エーゲ 永遠回帰の海 の商品レビュー
ギリシャとトルコの遺跡を立花隆と写真家の須田慎太郎が巡った記憶が記述されている。その地域に数多く点在する遺跡について述べた文章と写真がほぼ交互に展開される。ギリシャ神話やキリスト教や哲学などと絡めて、争いなどによって破壊され朽ち果てた遺跡と共に、遥か彼方となってしまった過去の栄華...
ギリシャとトルコの遺跡を立花隆と写真家の須田慎太郎が巡った記憶が記述されている。その地域に数多く点在する遺跡について述べた文章と写真がほぼ交互に展開される。ギリシャ神話やキリスト教や哲学などと絡めて、争いなどによって破壊され朽ち果てた遺跡と共に、遥か彼方となってしまった過去の栄華が語られる。遺跡群を見下すように、終末思想のなか、粛々と祈りを捧げる聖山アトスの修道士たち。俗世の我々は、いずれは収束するなか、同じことを繰り返し続ける。螺旋状の渦の中に吸い込まれるように永遠回帰の海に漂い飲み込まれていく。
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もう何回か読まないと理解できない気がするけれど、 核心をつく言葉にハッとさせられた。 所々で出てくる写真には、古代へタイムスリップさせられた。
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この本は単行本版でないと味が出て来ない。文庫版では味気ない。元原稿が田中角栄裁判の最中だからか、引用されている聖書は口語訳だ。なので黙示録を引用した個所では「聖書の預言」なるものでは「まとも」な部類?に入るであろうニガヨモギは出て来ない。 立花隆の愛読者でもギリシャ・ローマの...
この本は単行本版でないと味が出て来ない。文庫版では味気ない。元原稿が田中角栄裁判の最中だからか、引用されている聖書は口語訳だ。なので黙示録を引用した個所では「聖書の預言」なるものでは「まとも」な部類?に入るであろうニガヨモギは出て来ない。 立花隆の愛読者でもギリシャ・ローマの古典や新約聖書などに関心がない人には読みづらいかもしれない。 他の人が書いたアトス山訪問記と読み比べると訪れた時期と視点、信仰などによって違いが見えてくる。「インドの田舎」にしかないという「旧式のボロバス」は村上春樹が訪れた時には代替わりしていたようだ。
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冒頭80ページにわたる写真と短文を読むだけで、大袈裟かもしれませんが、意識が肉体を離れて、一気にエーゲ海へと飛んでいく感覚すら覚えました。雑念が消え、視野が本書で描写された世界にしぼられていくかのようにして、脳がこれ一色になる感覚とでも言うべきか、とにかく目を見張るほど豊かな表現...
冒頭80ページにわたる写真と短文を読むだけで、大袈裟かもしれませんが、意識が肉体を離れて、一気にエーゲ海へと飛んでいく感覚すら覚えました。雑念が消え、視野が本書で描写された世界にしぼられていくかのようにして、脳がこれ一色になる感覚とでも言うべきか、とにかく目を見張るほど豊かな表現ばかりです。 それ以降の内容は言うまでもありません。著者の名前目当てで本書を何気なく手に取ったのですが、正直これほど読ませる文章をお書きになっているとは露知らずでした。文章も長くありませんし、表紙に少しでもピンと来た人であれば今すぐ読むべきだと思います。特に私のような知識のない人間にとっては、これほど心地よく知識の大海に身を預けられる本もないはずです。息を止めるように深く潜ることができるでしょう。 もっとも、この本で主張されている「一般的な歴史は記録された歴史であり本当の歴史ではなく、記録されていない歴史こそが本当の歴史」であることに共感するならば、この本もまた「記録された歴史」であり、本書の言葉を引用すると「矮小なもの」であることを認めざるを得ません。当然、面白いからと言って、本書でエーゲの歴史全てがわかった気になれる類の完璧な書籍ではありません。 しかし、それでも本書は素晴らしいと私が思う理由は、多くの人の好奇心をくすぐり知識欲を満たす、この一点においては間違いなく他を圧倒して傑出している書籍だと思うからです。 他著を読んでいても感じるのですが、やはり立花さんの知識の横断力は突出していると思います。それは一つのトピックにあれやこれやと他分野の関連知識も混ぜ脱線しつつも、まとめあげる文章力が伴ってこそ、この膨大な情報量をたった200ページ強の作品にまとめあげたことは大変なご苦労があったと思います。 エーゲという響きにピンときた方にも、また何か知識や見識を深めたい方にも是非オススメしたい書籍です。
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立花隆自身が最も気に入っている著作と知り読んでみたいと思った。一読しただけでは、自分の理解が追いつかないので、少し時間をおいて再読したい。
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立花氏が巡ったエーゲ海周辺の遺跡を巡る旅。壮大な時間の流れのなか、記録されなかった人類の膨大な歴史を垣間見て、めまいがするような感覚におちいる極上の読書体験。(もちろんその真髄は現場に立ってみなければわかららないのだけれど。あくまでも読書体験として)「現在はすでに過去にも無限回く...
