賭博者 の商品レビュー
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本作は最初から最後まで貴族社会を描いた物語であるということである。その前提がないままに読みはじめた私は、 デ・グリューが「僕」の見分けがついていない意味も、「ぼくが同じテーブルに勝手に顔を出したので、将軍はいかにも不満げに僕を見やった」意味も 理解できなかった。 上記のような仕打ちを受けて、僕が特に憤慨したり傷つく様子がないことも相まって、よほどこの主人公は捻くれ者なのか、 或いは将軍との間にどんな因縁があるのだろうかと勘ぐりながら読み進めることになった。 だが、ここが19世紀欧州の貴族社会であることを理解すれば、 単なる家庭教師である僕が、決して貴族たちと同等の扱いを受けられるはずがなく、また、彼がそれを受け入れていることにも合点がいくのである。 そういう意味で、貴族社会に縁のない私にとっては非常に興味深い作品に感じられた。 例えば、本作には以下の様な記述がある。 「こういう人物と並木道を散歩するのは、べつに問題ないどころか、かりにこういう表現が可能だとして、人物証明の代わりになる。」 「将軍としてももはや、こうした風変わりな女性の姻戚関係で、一般客たちの間に自分の名が穢されるのではないかなどと恐れてはいなかった。」 これは、貴族社会の狭さを象徴している。それは、まあ当然の話だろうが上流階級の数は限られているだろうし、それも名門になればなるほど名が 知れ渡っているだろうから、彼らはその一挙手一投足に気を遣わなければならないのである。 その様は、皮肉にも社会階級で言えば真逆の小さな村社会のような状態であったのだろう。 他にも、執事や小間使いがそもそもカジノに入れなかったり、「温泉地では、〔.....〕ホテルの支配人や給仕長が部屋を客人に 割り振るさいに指針とするのは、客の要求や希望よりもむしろ、客人にたいする彼らなりの個人的な目である。」というように、 本作では至る所で当然の様に貴族社会が、つまり階級差別が描かれている。
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遺産相続を当てにしていたおばあさんが、実はめちゃくちゃ元気で、ルーレットでお金を溶かしそうになって(最後にはしっかり溶かす)周りがハラハラするところが最高。おばあさんがもうすぐ死にそうという最初の印象が強いので、おばあさん登場のギャップがすごい。カラマーゾフの兄弟もそうだけど、ただの古典ではなくて、今読んでもエンタメとして十分楽しめるので、色んな国でオペラや映画に変換されているのも頷ける。 最後のアレクセイのセリフ、「明日こそ、明日こそ、すべてに決着がつく!」、絶対またルーレットするんだろうな、、、ルーレットと、それによって得られる金が全ての問題を解決してくれると思っているし、なんなら勝ち負けそれ自体よりも、ルーレットで得られる脳汁に夢中になってしまっている。
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▼「賭博者」ドストエフスキー。初出1866年ロシア。亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫。 ▼ドストエフスキーさんの未読の小説だったんで、いつか読もうと思っていました。電子書籍が割引セールしていたので購入。ドストさんはここ数年の間に「罪と罰」「カラマーゾフ」を再読して超絶にオモシロか...
▼「賭博者」ドストエフスキー。初出1866年ロシア。亀山郁夫訳、光文社古典新訳文庫。 ▼ドストエフスキーさんの未読の小説だったんで、いつか読もうと思っていました。電子書籍が割引セールしていたので購入。ドストさんはここ数年の間に「罪と罰」「カラマーゾフ」を再読して超絶にオモシロかった。10代の頃に多分ほかに「貧しき人々」「虐げられた人々」「白痴」「悪霊」は読んだんですね。どれも忘れているのでいつでも再読したいと思っています。それにしても題名だけ読むとどれもこれも陰鬱ですね…。 ▼罪と罰の後に書かれたものだそうで、中編です。総論、「なんだか設定がわかりにくかったんだけど、後半オモシロかった」ですね。 ▼1866年前後の現代劇でしょう。多分、ドイツかどこかの保養地に、ロシア貴族ととりまき一行が泊っていて、そこはカジノが有名。主人公は、多分全然金持ちではなくて、貴族一家の家庭教師の青年。で、とにかくちょっと初期設定がわかりづらくて、でもそのままどんどん読んじゃったんですが、 ・実はご主人様もそんな金はなく、親戚の遺産を当てにしている ・取り巻きの一人であるロシア娘に主人公は恋をしているが ・ロシア娘は弄ぶタイプではっきりしない。 ・そこにみんなが遺産を当てにしている、瀕死のはずのロシア老女が全快で登場して ・制止を振り切ってカジノで遊んでひと財産すってしまう。 ・主人公が惚れている相手はフランス人とくっついて ・主人公はカジノで大フィーバーで一気に大金持ちになり、別の女とパリに去るが ・やがて無一文に戻ってギャンブル中毒、カジノで下働きまで身を落とし、生きていく。 みたいなお話でした。 ▼で、なんだか基本的な前提がよくわかんないんですけれど(笑)、とにかくギャンブル場面が、アツい。ものすごい濃度です。カラマーゾフで、長男ミーチャの放蕩場面もすごかったんですが、こういうのドストさんすごいですね。体の奥から、精神から焼かれるようなギャンブルの魅力と怖さが、なんと言ってもハイライトでした。
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明らかにエンターテイメントの小説ではないことは確かでした。主人公であるアレクセイを通してドストエフスキーの思考および嗜好を伝えようとしているのは理解できました。 全てを理解することは難しかったが、訳者あとがきの定められた運命=ルーレットとする解釈など視点が穿っており、大変刺激的だ...
