臨床探偵と消えた脳病変 の商品レビュー
優れた診断能力を持つ臨床医師・西丸が探偵役を務める医療ミステリー。長編ではなくバラエティ豊かな短編集である。 何やら某天久鷹央を想起させる設定だが、こちらの西丸は積極的に調査に取り組むタイプではなく、他キャラの誤答を正すように最後に現れる舞台装置という印象が強い。背景もほぼ語られ...
優れた診断能力を持つ臨床医師・西丸が探偵役を務める医療ミステリー。長編ではなくバラエティ豊かな短編集である。 何やら某天久鷹央を想起させる設定だが、こちらの西丸は積極的に調査に取り組むタイプではなく、他キャラの誤答を正すように最後に現れる舞台装置という印象が強い。背景もほぼ語られないので作中一の謎ですらある。 この作品の特徴として「誤答もそこまでバカバカしくない」というものがある。ツッコミ役の探偵がその場にいないので珍回答が出ないのだ。 登場人物の大半が医者なので知能レベルが高いというのはある意味リアルではあるのだが、エンタメとしては少々問題がある。ツッコミどころもなく淡々と推理が進むのでどうしても目が滑るのだ。 また、謎そのものも全体的にスペクタクルに乏しく、表題作である「消えた脳病変」を除くと解答が示された時のカタルシスが弱く感じる。収録作の中では圧倒的に「消えた脳病変」の出来がよい。 派手でない分精密な推理が展開されるのかと言えばそうでもなく、特に二本目の「幻覚パズル」は短編で取り扱うのは不適格なロジック構成に感じた。 とはいえミステリとしてしっかりとした解答を用意しているのは好感が持てるし、作者の次作を読んでみたいと感じさせる作品だった。
Posted by
大学病院の救命救急センターに勤務する西丸医師は類い稀な診断能力から、不可解な症状に苦しむ患者たちを救う最後の砦のような存在になっている。 短編らしい淡々としたスマートな読み味と医療の現場というプロフェッショナルな舞台がすごくマッチしてる。 収録作の中では「開眼」が特に好き。タイト...
大学病院の救命救急センターに勤務する西丸医師は類い稀な診断能力から、不可解な症状に苦しむ患者たちを救う最後の砦のような存在になっている。 短編らしい淡々としたスマートな読み味と医療の現場というプロフェッショナルな舞台がすごくマッチしてる。 収録作の中では「開眼」が特に好き。タイトルとの結びつけが上手い。 西丸の探偵ぶりをしっかり描いておいて最後に倒叙モノを持ってくる辺りも良いセンスだなあと思う。 犯人を当てるものではなくあくまで“診断をつける”ミステリーではあるけど、伏線の張り方とかとにかく手際の良さが際立ってて、なんかこういうの読んだの久しぶりかも知れない。 日常の謎モノのようだけど命を守る最前線でもある。だから謎解きに対する使命感が胸を打つ。
Posted by
面白い!事件になりそうなならなそうな、事例研究になりそうなならなそうな(なるな)、そんな謎めいた患者さんたちの状態を広い視野で診る西丸先生が良い。周辺の先生方も良い。なんだか教訓も得ちゃう。短編集ですがどの物語も良かった。是非シリーズ化して欲しい。
Posted by
臨床探偵というか、優秀な総合診断医が活躍するお話。 ミステリーといえばミステリーなのだろうが、同じく天才診断医が活躍する天久鷹央シリーズに比べると、より現実的でエンタメ性には乏しく、物語を読んでいるというよりも、実際の診断手順をわかりやすく物語調に解説してもらっている感じ。きっと...
臨床探偵というか、優秀な総合診断医が活躍するお話。 ミステリーといえばミステリーなのだろうが、同じく天才診断医が活躍する天久鷹央シリーズに比べると、より現実的でエンタメ性には乏しく、物語を読んでいるというよりも、実際の診断手順をわかりやすく物語調に解説してもらっている感じ。きっと実際のお医者さんも、難しい症例はこうやって診断をつけてくれているのだろうな…と改めて尊敬。 物語は、臨床探偵(=西丸豊先生)以外の、それぞれ別の第三者の視点で描かれている。その誰もが西丸豊先生と距離がある人物なので、1番のミステリーは西丸豊先生そのものの存在だったりする。 個人的に1番面白かったのは『開眼』 患者の症状の原因となった疾患は私も知っていたのに、全く思い付かなかった。 一つのことが邪魔をして、その奥にある真理に辿り着けないということは小説でもよくあるテーマだが、それが医療、診断にも間々あるのだと思った。 タイトルも含め伏線回収されていて、ミステリーの醍醐味も十分あり、楽しめた。 設定に無理があると感じる章もあったが、医師の仕事が垣間見える点がとても興味深く、また新しい作品が出たら読んでみたいと思う。
Posted by
はじめまして、の作家さん。 解説が、大好きな米澤穂信さんってことで、 医療ミステリーに初挑戦。 登場する医師たちがまだ医学生で 講義を受けるシーンでは、 「脳は人間の最も尊い領域」という表現に スコーーン!と視界が開けるような感覚で すごく印象深かったし ...
はじめまして、の作家さん。 解説が、大好きな米澤穂信さんってことで、 医療ミステリーに初挑戦。 登場する医師たちがまだ医学生で 講義を受けるシーンでは、 「脳は人間の最も尊い領域」という表現に スコーーン!と視界が開けるような感覚で すごく印象深かったし 「人間の心を作っているのは、脳」をはじめ 現役の医師が書いているだけに 医療のリアルさがあった。 医学用語も結構出てくるけど、 必要なところで、わかりやすい説明つきで スムーズに読めたし、 実際の病や治療から逸れることなく 自然な流れでしっかりと謎解きがされる。 これは医師、看護師さんが読むと もしかしたら一緒にそれができるんじゃ… きっとまた違った面白さだろうなー
Posted by
総合病院で診断の専門家というと「天久鷹央の推理カルテ」シリーズを思い浮かべますが、あちらが比較的ドラマチックなのに対して、こちらは淡々としており、その分リアルに感じます。登場する医師がプロフェッショナルに徹しているので、あまりキャラが立ってません。さらに一部のお話では登場人物をA...
総合病院で診断の専門家というと「天久鷹央の推理カルテ」シリーズを思い浮かべますが、あちらが比較的ドラマチックなのに対して、こちらは淡々としており、その分リアルに感じます。登場する医師がプロフェッショナルに徹しているので、あまりキャラが立ってません。さらに一部のお話では登場人物をA、Bであらわしているので、ともするとショートショートのようにも感じます。 ただロジックはしっかりしていて、ミステリーとしての読みどころは多々あります。好みは分かれるかもしれませんが、個人的には好感をもった1冊です。
Posted by
診断を専門とする医師西丸豊が,鋭い観察眼と推理を発揮する医療ミステリ。作者朝ノ宮遼の現役医師ならではの題材も面白いが,短編ながらも伏線の張り方が上手く,解決の手順も見事だ。
Posted by
洞察力の鋭い医者が謎を解く短編集。 時系列がバラバラなのは、作者の作戦か? まだまだ読み足りないので、早く次の作品を。
Posted by
- 1