらの読み方に心取られて読み飛ばしてたのですが、ある章から心囚われて入手。最初のハードルはひとまず我慢して、リアタイすればよかったと後悔。時代は違うけれど、遣り切れなさと心の折り合いをできる範囲で調和させてま...
新聞連載途中まで読んでいました。最初は堅苦しくて馴染みない人物名やら漢字やらの読み方に心取られて読み飛ばしてたのですが、ある章から心囚われて入手。最初のハードルはひとまず我慢して、リアタイすればよかったと後悔。時代は違うけれど、遣り切れなさと心の折り合いをできる範囲で調和させてます。本当の理不尽は、最後に待っているのですが…。
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今までは読めない漢字や知らない言葉は都度調べながら読み進めていましたが、この本はそれをするとキリがないくらい分からない言葉だらけで、物語の情景もなかなか頭の中に浮かんで来ませんでした。 特に前半はただ文字を追うような状態になってしまい、読解力のなさを痛感しました。 同時に、個...
今までは読めない漢字や知らない言葉は都度調べながら読み進めていましたが、この本はそれをするとキリがないくらい分からない言葉だらけで、物語の情景もなかなか頭の中に浮かんで来ませんでした。 特に前半はただ文字を追うような状態になってしまい、読解力のなさを痛感しました。 同時に、個人的な好みとて、物語全体を楽しむのではなく、特定の登場人物に感情移入しながら楽しみたいタイプなので、今回はなかなか共感できる人物がおらず、十分に楽しめなかったと感じます。 とはいえ、後半は旅で出会ったさまざまな人物とのやり取りもあり、青山玄蕃がどのような人物なのか気になるので、下巻も読み進めたいと思います。
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浅田エンターテイメント炸裂。 姦通罪を犯した上に腹を切るのは痛いから嫌だという理由で蝦夷地送りとなった旗本御家人 青山玄蕃と、その押送人として選ばれた与力 石川乙次郎の二人旅だが、そこは流石の浅田次郎。心までときほぐす流しの按摩、稀代の大強盗稲妻小僧、仇討ちの旅に出て7年の侍、...
浅田エンターテイメント炸裂。 姦通罪を犯した上に腹を切るのは痛いから嫌だという理由で蝦夷地送りとなった旗本御家人 青山玄蕃と、その押送人として選ばれた与力 石川乙次郎の二人旅だが、そこは流石の浅田次郎。心までときほぐす流しの按摩、稀代の大強盗稲妻小僧、仇討ちの旅に出て7年の侍、仮病を騙る老婆などが次々に登場して、それぞれが一編の物語を成す。 2018~2019年にかけて読売新聞に連載された小説で、これを毎朝楽しみに一年以上読めるのであれば新聞をとってもいいかと思わせるような作品。浅田次郎本人は作品を書いているうちに 68歳になっているはずだが、その筆の勢い留まるところを知らず、これくらいの作品はお手の物としたものか。
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見習い与力の乙次郎は、切腹を拒んで流罪となった青山玄蕃の護送を担当する。口が悪い玄蕃に、振り回される乙次郎。大変だなぁ。
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しみじみ面白い。 じわじわと言うかしみじみくる感じ。 罪人の侍に若い十手持ち。 旅は北海道まで。道中出会う人も腹に一物抱えた人たち。みんなどこか真面目でピュアな人たちばかり 2022.10.15 159
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若い御役人の石川乙次郎は、青山玄蕃の罪の詳細を知らずに押送人の役に就いていた。 当初、青山玄蕃の言うこと為すことに石川乙次郎は腹を立て、道中切り捨て御免でも止むなしとさえ思っていたのだが、日が経つにつれ、その思いは徐々に変化して行く。 青山玄蕃の日々の行いや言動を通じて、若さゆえ...
若い御役人の石川乙次郎は、青山玄蕃の罪の詳細を知らずに押送人の役に就いていた。 当初、青山玄蕃の言うこと為すことに石川乙次郎は腹を立て、道中切り捨て御免でも止むなしとさえ思っていたのだが、日が経つにつれ、その思いは徐々に変化して行く。 青山玄蕃の日々の行いや言動を通じて、若さゆえに世の中の経験が乏しい石川乙次郎は、世の仕組みや矛盾を学んでいく事になる。 最も刺激を受けたのが、武士の生き方の堕落にも近い世の変化についてであった。 今や「法」が優先される世になってしまったが、本来は個人個人が抱いている「礼」を持って生きるべきとの孔子の言葉を重んじる青山玄蕃の言動・行動に、石川乙次郎は徐々に理解し感化されて行く。 出世の為にはどのような手段をも厭わず、「礼」などを捨て去った輩を青山玄蕃は「糞」と言って切り捨てる。 その潔さ、「礼」と云う正義を抱いた生き方を、何故に青山玄蕃は身に付けたのかが石川乙次郎の最大の関心事となる。 江戸から蝦夷の地に向かう道中の様々な出来事が、石川乙次郎の視点で綴られている一冊。
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