言の葉は、残りて の商品レビュー
これまであまりフューチャーされる事なく、単にひ弱な悲運の将軍というイメージだった源実朝を、言の葉という切り口で、新しい源実朝像を描いた素晴らしい一冊。 キーは「みだい」。
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血で血を争う世にあって、言の葉での治世を目指す実朝と公家から嫁いだ信子。 政権は未だ盤石ではなく、少しの油断が破滅につながる殺伐とした人物たちの中でも、阿波局の毒がすごかった。 武家と公家、将軍と御台所という立場に苦しみながらも、寄り添うふたりの姿がただただ美しかった。
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油断していた。こんなにも心を揺さぶられるとは思わなかった。 現代に生きる私たちにとって、歴史で学ぶ人物や史実であっても、当たり前のことだけど、そこには1人1人、感情を持った人間がいて、家族がいて、友がいて、毎日、悲しんだり笑ったりしながら生きている。 この物語は、鎌倉時代、3代将...
油断していた。こんなにも心を揺さぶられるとは思わなかった。 現代に生きる私たちにとって、歴史で学ぶ人物や史実であっても、当たり前のことだけど、そこには1人1人、感情を持った人間がいて、家族がいて、友がいて、毎日、悲しんだり笑ったりしながら生きている。 この物語は、鎌倉時代、3代将軍・実朝と妻・信子の生涯を描いている。 実朝の人物像はどの程度、史実に基づいたものなのだろうか。あとがきで、著者のインタビューが紹介されていて、「実朝の本当の姿を、私の中の実朝を知ってもらいたい」とおっしゃっているので、実像と近いのだろう。 だとすると、作品の中でも触れられているように、頼朝が苦難を乗り越えて、ようやく開いた鎌倉幕府、武士の時代に、実朝のような将軍は、なかなかに生きづらかっただろうと思う。 しかし、そんな中で信子と言う女性に出会えたことは、実朝の人生にとって救いであっただろう。 実朝と信子に子供が生まれていたら、2人の運命は違っていたのだろうか。歴史に、たらればを考えても虚しいが、つい考えてしまう。 しかし、実朝が目指していた、言の葉で治める世の中が、のちに実現され、実朝の将軍以外の顔をうかがい知れる和歌が、「言の葉」が、残ったことに一筋の光を感じることができた。
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3代将軍源実朝と、公家から嫁いだ信子の物語。 身内ですら明日は敵…という時代に、和歌の言の葉で2人が心の交流を深めていきます。 実朝も文人タイプの将軍で、武力ではなく言の葉で平和な世を築けないか模索していきます。 鎌倉の美しい描写と相まって、2人のやり取りはとても癒される。 …...
3代将軍源実朝と、公家から嫁いだ信子の物語。 身内ですら明日は敵…という時代に、和歌の言の葉で2人が心の交流を深めていきます。 実朝も文人タイプの将軍で、武力ではなく言の葉で平和な世を築けないか模索していきます。 鎌倉の美しい描写と相まって、2人のやり取りはとても癒される。 ……のですが、それで許されないのが鎌倉時代。 この時代の価値観で見れば、武芸をほったらかして公家贔屓。 優しさも仇になる時代です。 時代に呑み込まれて悲劇に繋がっていくさまが切なかったです。 北条家の人たちの苦悩も丁寧に描かれていて、皆大切なものを守るのに必死だったんだなと。誰も憎めないし、悪役を作らない書き方もずるい。 御成敗式目へ繋げていく流れも流石でした。 鎌倉というと、今となってはお洒落な観光スポットなイメージですが、かつては血みどろの権力闘争の舞台になっていたと思うと、とても不思議な感じがします。 本書にもそのギャップがしっかり描かれていて、作者、本当に新人ですか!?と言いたくなるハイクオリティな小説でした。 歴史にもしもは無いし、現代人の倫理観で歴史を見ると解釈を見誤るときがありますが、フィクションの世界は別の話。 史実をベースにしながらも、恋愛小説として完成されていて、いつまでも心に残る作品でした。
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あまり知らなかった鎌倉時代を知ることができ、 とても興味深かったです。 3代将軍実朝の、 言葉の力で世を治めたいという思いが、 胸に響きます。 それを良しとしないその時代に思いを馳せつつ、 現代、ネットでの誹謗中傷が問題になっていることなどに、言葉の持つ力に考えさせられました。...
