1,800円以上の注文で送料無料

山峡奇談 の商品レビュー

3

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    0

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/07/13

古代から昭和初期まで、日本各地に伝わってきた 山に関する不思議な話、怖い話を集め、 現代語に訳したエピソード集。 自然界には人が踏み超えてはいけないボーダーラインが 確実にある、と思った。 一部、柳田国男『遠野物語』の読み直しにもなった。 しかし、附録「山窩綺談」は 明らかに戦後...

古代から昭和初期まで、日本各地に伝わってきた 山に関する不思議な話、怖い話を集め、 現代語に訳したエピソード集。 自然界には人が踏み超えてはいけないボーダーラインが 確実にある、と思った。 一部、柳田国男『遠野物語』の読み直しにもなった。 しかし、附録「山窩綺談」は 明らかに戦後の作り話で蛇足というか興醒め。 ■古代・中古(奈良~平安時代)  僧と鬼にまつわる話が目立つ(山だから当然か)。  新潟の「逃入(にごろ)村の塚と道真の祟り」が不気味。  村の人が手習いをすると菅原道真に祟られるため、  文字が書けないので、  よその人に頼んで代筆してもらわなければならず、  何故祟られるかというと、  昌泰の変【※】によって道真を追い落した藤原時平と  その妻の墓(塚)があるためだ、とか。  【※】901年、左大臣藤原時平の讒言により     醍醐天皇が右大臣菅原道真を大宰府へ左遷した。 ■中世(鎌倉~安土桃山時代)  盗賊の話や武士の話。  『撰集抄』の西行が人造人間を作ろうとした  との記述が(改めて)強烈。  東都隠士『万世百物語』収録、  宮本武蔵が悪漢に囚われた女性を救う話も印象深い。 ■近世(江戸時代)  動物を巡る奇談。  山に入る人はやはり熊や蛇を恐れていたか。  『万世百物語』収録、  蛇に呑まれた我が子を救い出したイタチの話「鼬の復讐」は  グリム童話「狼と七匹の子山羊」に似ている。  『奇談雑史』収録、「狐に誑かされた男」が  滑稽かつ奇怪。  阿辺野の古狐に気をつけろと言われても  怖気づかなかった男がまんまと騙される話。 ■近代(明治時代~昭和)  天狗を巡る話あり、幽霊譚あり。  杉村顕道『信濃怪奇伝説集』中の「蓮華温泉の怪話」に  既視感を覚えたが、  先に読んでいたのは岡本綺堂「木曽の旅人」だった。  山の中の一軒家に旅の男がやって来て、  一晩泊めてくれと言い、主は快く招き入れたが、  幼い男児が怯え、犬は吠え……結局、  旅人は立ち去ったが(ネタバレ回避)――という恐怖譚。  「木曽の旅人」初出は1897(明治30)年『文藝倶樂部』  だそうなので、1942年に刊行された  『信濃怪奇伝説集』(←1934年『怪奇傳説 信州百物語』改題)  より先で、すると、  信濃には同様の物語が様々なヴァリエーションで  語り継がれてきたのだろうか。

Posted byブクログ