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皇帝フリードリッヒ二世の生涯(下) の商品レビュー

4.5

27件のお客様レビュー

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2024/09/12

 下巻では、歴代ローマ法王との熾烈な争いが主たる内容となる。「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に」、今風の言葉で言えば政教分離を実現しようとするフリードリッヒと、「法王は太陽で皇帝は月」と信じている歴代ローマ法王との間の根本的な考え方の違いが対立の根底にあり、特に原理主義的な法王...

 下巻では、歴代ローマ法王との熾烈な争いが主たる内容となる。「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に」、今風の言葉で言えば政教分離を実現しようとするフリードリッヒと、「法王は太陽で皇帝は月」と信じている歴代ローマ法王との間の根本的な考え方の違いが対立の根底にあり、特に原理主義的な法王であればあるほど妥協の余地がなくなってしまうのだった。  度重なる破門通告や、遂には異端者として断罪されての皇帝位及び王位の剥奪にも屈することなく、帝位や王位の剥奪という法王の越権行為についてフリードリッヒは諸国の王侯や騎士などへの世論工作も積極的に行い、こうした苦境を乗り越えていく。しかし、そうした彼にもとうとう死が訪れた。1250年、56歳だった。  彼の死んだとき、その後継者となる嫡庶子が数名いたが、がいずれもまだ若年で父ほどの経験や胆力もなかったし、また病死や戦死で次々に亡くなってしまい、ホーエンシュタウヘン朝は断絶してしまう。  この辺りのドイツ、イタリア、そしてフランス、イギリスといった諸国間の関係、そしてローマ法王との関係について、大変分かりやすく説明がされており、いろいろ学ぶところが多かった。  フリードリッヒが目指した秩序ある法治国家ができるまでには、まだ数百年はかかる。  いかに彼が時代に先駆けていたか、それを語る著者の熱い思いが伝わってきた。読みどころをコンパクトにまとめ、これだけの厚さの本をどんどん読ませていく著者の筆はさすがだ。

Posted byブクログ

2024/04/30

皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下巻 文庫版 著:塩野 七生 新潮文庫 し 12 103 「玉座に座った最初の近代人」 第6次十字軍で、聖地エルサレムを無血開城し、イスラムと融和、武力を使わなかった叡智の人 強大なローマ教会勢力から、封建領主を保護して、封建制度を維持しつつも、法...

皇帝フリードリッヒ二世の生涯 下巻 文庫版 著:塩野 七生 新潮文庫 し 12 103 「玉座に座った最初の近代人」 第6次十字軍で、聖地エルサレムを無血開城し、イスラムと融和、武力を使わなかった叡智の人 強大なローマ教会勢力から、封建領主を保護して、封建制度を維持しつつも、法治国家をめざした人 イスラム世界から、文化を取り入れ、ラテン語、イタリア語に翻訳して、ルネサンスへの道を拓いた人 下巻は、13世紀の政治状況の分析から、第2次ロンバルディア戦役後のローマ法王との確執と、その死、その後まで 城壁をめぐらせた都市を攻める場合の不利は、守る側は屋根の下で眠れるのに、攻める側にはそれが許させれないこともあった。眠るだけでなく、あらゆることを野外でしなければならない これは特筆すべき価値があると思うのは、皇帝の愛人になった女の実家が、その理由だけで利益を得るようになる事態もまったく起こらなかったことである トクになるわけでないのだから、わざわざ皇帝に娘を差し出す理由もないのだった フリードリッヒという男は、愛人たちのめんどうを最後までみただけでなく、愛人たちから生まれた子たちのめんどうも徹底してみる男であったということだ 女にとって最も重要な存在は、何であろうと自分が生んだ子である その子の将来を徹底して配慮してくれる男に対して、嫌がらせをしたいと思う女がいるだろうか アリストレテス主義:証明できなということは、存在しないということにはならない だからこそ、実験を積み重ねることによって真実を追求していく努力が重要になってくるのである 第6次十字軍が無血十字軍と呼ばれたのも、軍勢は率いていながらそれは使わないで、外交だけで目標に達したからである 皇帝フリードリッヒが目指したのは、法に基づいての秩序ある平和な国家の建設である 首尾一貫する生き方で通してきた人には、死んでもやれないこと、というのがあった ある考えで通してきた以上、その考えに反することをやっては首尾一貫ではなくなるからである 反対に、「筋」を通すことなどは考えもしないで生きてきた人は、「筋」に反することでも簡単にできるのだ 中世ヨーロッパを震撼させて法王と皇帝の抗争は、「カノッサの屈辱」からはじまってフリードリッヒで正面からの激突となり、「アヴィニョンの捕囚」にまで及ぶことになる 皇帝フリードリッヒ2世は、中世の特質であった封建制度を全廃し、君主制国家に一変しようとしたのではない 封建領主たちの形は残しながら、その内実は変えようとしたのである 「誓い」とは「信義」であり、誓いを守ることは信義を貫くこと、と考えられてきたのである 目次 第7章 すべては大帝コンスタンティヌスから始まる 第8章 激突再開 第9章 その後 年表 参考文献 図版出典一覧 ISBN:9784101181493 出版社:新潮社 判型:文庫 ページ数:472ページ 定価:950円(本体) 発売日:2020年01月01日 上巻 目次 第1章 幼少時代 第2章 十七歳にして起つ 第3章 皇帝として 第4章 無血十字軍 第5章 もはやきっぱりと、法治国家へ 第6章 「フリードリッヒによる平和」