明らかにエンターテイメントの小説ではないことは確かでした。主人公であるアレクセイを通してドストエフスキーの思考および嗜好を伝えようとしているのは理解できました。 全てを理解することは難しかったが、訳者あとがきの定められた運命=ルーレットとする解釈など視点が穿っており、大変刺激的だった。
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カネ、恋愛、名誉は改めて言うまでもなく、人間の欲望の根源である。そうした欲望を満たすために、程度の差こそあれ、誰でも無謀な賭けをした経験、したくなる衝動を感じるものであろう。ルーレットにハマる主人公を通して、そうした根源的な心理を追体験できる。 ただ、カラマーゾフの兄弟や罪と罰...
カネ、恋愛、名誉は改めて言うまでもなく、人間の欲望の根源である。そうした欲望を満たすために、程度の差こそあれ、誰でも無謀な賭けをした経験、したくなる衝動を感じるものであろう。ルーレットにハマる主人公を通して、そうした根源的な心理を追体験できる。 ただ、カラマーゾフの兄弟や罪と罰で感じたような、こころの奥底が揺さぶられるような刺激までは受けなかった。自分のギャンブラー的な側面を客観視し、ふと我に帰らせてくれるような、軽い快感を得られるくらいである。
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テーマがギャンブルであり、普段隠れている人間の欲望がお尻丸出しぷるんぷるんである。そこをただの下世話なだけでなく、何に幾らいつかける、という人生そのものの縮図のように表現され、皆が共感できる作品となっている。こういう人生の苦悩的な作品はポールニューマンが映画でやると似合うな。→金...
テーマがギャンブルであり、普段隠れている人間の欲望がお尻丸出しぷるんぷるんである。そこをただの下世話なだけでなく、何に幾らいつかける、という人生そのものの縮図のように表現され、皆が共感できる作品となっている。こういう人生の苦悩的な作品はポールニューマンが映画でやると似合うな。→金持ちの老婦人が親戚連中の所にやってくる。遺産目当てのおためごかしをバサバサ斬ってゆくのが爽快。ギャンブルとは自分という人間を過信することとの戦いを表している。こういう人は戦国時代に生まれろ。
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326ページの中編。 とてもドストエフスキーらしいと感じた。 亀山先生言うところの「カーニバル的な」熱狂的な部分だけでできているので一気に駆け抜けるといった印象で読みやすいのでは。 解説によると『未成年』の中に、「金は、あらゆる不平等を平等にする」という一節があるらしく、まさにロシア人の金銭感覚を端的に言い表していて、金は労働から得るものではなく、贈与か、せがんで手に入れる、もしくは強奪するものらしい。 知ってたけど…ロシア人おかしいよ!
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ドストエフスキー5大長編(『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)を順番に読んでいくというドストエフスキーチャレンジを実施中なのですが3つ目の『悪霊』まで読了しました。 しかしながら『悪霊』を読了したところで、その精神性の難解さにかなりダメージを受けてしまい...
ドストエフスキー5大長編(『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)を順番に読んでいくというドストエフスキーチャレンジを実施中なのですが3つ目の『悪霊』まで読了しました。 しかしながら『悪霊』を読了したところで、その精神性の難解さにかなりダメージを受けてしまい、この『悪霊』よりもさらに難解だと言われている『未成年』にそのまま取り組むのはいかがなものかと思ってしまったのです。 このままの精神状態で『未成年』を読み始めると最悪、途中で挫折ということにもなりかねないので、ちょっと分かりやすい中編小説を挟むことにしました。 ちょうど良いことに、亀山郁夫先生の新訳で読みやすいことで定評のある「光文社古典新訳文庫」の『賭博者』が2019年の年末に新たに出版されたのでこの本を読むことにしました。 さすがに亀山郁夫先生のドストエフスキーの訳は読みやすい。 亀山先生のドストエフスキーの訳文を読むのは『罪と罰』以来ですが、江川卓先生の訳で読んだ『悪霊』、木村浩先生の訳で読んだ『白痴』に比べ、言い回しが現代的で読みやすいですね。 そして巻末に付いている『読書ガイド』が詳しく、ドストエフスキー初心者にとっては至れり尽くせりです。 さて、本書『賭博者』ですが、自身もギャンブル狂であったといわれるドストエフスキーの自らの経験が多分に反映されている物語です。 ドイツにある『ルーレティンブルグ』という架空の町でカジノに集う各国から来た賭博者たち。 主人公のアレクセイの恋愛と彼が賭博にのめり込んでいく様子が恐ろしくも美しく描かれていきます。 やはり、ギャンブルは恐ろしい・・・。 というか、僕はアレクセイと彼が恋する美女ポリーナとの関係が好きだな。 どS美女のポリーナとマゾのアレクセイという関係性が(笑)。 彼らの関係が僕が好きなマツリカシリーズのマツリカ様と柴山君の関係性を彷彿とさせてしまって、マツリカ様をポリーナ、柴山君をアレクセイに見立てて本書を読んでいたらちょっと吹き出しそうになってしまいました。 という訳で、やはりドストエフスキーは面白いということを再認識できたので『未成年』にチャレンジしていきたいと思います。
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