ヴィルヘルム・ハマスホイ沈黙の絵画 の商品レビュー
メランコリックで静謐でモノクロームな色調。好きな世界観。ハマスホイといえば後ろ姿の人物描写。表情が全く分からないから、いろいろと想像できる。
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ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864.5.15~1916.2.13) デンマークの画家。 北欧のフェルメールと言われているそうだが、フェルメールより好き。 コロナが猛威をふるい始めた頃、上野の東京都美術館で「ハマスホイとデンマーク絵画展」(2020.1.21~3.26)が開催されて...
ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864.5.15~1916.2.13) デンマークの画家。 北欧のフェルメールと言われているそうだが、フェルメールより好き。 コロナが猛威をふるい始めた頃、上野の東京都美術館で「ハマスホイとデンマーク絵画展」(2020.1.21~3.26)が開催されていた。 行こうかな、危ないかな…そう思っている間に開催が中断されてしまった。 今でもめちゃくちゃ悔しい。 ぐたぐた悩んでないで、万全の感染対策で挑めば良かった~! 後ろ姿や横向きの人物ばかり描いている画家と言えば、お分かりになる方も多いのではないか。 正面を向いていたとしても、そのモデルの目はこちらを見ていない。 本書で知ったが、15歳でコペンハーゲン王立美術アカデミーに入学を許可された、早熟の画家だ。 初めは理解されなかったし、アカデミー卒業後も古典主義的なアカデミーと、フランス式の前衛的な自由研究学校との間に激しい論争を呼んだ。 それほどハマスホイ独自の画風が早くから完成されていたってことだよね。 新しいものは、驚きと共に拒絶も生んで、大抵排除の動きが現れるものだ。 それでもハマスホイは諦めない。 同様に拒絶された画家たちと共に"落選展"を組織する 笑 強いなー、自分の才能を信じていたのだろうな。 そして歯科医のアルフレズ・ブラムスンが彼を見付ける。 パトロンだ。 彼はコレクターに留まらず、後にハマスホイの伝記まで著したとのこと。 私が富豪だったとしても買い集めたと思う 笑 ライバルだな、アルフレズ君。 私は見るのが好きなだけで、絵画を本格的に学んだこともないが、 ハマスホイの絵からはいつも、"佇まい"を感じる。 人物を描いても、そのモデルが背を向けていようと、こちらを向いていようと、そして風景や建物を描いても。 人の居ない部屋を描いても、だ。 (全作品のうち三分の一が室内画なのだとか。) 例えば人の居ない部屋。 "誰かが入って来そう"なのではなく、"さっきまで誰かがそこにいた"ように感じる。 この余韻のようなものは何だろう。 輪郭がぼんやりしているからか? 北欧のフェルメールと言われるように、陰影のもたらす効果か? ホイッスラーの影響をもろに受けた(というか、ほぼフィーチャー)、『画家の母、フレゼレゲ・ハマスホイ』でさえ、ホイッスラーの絵とは印象がかなり違う。 そこに母親は横向きで腰掛けているが、余白の空気の方を感じてしまう。 同じくフェルメールの影響であろう『手紙を読むイーダ』(フェルメールの『手紙を読む青衣の女性』と対か?ってくらい)も同様。 開いた扉、ぼんやりとした輪郭、ほぼモノトーンの世界。 どちらも、その人の持つ雰囲気とか、匂いとか、部屋の空気や静けさを、誰よりも感じる。 ハマスホイの作品はカラフルではなく、ほぼ同系色で描かれる。 それがまた余計に、静けさの余韻を生む。 風景画も、誰もおらず静かだ。 閉ざされていて、決して見るものを寄せ付けず、ある意味不穏だ。 (『ロンドン、モンタギュー・ストリート』と『ライラの風景』の実物が見たい。) でも私は、ここにさえ人の残した気配を感じてしまう。 どんな気分の時に眺めても気持ちが凪いで、私は私に帰る事ができるような気がする。 (もしかしたら見る方によっては、霊的なものを感じて怖いと思うかもしれない。) 