世界哲学史(2) の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
BC500年頃に登場した中国の諸子百家、初期ギリシア哲学、インドのウパニシャッド哲学、ジャイナ教、仏教といった思想は競合状態にあり、どれか一つが圧倒的な影響力を持つということはなかった。これらの思想を練り上げ、形作っていったのは東の漢であり、西のローマ帝国であった。それらはサンスクリット仏典の漢訳、ギリシア哲学のキリスト教への同盟という形で現われる。 後漢の光武帝は儒教を正当思想に定め、郷挙里選による官僚登用を行うことで儒教国家を完成させた。後漢は宦官と外戚の専横に苛まれ、宦官が儒者官僚を弾圧する党錮の禁があり、最後は黄巾の乱で滅ぶ。後漢の大儒である鄭玄は漢に代わる国家も儒教に基づくはずだと考えていたが、仏教の伝来がそうはさせなかった。仏教が伝来したのは後漢だが、南北朝時代になると北朝は仏教を統治の手段に用い、仏教は民衆まで広まった(南朝では貴族の教養として受け入れられた)。 プラトン亡き後、プラトンとそのテキストを権威とする哲学者や、プラトンを権威とはしないが、そこを知的源泉として自らの哲学を展開する哲学者はプラトン主義者と呼ばれた。とはいえ、ローマ哲学の代名詞となっているのはセネカ、エピクテトス、マルクス・アウレリウスのストア派哲学者たちであった。
Posted by
・厭わしいと同時に愛しいのが性。それは生命を慈しみ育むという成長への方向づけもあるが、同時に、自分勝手な支配と暴力という破壊的な死へ向かう方向も秘めている。これを単純に善と悪に二分することはできない。人類の初めのアダムとエバの物語が示すのは、誕生という契機を分かち合う人類の根源の...
・厭わしいと同時に愛しいのが性。それは生命を慈しみ育むという成長への方向づけもあるが、同時に、自分勝手な支配と暴力という破壊的な死へ向かう方向も秘めている。これを単純に善と悪に二分することはできない。人類の初めのアダムとエバの物語が示すのは、誕生という契機を分かち合う人類の根源の姿であり、我々が、本当に思い尽くし心を尽くして大切にすべき神の命令に自らの都合で──しかも蛇や伴侶のせいにするという言い逃れをしつつ──背いて、「自らが神のように自らを自らの善そのものであるように思い込んでしまった無知に起因する」ような「膨れ上がった意志」を持ち得る人間の原初の姿である。しかし、その人間に定位してこそ「内的超越」の先なる神を見出す「心」も身体も与えられているのである。
Posted by
■細目次 https://gyazo.com/9be070849ccd6dbf5720923742d1ec65 https://gyazo.com/07eab8a3b77c9443e030d05c7977578e https://gyazo.com/266f9018c5f126c...
■細目次 https://gyazo.com/9be070849ccd6dbf5720923742d1ec65 https://gyazo.com/07eab8a3b77c9443e030d05c7977578e https://gyazo.com/266f9018c5f126c93e5a9c4e10c5e749 https://gyazo.com/1e955cda04696aac424b0d2362d12243 https://gyazo.com/fd42eb97e568c900a346f5b3b61f5cc8
Posted by
第1章 哲学の世界化と制度・伝統 第2章 ローマに入った哲学 第3章 キリスト教の成立 第4章 大乗仏教の成立 第5章 古典中国の成立 第6章 仏教と儒教の論争 第7章 ゾロアスター教とマニ教 第8章 プラトン主義の伝統 第9章 東方教父の伝統 第10章 ラテン教父とアウグスティ...
第1章 哲学の世界化と制度・伝統 第2章 ローマに入った哲学 第3章 キリスト教の成立 第4章 大乗仏教の成立 第5章 古典中国の成立 第6章 仏教と儒教の論争 第7章 ゾロアスター教とマニ教 第8章 プラトン主義の伝統 第9章 東方教父の伝統 第10章 ラテン教父とアウグスティヌス
Posted by
本巻ではローマに入った哲学からキリスト教父たちの登場を扱う。西洋哲学の他には仏教、ゾロアスター教やマニ教が取り上げられた。 章ごとに筆者が異なることから内容の質に差があるが、マニ教と東方教父の章が大変参考になった。 マニ教では筆者がユーモアを交えながら解説するためスッと頭に入って...
