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伊勢の風 の商品レビュー

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2024/09/08
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※このレビューにはネタバレを含みます

髪結い屋の慎三には裏稼業がありました。 《替え玉屋》です。 本作はシリーズ二作目で、一作目を未読な為、慎三が《替え玉屋》をやり始めた経緯や人間関係の詳しいことは分からない状態で読み始めましたが、十分楽しめました。 今回の慎三への依頼は廻船問屋尾張屋の番頭からでした。 尾張屋に盗賊が入り、五百両盗まれたばかりか、主の吉右衛門を殺されたのです。 しかも尾張屋にとってはとてもとても大事な、伊勢炭を独占的に扱うことが出来る許可札を盗まれてしまったのです。 許可札を盗まれたことが公になると伊勢田代藩から許可札の管理不行き届きを咎められ、伊勢炭の取引が出来なくなってしまいます。 取引のため伊勢田代藩に向けて船を出す三日後までに何とか許可札を取り戻して欲しいというのが番頭の竹蔵からの依頼でした。 渋々その依頼を受けた慎三は仲間たちと策を練ります。 《丑三つの辰吉》 元凄腕の泥棒で、尾張屋に入った盗賊とは因縁の相手。 《筆屋の文七》 旗本の次男で、他人の筆跡を正確に再現できるという特技を持つ。 《韋駄天の庄治》 元飛脚で驚異的な健脚の持ち主。 《鶯のお咲》 替え玉屋の紅一点。どんな女性の声も真似られるという特技を持つ。 《久坂新之丞》 二刀流の凄腕の剣客。 という五人の仲間です。 何とか許可札の在処をつきとめた矢先、何とその許可札が火事で焼けてしまったのです。 もう竹蔵の依頼を完遂するのは無理かと諦めるのかと思いきや、慎三がとった策とは……。 今回はシリーズの主人公慎三より、文七、お咲等仲間達の活躍が光った回だったと思います。 痛快で楽しい話でした。 ただ、最後の一幕。 慎三の明かされていない事情の一端らしきものが。 今後の展開がとても気になります。 そしてまだ未読の第一作目を是非読まねば! 楽しみな時代小説のシリーズが一つ増えました。

Posted byブクログ

2020/02/03

江戸と伊勢を舞台とした替え玉屋稼業とその仲間たちの大活劇。テンポよく痛快な時代小説。替え玉屋慎三シリーズの第2作。 髪結いの慎三、丑三つの辰吉、筆屋の文七、久坂新之丞、韋駄天の庄治、鶯のお咲と裏戸の助佐。そしてリーダーの慎三の裏の顔は替え玉屋。特殊メイクでどんな人物にも変装でき...

江戸と伊勢を舞台とした替え玉屋稼業とその仲間たちの大活劇。テンポよく痛快な時代小説。替え玉屋慎三シリーズの第2作。 髪結いの慎三、丑三つの辰吉、筆屋の文七、久坂新之丞、韋駄天の庄治、鶯のお咲と裏戸の助佐。そしてリーダーの慎三の裏の顔は替え玉屋。特殊メイクでどんな人物にも変装できる。メンバーそれぞれが特殊技能を活かして活躍する。ヒーロー戦隊もののような設定が良い味を出している。 文章力も大切だが、小説に何が重要なのかが良く分かる好例だろう。 筆者の細かいプロフィールは分からないが、時代小説はまだ二作目だという。文章力よりキャラの設定の良さと緻密な構成による先の読めないストーリー展開で読者を引きつける。 今回の依頼は、盗まれた専売許可札を無事に取り戻すこと。江戸と伊勢と二箇所で交互に展開する話のテンポが心地よい。 慎三の過去、辰吉と鼠の彦治の因縁、お咲の恋などまだまだ続編な種が蒔かれている。 これだけキャラクター設定が良いと作者の意図を超えて登場人物が動き出すことだろう。 今後のシリーズ展開が何より楽しみである。 映像化しても面白そう。

Posted byブクログ

2020/02/01

尾崎章『伊勢の風 替え玉屋慎三』(祥伝社、2020年)は時代小説。『替え玉屋慎三』の続編。時代は船改番所が下田から浦賀に移された享保6年(1721年)の後である。著者はビジネスパーソンをしながら小説を書いている。 慎三は江戸・深川で髪結い床を営むが、裏では替え玉屋をしている。今回...

尾崎章『伊勢の風 替え玉屋慎三』(祥伝社、2020年)は時代小説。『替え玉屋慎三』の続編。時代は船改番所が下田から浦賀に移された享保6年(1721年)の後である。著者はビジネスパーソンをしながら小説を書いている。 慎三は江戸・深川で髪結い床を営むが、裏では替え玉屋をしている。今回の依頼人は廻船問屋の尾張屋である。尾張屋は伊勢炭の専売を認められていたが、商売敵である遠州屋の差し金で、専売許可札を盗まれてしまった。 伊勢炭を仕入れなければならないが、札がなければ番所を通関できず、店は潰れてしまう。慎三は荒事に不向きな筆屋の文七を尾張屋の船に乗せ、伊勢に向けて出発させる。何か策があってのものであるが、それは読者には説明されない。そのために読者は謎を抱えながら読み進めることになる。 敵の悪党の浅ましさを「受けた仕打ちは倍にして返す」と説明する(97頁)。無関係なところを攻撃して復讐を語る人間は半グレ・ヤンキーのような浅ましい存在である。少し前に企業ドラマで「倍返し」の台詞が流行ったが、どうなのだろうか。テレビの企業ドラマは目の前の問題を解決するために皆で頑張るという昭和の精神論根性論が色濃く、21世紀のビジネス感覚からは時代遅れに感じる。

Posted byブクログ