本書を監修・執筆された佐藤直樹さんは"室内画に漂うメランコリックな雰囲気"と表現している。 31ページのT・マーティン・ウッド(って誰?笑)の言葉が印象的だ。 「ハマスホイは詩人である。 消え去った存在が、空っぽの室内に残す余韻を 私たちに感じさせるのだ。」 68ページのハマスホイが弟に宛てた手紙の文章。 「昨日、偶然、町でこのハガキ(ハマスホイ自身が描いた聖堂の絵葉書)を見つけた。これで、お前がこの聖堂のイメージを知ることができるだろう。 そうでなければ、僕はこの聖堂を絵ハガキで見るのはあまり好きではないのだが。僕はこの聖堂は逃れていると思う。」 きゃ~なになに? 言ってる意味が分からなくて素敵。笑 自分の好きな作家や画家が意味不明なこと言ってると、とても惹かれて深掘りしたくなる 笑笑 本書の最終ページにはハマスホイのパレットの写真が載っていて感慨深い。 さて。 10月2日まで国立新美術館ではテート美術館展が開催されている。 フライヤーによるとハマスホイの『室内』が来日しているようだ。 行きたい!行きたい!行きたい! 間に合うかなぁ。。。 ↑ 先日うっかり休館日に乃木坂へ行ってしまった人。 ↑ ここの休館日が火曜だってこと、忘れてたの(涙)
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気になる画家です、ハマスホイ。 とても興味深く読みました。 でも、どうなんやろ? 私は図書館で借りたから、いいのですが、 これ2,000円は高くないか? 2,000円あれば、この人のポスターが何かを 一枚飾って、毎日眺めていたほうがイイ。 まあ、その価格設定できるくらいに、 今き...
気になる画家です、ハマスホイ。 とても興味深く読みました。 でも、どうなんやろ? 私は図書館で借りたから、いいのですが、 これ2,000円は高くないか? 2,000円あれば、この人のポスターが何かを 一枚飾って、毎日眺めていたほうがイイ。 まあ、その価格設定できるくらいに、 今きている画家、という事かもしれませんね。
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ハマスホイは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活動したデンマークの画家。「北欧のフェルメール」とも呼ばれているほど、光の使い方に特徴があるが、一方で、本書の副題にもある通り「沈黙」か、あるいは「無音」としか表現できない、「静かな」画風も非常に印象的。 作品は主として、家具が無...
ハマスホイは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活動したデンマークの画家。「北欧のフェルメール」とも呼ばれているほど、光の使い方に特徴があるが、一方で、本書の副題にもある通り「沈黙」か、あるいは「無音」としか表現できない、「静かな」画風も非常に印象的。 作品は主として、家具が無いか、あるいは少ないがらんとした殺風景な無人の室内か、一方、人がいてもほとんどは一人だけで、手紙を読んでたり、ピアノを弾いている後ろ姿だったりと、視線がこちらを向いていない。 悪い言い方をすれば不気味ともいえる絵柄なのに、なぜか見続けていたくなる不思議な魅力のある絵が本書には多数掲載されている。 2008年に日本でも大きな展覧会が開かれたらしいが、当時はハマスホイを知らず未見なので、また近年中に日本で開催されることを期待する。 なお、本書によれば日本では1点だけ、ハマスホイの作品が国立西洋美術館収蔵されているとの事なので、常設展の展示内容を確認の上、展示されているようであればぜひ観に行こうかと思う。
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ハマスホイは、17世紀オランダの室内画、18世紀前半のデンマークの絵画、ドイツ・ロマン派の絵画、ベルギーの象徴主義の絵画に影響を受けている。印象派は意識して遠ざけたようだ。解説を読んで、特にページを割かれているのは、フリードリヒ、クノップス、ホイッスラーであろう。そのモチーフや内...