本巻ではローマに入った哲学からキリスト教父たちの登場を扱う。西洋哲学の他には仏教、ゾロアスター教やマニ教が取り上げられた。 章ごとに筆者が異なることから内容の質に差があるが、マニ教と東方教父の章が大変参考になった。 マニ教では筆者がユーモアを交えながら解説するためスッと頭に入ってくる。中でも教祖のマーニーを「ストーリーテラーとしては優秀」と評したのは笑みがこぼれた。 東方教父の章では日本人には理解しにくい三位一体説についてわかりやすく解説されている。なぜ神とイエスと聖霊が同一視されるに至ったのか。そもそもそれはどういう意味か。それを知りたい方にこの章だけでも読む価値がある。
Posted by
第一巻目がとても面白かったので、楽しみにして読んだ。結果、第二巻もとても面白く読めた。 第二巻目は古代から古代末までの世界の哲学を取り上げている。今から2000年も前の世界だ。特に、ギリシアの哲学者やその世界観、アウグスティヌスの自由意志、内的超越の話は印象に残っている。仏教や...
第一巻目がとても面白かったので、楽しみにして読んだ。結果、第二巻もとても面白く読めた。 第二巻目は古代から古代末までの世界の哲学を取り上げている。今から2000年も前の世界だ。特に、ギリシアの哲学者やその世界観、アウグスティヌスの自由意志、内的超越の話は印象に残っている。仏教や中国哲学、ペルシア哲学(ゾロアスター教、マニ教)の話は、とても難しかった。というのも、それらの章は本の中盤に位置しているのだが、それらの考え方に対して慣れ親しんでいない上にそれらの話がすごいスピードでスイッチするためである。とても頭が疲れたが、マニ教の話はあとの章のアウグスティヌスの話に繋がってくるし、仏教世界が綺麗に二分されているが故の”歴史”に対しての捉え方、そして”起源”、テクストとしての大乗仏教などはとても奥深く、面白く、別個でまた別の機会に探求してみたいと思った。 P.S 第三巻が楽しみだ。
Posted by
キリスト教や仏教、マニ教やゾロアスター教などの宗教も取り上げられる。各地様々な思想が入り乱れる様子を見て取ることができる。
Posted by
ちくま新書の世界哲学史シリーズ第2巻。古代哲学の後半を扱う本書では、キリスト教、仏教、儒教等、後に世界宗教へと発展していく各宗教の展開が扱われる。新書だからと侮るなかれ。いずれの論考も高度な内容で、読みこなすのはなかなかに骨が折れる。でもそれだけに知的刺激をビリビリと受けることが...
ちくま新書の世界哲学史シリーズ第2巻。古代哲学の後半を扱う本書では、キリスト教、仏教、儒教等、後に世界宗教へと発展していく各宗教の展開が扱われる。新書だからと侮るなかれ。いずれの論考も高度な内容で、読みこなすのはなかなかに骨が折れる。でもそれだけに知的刺激をビリビリと受けることができる。 本書を読みつつ、先日読み終えた『天才・富永仲基』(釈徹宗・著)を何度か思い出した。思想や言説は、先行する思想を足がかりに、それを超克しようとする。その際には新たな要素が加えられるとする加上説を仲基は説いた。さらに、時代や言語が異なれば、説かれる考えも変わるということも指摘している。本書を読むと、プラトン然り、仏説然り、キリスト教然り、仲基の説が如何に的を射ていたかがよくわかる。そして、その変容こそが、思想をより豊饒なものとし、世界哲学へのステップであると感じる。 本書で興味深かったのは、大乗仏教の成立過程に関する論考。この逆転の発想はなかった。古典中国の成立の章も、頭の中が非常に整理された。ゾロアスター教とマニ教の章は、今までほとんど触れたことがなく面白かった。 今のような科学技術もない中、人類がいかに己の知恵と理性の腕を伸ばし、真理をつかみ取ろうとしたか。とても興奮を覚える。
Posted by
テーマは「善悪と超越」、「翻訳」も重要なテーマ。西洋ではキケロからアウグスティヌスまでを扱っている。冒頭の論文では、科学と魔術、哲学と弁論術の関係が指摘してあって、とても興味深い。大乗仏教はテキストが先にあって、教団は後でできたこと、ゾロアスター教の二元論、マニ教の物語、鄭玄によ...
テーマは「善悪と超越」、「翻訳」も重要なテーマ。西洋ではキケロからアウグスティヌスまでを扱っている。冒頭の論文では、科学と魔術、哲学と弁論術の関係が指摘してあって、とても興味深い。大乗仏教はテキストが先にあって、教団は後でできたこと、ゾロアスター教の二元論、マニ教の物語、鄭玄による古典中国の完成、神滅不滅論争などが面白かった。新プラトン主義についても興味深い論考がある。基本は50枚くらいの論文の集まりで、新しい成果が集まっているので、いい感じの概論にはなっていると思う。
Posted by
“世界哲学”というくらいなので、東洋や中東の思想にも触れている。マニ教についてあまり学んだことがなかったので、そこは読んでいて面白かった。
Posted by
- 1
- 2