あまり知らなかった鎌倉時代を知ることができ、 とても興味深かったです。 3代将軍実朝の、 言葉の力で世を治めたいという思いが、 胸に響きます。 それを良しとしないその時代に思いを馳せつつ、 現代、ネットでの誹謗中傷が問題になっていることなどに、言葉の持つ力に考えさせられました。 綺麗でそれでいてとても切なく感じる物語でしたが、この時代にこんな素敵な将軍様がいらっしゃったのかと、気持ちがホッと落ち着くような感じもし、この物語の世界観に浸かりました。読後も余韻の残る、素敵な作品でした。
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ゆっくり味わいたかったのに、時間をあけると名前と関係性がこんがらがっちゃいそうで、一気読みしてしまった。 鎌倉時代、武士の時代の中ので、武力ではなく言の葉で、と考えた将軍がいたなんて。実朝の金槐の歌を読むと、またそれもよかった。 2022年の大河ドラマが楽しみになった。
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いわゆる骨太の歴史物ではないです。 骨太ではない、とは決して否定的な意味ではありません。非常に繊細な作り込み方で、現代小説っぽいのです。 鎌倉三代将軍実朝にはほとんどの人があまりよいイメージが無いと思います。武家の棟梁としては、と。 そんな実朝の実績、心情がよく考察されています...
いわゆる骨太の歴史物ではないです。 骨太ではない、とは決して否定的な意味ではありません。非常に繊細な作り込み方で、現代小説っぽいのです。 鎌倉三代将軍実朝にはほとんどの人があまりよいイメージが無いと思います。武家の棟梁としては、と。 そんな実朝の実績、心情がよく考察されています。 御台と将軍実朝の関係性は、夢みたいに美しくて尊く、素敵でした。 対して、北条一門は、なんともかなしく… 今まで歴史小説を読んだことのない人におすすめかと問われると、そうでもないかもしれません。 語り口が説明っぽくない印象なので、ある程度その時代のイメージがあった方が読みやすいのかな、と思います。 これまで歴史物も現代小説も読んできた人のほうが楽しめる一冊だと感じました。
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読みやすかったです。 源実朝時代のお話で、親しみやすく、現代に似た古語(?)になっていて、歴史の教科書の一部。静止画だったものが、動画、動く絵となり物語が進んでいきました。
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子供の頃から義経好きで源氏派。源氏は日本の歴史の中ではほんの一瞬しか出てこないけど、すごく思い入れが強かった。 時を経て出逢ってしまった…実朝。武力ではなく言の葉で世を治めようとする。あの時代に。風流を愛し妻を愛し。全てが理想的。やっぱり源氏は深い。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
今まで読んできた本の中ででいちばん泣かされました…。まず世界観が好きです。なんというか、綺麗。日本史の授業でも紹介してたくらいなので、当時の時代背景や人物の立ち位置などが物語を読んでいく中で学べます。少し歴史とは違うかもしれませんが、大体のことは学べると思います。 将軍である実朝は言葉の力で世をおさめようと考えてはいるが、当時は武家社会。そんな考えは周りの人達は良しと思わず、実朝は苦しむ。 もう、読んでて辛いなぁって思います。どうしようもないというか、仕方ないことではあるけども。 最後の実朝の和歌集が残されることで、「言の葉は残りて」というタイトルに行くんだなあと個人的には解釈させていただきました。儚さと美しさを感じる物語でした。素敵!
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