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2023/12/06

フリードリッヒ二世の生涯をテーマにしてるのに十字軍を上巻で終わらせて下巻どうするんだろうと心配したが、下巻のほうが面白かった。

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2023/09/10

2020/1 読了 読んでいた当時、トランプ大統領がイラン軍司令官を殺害する命令を出し、アメリカとイランの緊張が高まった。この21世紀の無様をみて、800年前に「異教徒を殺せ」と十字軍を企画し、イスラムとの共生を考えもしなかった、ローマカトリック教会を愚かだと現代の我々は嗤えるの...

2020/1 読了 読んでいた当時、トランプ大統領がイラン軍司令官を殺害する命令を出し、アメリカとイランの緊張が高まった。この21世紀の無様をみて、800年前に「異教徒を殺せ」と十字軍を企画し、イスラムとの共生を考えもしなかった、ローマカトリック教会を愚かだと現代の我々は嗤えるのだろうか?

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2023/01/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

塩野七生の本なので面白くないはずがない。と言う訳で、題名の通り中世ヨーロッパで中世ヨーロッパから外れた傑物の神聖ローマ帝国皇帝 フリードリッヒ2世の生涯を好意を持って描いた本。そもそもフリードリッヒ2世という人を全く知らなかったが、中世において、絶大な権力を誇った神の使いであるローマ法王に真っ向から対立した(勝負を挑んだというほどには勝負はしていない)フリードリッヒ2世という人を全く知らなかったの発見の連続。もうあと200年くらい遅くに生まれていたら時代の寵児になっていたと思うが、残念ながらキリスト教(ローマ法王)的には全く容認できず、死後に歴史上から抹殺された感が強いのであまり知られていないのだろう。まあ、最終的に勝った側が歴史を改ざんするのは世の常なので仕方ないだろう。キリスト教と言う脈々と続く体制にいくら傑物でもたった一人では立ち向かえないということのようだ。それはさておき、中世において封建社会から脱した絶対君主制をそれも法治国家として確立しようとしたり、十字軍全盛の時に自らも十字軍に行って戦わずしてイスラム教徒と協定を結び占領されていたエルサレムを解放したり、と今から見ると大変先進的な気質を持った人物。そうはいっても負の側面もあるとは思うが、そこについてはあまり触れられていないのでよく分からない。とにかくこの本を読むとフリードリッヒのファンになることは間違いない。

Posted byブクログ

2022/09/24

教会が巨大な権力を持っている中世のヨーロッパで、自らの才覚の翼を思いっきり伸ばして、羽ばたいた王様のお話。 どこから、こういう人が出てくるのだろうと思う・・・人類の不思議。

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2022/07/31

塩野七生節によって中世イタリアにどっぷりと浸ることができる素晴らしい物語。相変わらず句読点の打ち方が気にはなるが・・。しかし、塩野七生さんはカエサルにしろ英雄の浮気には寛容過ぎるのでは?世の一般女性も塩野さんと同じ考えだと勘違いして「よし、俺も愛人でも作るか」などとはユメユメ思わ...

塩野七生節によって中世イタリアにどっぷりと浸ることができる素晴らしい物語。相変わらず句読点の打ち方が気にはなるが・・。しかし、塩野七生さんはカエサルにしろ英雄の浮気には寛容過ぎるのでは?世の一般女性も塩野さんと同じ考えだと勘違いして「よし、俺も愛人でも作るか」などとはユメユメ思わない事だ。自分は英雄でも無いし。

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2022/04/01

著者にとって本当に書きたかった本。 過去の200頁程度の掌編ではなく渾身の歴史小説。これをどう捉えるかは読者の自由だが素晴らしい仕事であることに疑いはない。

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2021/09/27

上下巻合わせて、星5つの内容。シチリア等の歴史もフリードリヒ2世も、あまり知らなかったが、読んでいてワクワクした。「ブーリア」行きたくなりました。

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2021/07/03

読めば読むほど教会やばい…ってなった。 フリードリッヒが目指していたものが、受け継がれなかったのが悲しい。

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