涼子点景1964 の商品レビュー
+++ 「父は、姿を消したのよ。私が九歳の夏に。それ以上のことを言わない、誰にも」。 1964年オリンピック決定に沸く東京で、競技場近くに住む一人の男が失踪した。 娘は自分の居場所と夢を守るため、偶然と幸運と犠牲を味方につけ生き抜いてゆくことを誓う。 時代の空気感を濃密に取り込...
+++ 「父は、姿を消したのよ。私が九歳の夏に。それ以上のことを言わない、誰にも」。 1964年オリンピック決定に沸く東京で、競技場近くに住む一人の男が失踪した。 娘は自分の居場所と夢を守るため、偶然と幸運と犠牲を味方につけ生き抜いてゆくことを誓う。 時代の空気感を濃密に取り込みながら描いた蠱惑の長編ミステリー! +++ 不意に届いた小学校の同窓会通知を志学女子学園の理事長室で見ている涼子。そこから、60年前に時間は巻き戻されていく。抱えてしまった秘密を守り続けるために、変わり続け、あるいはかたくなに守り続けて生きてきた涼子のその時その時を、何も知らない周りの数人が、ほんとうに何気なく、あるいは、なにがしかの疑問を抱いて思い出し、それをすべてつなげてみたときに見えてくるものがあるのである。涼子の人生は幸福だったのだろうか、と思わずにはいられない一冊である。
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なんだか不思議な手触りの物語。前の東京オリンピックと、今年の東京オリンピックを結ぶ、そう、まさに、点景。
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東京オリンピックの開催を迎える1964年を舞台に、一人の少女・涼子を巡って繰り広げられる物語。さまざまな立場の人から見える涼子の姿が多彩に描き出され、そこから徐々に解き明かされる彼女の物語。どこかしら危ういものをはらみながらも、優しい読み心地の物語でもあります。 美しく聡明であり...
東京オリンピックの開催を迎える1964年を舞台に、一人の少女・涼子を巡って繰り広げられる物語。さまざまな立場の人から見える涼子の姿が多彩に描き出され、そこから徐々に解き明かされる彼女の物語。どこかしら危ういものをはらみながらも、優しい読み心地の物語でもあります。 美しく聡明でありながら家庭環境には恵まれなかった涼子。そんな彼女がなぜ「お嬢様」になることができたのか。そんな疑惑と、涼子のすがすがしいまでの知性がミステリアスな雰囲気を織りなす物語に引き込まれます。その裏にはよからぬものを想像したりもしたのですが、最初にイメージしたような「悪女もの」ではありませんでした。涼子がとにかく魅力的。全編を通しての謎以外にも、彼女が日常の中で解き明かす些細な謎もまたミステリとして楽しめます。そしてラストにもほっこり。
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