立花氏が巡ったエーゲ海周辺の遺跡を巡る旅。壮大な時間の流れのなか、記録されなかった人類の膨大な歴史を垣間見て、めまいがするような感覚におちいる極上の読書体験。(もちろんその真髄は現場に立ってみなければわかららないのだけれど。あくまでも読書体験として)「現在はすでに過去にも無限回くり返されたことがあり、未来においても無限回くり返される。/人はまさにこの現在の一瞬において、過ぎ去りてゆく時を生きているのではなく、永遠を生きている。」----圧倒的な序文に痺れた。「見えた/何が/永遠が」ランボーの言葉の引用も印象に残る。
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知の巨人、立花隆氏が1982年に約40日かけて、立花隆氏とカメラマン須田慎太郎氏とで40日間かけて、ギリシア、トルコの取材旅行を行ったものを基にしている。 圧倒的な古代遺跡群の写真と、立花隆氏の文章とで構成されている。 文章や記録、書物では理解できなかったことが、そこに、現地に足...
知の巨人、立花隆氏が1982年に約40日かけて、立花隆氏とカメラマン須田慎太郎氏とで40日間かけて、ギリシア、トルコの取材旅行を行ったものを基にしている。 圧倒的な古代遺跡群の写真と、立花隆氏の文章とで構成されている。 文章や記録、書物では理解できなかったことが、そこに、現地に足を運ぶ事でわかるという。 最も正当な歴史は、記録されざる歴史、後世の人が知らない歴史である。 我々が完全に記憶を失った古い古い時代から世界大戦は何度も行われ、その時の超大国が滅亡してきた。 まさに時は円環状に流れ、世界は永遠に回帰し続けるものなのかもしれない。 過去は同時に未来であり、未来は同時に過去でもある。
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『宇宙からの帰還』の姉妹編。伝説の名著、待望の文庫化 「多年にわたって、本を書く仕事をしてきたが、本書は、自分が書いた本の中でいちばん気に入っている本である。先日読み直してみて、よくぞこれだけの連載をこの年齢(四十三歳)でしたものだと思った。しかし、考えてみると...
『宇宙からの帰還』の姉妹編。伝説の名著、待望の文庫化 「多年にわたって、本を書く仕事をしてきたが、本書は、自分が書いた本の中でいちばん気に入っている本である。先日読み直してみて、よくぞこれだけの連載をこの年齢(四十三歳)でしたものだと思った。しかし、考えてみると、それは第一稿にすぎず、それから、それを完成稿するまでに二二年かかったという言い方もできる。別の言い方をするなら、連載を終えてから、それを完成稿にするために、ほぼ半生を私はかけたことになる。」(「文庫版あとがき」より) カラー写真で読む、古代ギリシア文明・思索紀行。哲学発祥の地ミレトス(トルコ西岸)で「最初の哲学者」タレスの足跡をたどり、女人禁制の宗教国家アトス(ギリシア北東部)でキリスト教の原型にふれ、シチリアの古代神殿の遺跡で「記録されざる真実の歴史」について思いを馳せる。神とは何か、歴史とは何か、哲学とは何か。天才カメラマン須田慎太郎を相棒に、立花隆の時空を超えた哲学的思考が爆発する!
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・一枚の写真の持つ情報量はしばしば驚くべきレベルに達する。文字にしたら百万言を費やしても伝えきれないものが、たった一枚の写真から伝わってくるということがよくある。 ・アトス独特のきまりが沢山ある。入ることが絶対に禁じられているのが女性。いかなる女性もここに一歩でも足を踏み入れる...
・一枚の写真の持つ情報量はしばしば驚くべきレベルに達する。文字にしたら百万言を費やしても伝えきれないものが、たった一枚の写真から伝わってくるということがよくある。 ・アトス独特のきまりが沢山ある。入ることが絶対に禁じられているのが女性。いかなる女性もここに一歩でも足を踏み入れることができない。動物も雌の入国は禁じられている。ここにはかなりのロバがいるが、すべて雄ロバである。一つだけ例外がある。雌ネコである。ネコ好きの修道士が多いため、ネコに関してはいつのまにか禁忌がゆるんでしまったのだという。 ・人間の欲望はとめどがない。欲望に追われて走りだすと、自分で自分を止められなくなる。欲望はその本性において暴走するメカニズムを内蔵しているらしい。あらゆる宗教が、ほとんど例外なしに、教義のはじめのほうに、幸福への近道は自己の欲望を制御することにある、と説いているのも、昔から、不幸への最短の道が自己の欲望を制御しきれなくなることにある、と知っているからだろう。 ・自分たちは、殺されても間もなく復活するのだ。生き返るのだ。我々は死んでも死なない。終末の日には、迫害した側が裁きを受け、永遠に罰されるのだ。終末には生と死が逆転する。これが彼らの信仰だった。死んでも死なないと信ずることの強さが、キリスト教を度重なる迫害に耐えさせ、迫害されても迫害されても発展させていった。キリスト教徒をいくら殺しても、彼らに信仰を捨てさせることはできなかった。彼らにとって、死は復活までの仮象にすぎなかったから、命を奪うという脅しが脅しとして通用しなかったのである。 ・およそ存在するもののなかで、 最も年古りたるものは神なり、神は生まれざりしものなるがゆえに。 最も美しきものは宇宙なり、神の作りしものなるがゆえに。 最も大なるものは空間なり、あらゆるものを包含するがゆえに。 最も速きものは知性(心)なり、あらゆるものを貫き走るがゆえに。 最も強きものは必然なり、あらゆるものを支配するがゆえに。 最も賢きものは時なり、あらゆるものを明るみに出すがゆえに。
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写真がすばらしい。特に海を映したものが。内容自体は旅行記と思索の折衷。読みやすいし勉強になるが、それ以上ではないように思う。
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