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友だち の商品レビュー

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15件のお客様レビュー

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2024/11/25

恋人ではないが大切な友だちである作家の男が自殺した。同じく作家である私は喪失のただ中に落とされ内省に沈む。男の妻からは、男の飼っていたグレートデンを引き取るよう頼まれ、「やさしい巨人」である犬との生活がはじまった。初老の女性作家と犬が、互いに孤独をもちよって男の不在をみつめる。 ...

恋人ではないが大切な友だちである作家の男が自殺した。同じく作家である私は喪失のただ中に落とされ内省に沈む。男の妻からは、男の飼っていたグレートデンを引き取るよう頼まれ、「やさしい巨人」である犬との生活がはじまった。初老の女性作家と犬が、互いに孤独をもちよって男の不在をみつめる。 文学について、死について、愛について、物言わぬ動物(特に犬)についての考察が豊かで、どこを切りとって読んでもいいような、思考の漂いともいうべき作品だった。文学や映画からの引用も豊富で、言葉を大切にする作家さんだなという印象をもった。 とりわけ書くことの限界や可能性について、友だちの男性作家(実は死んでいなかったのか?)と対話している部分は、ひとつの文学論ともなっていて、この作品をただならぬものにしている。

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2022/03/29

・・・最近のテレビのドキュメンタリー番組で、郊外のモーテルを根城にして働いていた元売春婦がいちばん忙しいのは月曜日の午前中だと言っていた。妻や子供たちと週末を過したあとほど、このビジネスは活況を呈するらしい。・・・

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2022/01/22

語り手の師でもあり30年来の友だちでもあった老教授の自殺、彼の飼っていたグレートデーンの老犬アポロとの生活、作家としての葛藤という三つのテーマがランダムに綴られる。リルケの「守りあい、境界を接し、挨拶を交わしあうふたつの孤独」という愛の定義に沿って亡き友、そしてアポロとの交感の日...

語り手の師でもあり30年来の友だちでもあった老教授の自殺、彼の飼っていたグレートデーンの老犬アポロとの生活、作家としての葛藤という三つのテーマがランダムに綴られる。リルケの「守りあい、境界を接し、挨拶を交わしあうふたつの孤独」という愛の定義に沿って亡き友、そしてアポロとの交感の日々が描かれる。アポロの心を推し測る場面では、「あなたのペットが病気になり、あきらかに具合が悪いのだが、それが何か、どこが悪いのかわからない。ペットは自分では説明できないからである。あなたを神だと信じている犬が、あなたは苦痛を止める力をもっているのに、なぜかそうしてくれないと思っている、という考えほど耐えがたいものはない。」と心を傷める。物語の終わりの方で、唐突にメタストーリーが挿入されるが、物語の転換させるこの挿入の必要性に戸惑いを覚えた。

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2021/12/26

久しぶりの外国ものでした。学生時代はよく読んでいたけれど、最近は日本人作家さんのものばかりだったので翻訳になかなか慣れず、苦戦しました。原文の表すことを取りこぼさないようにするほど読みにくい訳になるし、読みやすくしようとすれば何かが原文と変わってしまうし、やはり翻訳で読むのは違和...

久しぶりの外国ものでした。学生時代はよく読んでいたけれど、最近は日本人作家さんのものばかりだったので翻訳になかなか慣れず、苦戦しました。原文の表すことを取りこぼさないようにするほど読みにくい訳になるし、読みやすくしようとすれば何かが原文と変わってしまうし、やはり翻訳で読むのは違和感が付きまとうなと改めて感じました。  語り手は、一人暮らしの初老の女性作家。親密な友達だった先輩作家の男が不意に自殺し、深い喪失感にとらわれていたところ、その男性作家が飼っていた巨体の老いた犬、グレートデンを引き取ることになる。 主人を亡くして失意の老犬の、晩年にあたる時期を共に過ごしながら、彼女は生きること死ぬこと、自死、作家であることなどを考察し、散文のように書き綴る。 〈 わたしたちがその不在を寂しがるもの、それこそわたしたちを心の底でほんとうにわたしたちにしているものではないか。〉 という提示が心に残りました。 小説として読むとしっくりこず、頭に?が溢れてしまうけれど、一部フィクションを交えたエッセイのような物として読むと、心の奥を少しだけ揺さぶられるような面白さがありました。 私にとって、認知症で夜中吠え続ける、自身の愛犬の側で、老犬の最晩年を描くこの本を読んだ記憶は、後に忘れ難い思い出になると思います。

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2021/02/01

なかなか読んで考えてしまうところのある小説だった。物言わぬ動物との関わりについても。アメリカにはライティングという学問の分野がしっかりあって、大学のゼミとかも当たり前にあるよなあと。日本もあるのかな?