ハマスホイは、17世紀オランダの室内画、18世紀前半のデンマークの絵画、ドイツ・ロマン派の絵画、ベルギーの象徴主義の絵画に影響を受けている。印象派は意識して遠ざけたようだ。解説を読んで、特にページを割かれているのは、フリードリヒ、クノップス、ホイッスラーであろう。そのモチーフや内面に向かう画風、限られた色彩を使った落ち着いた画調に親密感を感じたようである。クノップスの「廃市」などには不気味な静寂感が漂うが、まだメランコリーな詩情が感じられる。しかし、ハマスホイはさらに冷たく、孤絶感がある。人物は鑑賞者の視線を避けるか、後ろを向いてるかしており、深く内面に沈んでいる。描かれる家具も厳選されており、晩年には人間さえ排斥されてしまう。あるのは過去の人間の生活の痕跡のみである。窓はあってもくもって外は見えず、扉は固く閉ざされている。このようにハマスホイは独自の画風を誇っているのだ。 平凡社版の解説は、ハマスホイに影響を与えた画家たちやハマスホイの絵が訴えるものに迫ろうとしている。前にレビューを書いた東京美術社版は、同時代のデンマークの画家を特に取り上げている。
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借りたもの。 ハマスホイの絵画の静謐さの由縁を紐解く。 19世紀末美術――パリのホイッスラーに、ベルギー象徴派のクノップフら――の影響。 オランダ絵画黄金期とは異なり、逸話的要素がない革新性など。やはりフェルメールからインスピレーションを得ていることは事実なのだろう。 ハマスホイ...
借りたもの。 ハマスホイの絵画の静謐さの由縁を紐解く。 19世紀末美術――パリのホイッスラーに、ベルギー象徴派のクノップフら――の影響。 オランダ絵画黄金期とは異なり、逸話的要素がない革新性など。やはりフェルメールからインスピレーションを得ていることは事実なのだろう。 ハマスホイの作品に現れ、代名詞とも言える屋内の、ストランゲーゼ30番地自宅の平面図も掲載。間取りと照らし合わせながら掲載されている作品を見るとまた面白い。 諸々の美術史の流れを汲みながら、19世紀末美術の暗示性、後ろ姿は孤立した人間存在を示唆する表現になっている独自の沈黙がハンマスホイ絵画の魅力であることを突き詰めていく。 2020年1月から、東京都美術館にて開催された『ハマスホイとデンマーク絵画』( https://artexhibition.jp/denmark2020/ )展に伴い、読了。 会場にあった、ロイヤルコペンハーゲンのアンティーク・バンチボウルや白や灰色系の絵具がべったり付いたハンマスホイのパレットの写真も掲載。 萬屋健司『ヴィルヘルム・ハマスホイ 静寂の詩人』( https://booklog.jp/item/1/4808711478 )と併読。
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まさに静謐。BGMは雨音。抑えめな色使いは、曖昧で絶妙。コロナ禍で直接観に行くことは叶わなかったが、とても心地よいひとときを得ることができた。
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沈黙・静寂・森閑・粛然・静けさ。 15歳の時に通った画塾で、ピーザ・スヴェリン・クロイヤがハマスホイについて、 「ほとんど奇妙な絵ばかり描く生徒が一人いる。私は彼のことを理解できないが、彼が重要な画家になるであろうことはわかっている。彼に影響を与えないように気をつけることとしよ...
沈黙・静寂・森閑・粛然・静けさ。 15歳の時に通った画塾で、ピーザ・スヴェリン・クロイヤがハマスホイについて、 「ほとんど奇妙な絵ばかり描く生徒が一人いる。私は彼のことを理解できないが、彼が重要な画家になるであろうことはわかっている。彼に影響を与えないように気をつけることとしよう。」て書き残してるっていうエピソードが良かった。
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ハマスホイの絵画には、一種の境地が感じられる。 静寂というのは簡単に得られるものではないから。 書物としては、もう少し大きい判型で、活字も図版も大きくした方が良かったように思う。 様々に影響を与え合う作家群を多く配したことは、この作家の特徴を色濃く打ち出すことに成功している。...
ハマスホイの絵画には、一種の境地が感じられる。 静寂というのは簡単に得られるものではないから。 書物としては、もう少し大きい判型で、活字も図版も大きくした方が良かったように思う。 様々に影響を与え合う作家群を多く配したことは、この作家の特徴を色濃く打ち出すことに成功している。 個人的には、習作とされているが、111ページの把手のない扉を描いた作品が、孤絶していて好きだ。
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作品画面における密度とは、必ずしもモチーフの量に比例せず、絵の具、画布、オイルその他計算された様々な要素と、ほんの少しの偶然から成り立つのだなと感じた。
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