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2020/12/13

主人公は女作家。 かつての恩師であり、愛し、そしてかけがえのない友人の「あなた」が突然自殺しこの世から消え去った。 「あなた」の三番目の妻から、「あなた」が飼っていた巨大な犬「アポロ」を引き取ることになり…。 かけがえのない人がいなくなった喪失感。 とにかく喪失感、喪失感、喪失...

主人公は女作家。 かつての恩師であり、愛し、そしてかけがえのない友人の「あなた」が突然自殺しこの世から消え去った。 「あなた」の三番目の妻から、「あなた」が飼っていた巨大な犬「アポロ」を引き取ることになり…。 かけがえのない人がいなくなった喪失感。 とにかく喪失感、喪失感、喪失感。 主人公のとっちらかった心情を表すように、文章も過去、現在、空想、日々の感じたこと、小説について、いろいろな作家について…と入り乱れる。 はっきり言って読みにくい作品だ。 引き取ったばかりの頃は全く主人公に関心をしめさなかった「アポロ」とも、いつしかお互いにかけがえのない人を亡くしたことで繋がっていく。 けれど、年老いてきた「アポロ」が今後いなくなった時の、さらなる喪失感はいかばかりか。 それが想像できる中での、最後の海辺での穏やかな日は、かけがえのない時間だろう。

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2020/10/25

友人であった男性作家を自殺で亡くし、その友人の買っていた老犬を引き取った女性作家。 最初は慣れない大型犬に手を焼いたが、少しずつ人と犬の間に温かい感情が生まれていく。 人間の心の回復の物語。時に優しく、時にシニカルに書かれていて、とても面白く読めた。挿話のように差し込まれる、文...

友人であった男性作家を自殺で亡くし、その友人の買っていた老犬を引き取った女性作家。 最初は慣れない大型犬に手を焼いたが、少しずつ人と犬の間に温かい感情が生まれていく。 人間の心の回復の物語。時に優しく、時にシニカルに書かれていて、とても面白く読めた。挿話のように差し込まれる、文学作品や映画がとても多くで興味深かった。

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2020/09/12

物語のようで長く美しい詩のようでもあり 詩のようで奥深くささやかな物語のようでもある。 難解なところも 過ぎる時間のまま流してしまえばいい。 死期をむかえた友だちと海辺で過ごすとき 波、風、光、その情景が切なく胸に迫ってくる。

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2020/08/22

元あこがれの教師で今は友人の『あなた」が自殺して残された犬を託された.年老いたグレートデンのアポロとの少しずつ育っていく絆と信頼,作家として書くということの意義を,日記のように物語る.そして最後に事実がそうではなく小説との境界がほどけていく中に,生きること人生の喜びや悲しみが浮か...

元あこがれの教師で今は友人の『あなた」が自殺して残された犬を託された.年老いたグレートデンのアポロとの少しずつ育っていく絆と信頼,作家として書くということの意義を,日記のように物語る.そして最後に事実がそうではなく小説との境界がほどけていく中に,生きること人生の喜びや悲しみが浮かび上がってくる.言葉や書かれることの奥に潜む何かを見つめ続けた小説だ.

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2021/06/14

大学で文学を教える主人公、初老の女性作家。親友の男性作家が自殺し、喪失感に打ちひしがれている彼女に、男性作家の三番目の妻からペットだった犬を任される。ペット禁止のアパートに来たのはグレートデンの老犬。ベッドで寝かせてはいけない、というシッターのアドバイスにもかかわらず、当然のよう...

大学で文学を教える主人公、初老の女性作家。親友の男性作家が自殺し、喪失感に打ちひしがれている彼女に、男性作家の三番目の妻からペットだった犬を任される。ペット禁止のアパートに来たのはグレートデンの老犬。ベッドで寝かせてはいけない、というシッターのアドバイスにもかかわらず、当然のようにベッドで寝てしまうグレートデン。やがて、彼女が本を朗読することで犬と彼女は落ち着きと連帯感を感じるようになる。そして、老いてゆく犬。 主人公と親友の作家との間にある文学。様々な文学論・作家論・作品論が繰り広げられる。おだやかに老犬の最期に向かうのか、と思いきや…。 後半のまさかの仕掛けにビックリ。それでも、ラストシーンはステキだ。そのシーンで読者が思い描く犬は、どんな犬なのか…。

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